2月11日は、科学における女性と少女の国際デー。世界中の人に希望の光を与えている新型コロナウイルスのワクチンは、多くの女性科学者が開発していた。(フロントロウ編集部)

女性が正しく評価されてこなかった科学界

 2016年の2月11日に始まったばかりの国際デーである「科学における女性と少女の国際デー」も、今年で6回目。2021年のテーマは、「最前線で新型コロナウイルスと闘う女性科学者たち」。

 これまでの歴史で、女性たちが科学/化学の場から締め出されてきたことはご存知だろうか。例えば、ポロニウムとラジウムの発見で知られ、ノーベル賞を物理学賞と化学賞の2回も受賞しているマリ・キュリー氏は、フランス科学アカデミーの会員になれなかった。また、リーゼ・マイトナー氏は核分裂を解明したけれど、男性科学者専用の上の階へ行くことは禁じられ、地下室にて無給で研究を続けた。

画像: マリー・キュリー氏。

マリー・キュリー氏。

 しかし、女性たちの科学への情熱は消えなかった。2020年より続く新型コロナウイルスに対して、人々に希望を与えているワクチン。その開発には、女性科学者の才能が不可欠だった。

女性科学者たちが新型コロナウイルスのワクチンを開発

 新型コロナウイルスのワクチンは、米ファイザーと独ビオンテックが共同開発したものや、米モデルナのもの、そしてイギリスのオックスフォード大学と英アストラゼネカが開発したものがある。

 オックスフォード大学によるワクチンは、超低温にする必要がなく、家庭用冷蔵庫でも保存可能。このワクチンを開発したオックスフォード大学のチームは、サラ・ギルバート教授が率い、ワクチンはテリーサ・ラム教授が設計した。そしてラム教授の設計からさらに研究を進めたのがキャサリン・グリーン教授で、T細胞の反応を研究したのはケイティ・エーヴェルス教授。

 また、米モデルナとともにワクチン開発を行なったアメリカ国立衛生研究所のチームリーダーの1人は、黒人女性のキズメキア・コーベット医師。その他にも、独ビオンテックの共同創設者であり最高医療責任者であるエズレム・テュレジ氏や、上級副社長であり研究者のカタリン・カリコ氏、米ファイザーのワクチン開発責任者であるキャスリン・ジャンセン氏など、ワクチン開発には女性科学者の能力が欠かせなかった。

 その他、インドやオランダ、ロシアなどの現場でも、数多くの女性科学者たちが活躍している。

注目されるSTEAM教育

 科学の分野に強い人材を育成しようという動きは世界各国でみられ、Science(科学)、Technology(テクノロジー)、Engineering(エンジニアリング)、Mathematics(数学)の頭文字を取ったSTEM(ステム)教育や、そこにthe Arts(リベラルアーツ)を足したSTEAM(スティーム)教育、さらにそこにRobotics(ロボット工学)を足したSTREAM(ストリーム)教育が取り入れられてきている。

 これらの目的は、これからを生きる世代に幼い時から科学技術を教え、創造的な発想を養っていくことにある。日本は女性科学者の数が極端に少なく、文部科学省によると、その数はたったの16.6%。これからをより良い世界にしていくためにも、教育の変革が求められている。

画像: 注目されるSTEAM教育

 また、教育や性別による科学者の偏りは、2030年までに達成することを目指す世界目標のSDGs(持続可能な開発目標)のなかにも組み込まれている。例えば、目標4「質の高い教育をみんなに」のなかには、このような項目がある。

4-1. 2030年までに、全ての子供が男女の区別なく、適切かつ効果的な学習成果をもたらす、無償かつ公正で質の高い初等教育及び中等教育を修了できるようにする。
4-2. 2030年までに、全ての子供が男女の区別なく、質の高い乳幼児の発達・ケア及び就学前教育にアクセスすることにより、初等教育を受ける準備が整うようにする。
4-3. 2030年までに、全ての人々が男女の区別なく、手の届く質の高い技術教育・職業教育及び大学を含む高等教育への平等なアクセスを得られるようにする。

 また、目標5の「ジェンダー平等を実現しよう」や、目標10の「人や国の不平等をなくそう」にもつながる。(フロントロウ編集部)

This article is a sponsored article by
''.