2021年のゴールデン・グローブ賞で、『ノマドランド』のクロエ・ジャオ監督が監督賞を受賞! それを記念して、過去にゴールデン・グローブ賞にノミネートされた女性監督の作品を特集。(フロントロウ編集部)

クロエ・ジャオ監督が監督賞を受賞

 2021年にもなって、女性監督がゴールデン・グローブ賞監督賞を受賞したことで騒ぎたくはない。女性監督と一括りにもしたくはない。

 しかしゴールデン・グローブ賞は、今年で78回目となったにもかかわらず、これまでにノミネートされたことのある女性監督は5名。受賞はたったの1名だった。2021年になり、ノミネートされた女性監督の数は8名に、受賞は2名になったけれど、男性監督であればその数は数百人にまでのぼる。

 2018年の第75回ゴールデン・グローブ賞では、最優秀監督賞の受賞者を発表するプレゼンターだったナタリー・ポートマンが、監督賞に男性しかノミネートされていなかったことで、「Here are the all nominees(こちらが全員の候補者の方々です)」という定型文を、「Here are the all-male nominee(こちらが全員男性の候補者の方々です)」と発言し、1つの単語を加えただけで賢く鋭いジャブを送り、大喝采を浴びたことは記憶に新しい。

 とはいえ、高い評価を受け、さまざまな映画賞をすでに圧巻していたクロエ・ジャオ監督の『ノマドランド』が正当な評価を受けたことは嬉しいもの。ジャオ監督は女性で史上2人目、アジア系女性として初の監督賞受賞となった。また、『ノマドランド』は映画の部ドラマ部門で作品賞を受賞。女性監督の作品が、ドラマ部門の作品賞に選ばれたのも初。

 監督は受賞スピーチで、作品で描いた現代の遊牧民であるノマドの人々に向けて、「ノマドのみなさんに、その物語を私たちとシェアしてくれたことに特別な感謝を言いたい」とし、その後こう続けた。

 「これこそが、私が映画制作に、物語を紡ぐことに恋した理由です。それは私たちに、ともに笑い、ともに泣く機会もくれます。お互いから学び、お互いへ思いやりを持つ機会をくれます。自分が愛することを出来るということを、私のために可能にしてくれたすべての人に感謝します」

画像: クロエ・ジャオ監督。

クロエ・ジャオ監督。

 女性たちが、自分がしたいことを出来る環境。そのために、ここまでの道を切り開いてくれた女性たちがいる。そこで今日は、過去のゴールデン・グローブ賞ノミネート作である10作品を振り返る!


バーブラ・ストライサンド監督

画像: 第41回ゴールデン・グローブ賞で監督賞を受賞したバーブラ・ストライサンド監督。『愛のイエントル』は、映画の部ミュージカル・コメディ部門において作品賞を受賞した。

第41回ゴールデン・グローブ賞で監督賞を受賞したバーブラ・ストライサンド監督。『愛のイエントル』は、映画の部ミュージカル・コメディ部門において作品賞を受賞した。


1983年『愛のイエントル』

 20世紀初頭のポーランド。女性には学問が禁じられていた時代に、ユダヤ人女性のイエントルは、父親に勉強を教えてもらっていた。しかし最愛の父を亡くした彼女は、故郷を捨て、男装して女人禁制の学校で学ぶことを決意する。その旅のなかで出会ったアヴィグドーと彼の婚約者であるハダスと親しくなるも、イエントルはアヴィグドーに、そしてハダスは男装したイエントルに惹かれるようになり…?

画像: ⓒM.G.M/UNITED ARTIST

ⓒM.G.M/UNITED ARTIST

 ミュージカル映画である本作でストライサンド監督は、脚本と主演も務め、この作品によってゴールデン・グローブ賞における女性監督初ノミネート、初受賞を達成した。


1991年『サウス・キャロライナ 愛と追憶の彼方』

 サウスカロライナ州のサリバンズ島に住むトムは、姉のサヴァンナが2度目の自殺未遂を図ったという連絡を受け、姉が入院する病院のあるニューヨークへ向かう。そこでトムは、サヴァンナの担当医である精神科医のスーザンと対面し、少しずつ気持ちを通わせていく。そこで次第に明らかになっていくサヴァンナの苦悩の原因とは…。


ジェーン・カンピオン監督

画像: ジェーン・カンピオン監督

1993年『ピアノ・レッスン』

 主人公のエイダは、娘のフローラとピアノとともに、スコットランドからニュージーランドへ結婚のために移住する。話すことができないエイダにとってピアノは大切なものだけれど、ニュージーランドで2人を迎えたスチュアートはピアノを海辺に置きざりにする。エイダはフローラを連れて何度もピアノの元を訪れ、そこで、マオリ族の入れ墨をした無愛想なベインズにピアノを教えることになる。最初はベインズを嫌っていたエイダだけれど、交流するうちに2人の間の絆は深まり…。


ソフィア・コッポラ監督

画像: ソフィア・コッポラ監督

2004年『ロスト・イン・トランスレーション』

 舞台は東京。ハリウッド俳優のボブは、サントリーウイスキーのCMに出演するために来日した。シャーロットはフォトグラファーの夫ジョンの付き添いで来日するも、ジョンは自分のことに夢中で、シャーロットは孤独を感じている。そんな2人が、滞在しているホテルのバーで知り合う。お互いに孤独を抱えた2人が、日本という異国の地で、友情を深めていく…。


キャスリン・ビグロー監督

画像: 第82回アカデミー賞で女性として史上初の監督賞を受賞したキャスリン・ビグロー監督と、バーブラ・ストライサンド監督。

第82回アカデミー賞で女性として史上初の監督賞を受賞したキャスリン・ビグロー監督と、バーブラ・ストライサンド監督。


2009年『ハート・ロッカー』

 2004年のイラク、バグダッド。アメリカ軍の爆弾処理班は、死と隣合わせで職務にあたる。ある爆発で殉職した隊員の代わりにウィリアム・ジェームズ軍曹が加わったが、彼は基本的な安全対策も行なわず、行動する。補佐につくサンボーン軍曹とエルドリッジ技術兵は、そんな彼の態度に不安を募らせていく…。

 本作でビグロー監督は、女性初のアカデミー賞監督賞受賞を達成した。


2012年『ゼロ・ダーク・サーティ』

 2011年5月2日に世界に衝撃を与えた国際テロ組織アルカイダの指導者オサマ・ビンラディン暗殺の裏側を描いた、実話に基づくフィクション作品。主人公のマヤは、有能なCIA分析官として、行方がつかめないビンラディンの捜索チームに加わる。彼女はある男の存在を掴み、その執念でビンラディンの居場所を絞り込んでいく…。


エイヴァ・デュヴァーネイ監督

画像: エイヴァ・デュヴァーネイ監督

2014年『グローリー/明日への行進』

 公民権運動を率いたリーダーである、キング牧師ことマーティン・ルーサー・キング氏。1965年にキング牧師の呼びかけで集まった黒人コミュニティの人々が、黒人の有権者登録の妨害に抗議。平和的デモ行進を行なおうとしたが、警察が武力的制圧を実行。のちに「血の日曜日」と呼ばれることとなったこの出来事は、社会が動くきっかけとなる。


エメラルド・フェネル監督

画像: エメラルド・フェネル監督

2020年『プロミシング・ヤング・ウーマン』

 成績優秀で医学部に通っていたキャシーは、ある出来事をきっかけに医学部を中退。実家に戻り、コーヒーショップで働いている。しかし夜になれば、彼女は豹変する。ナイトクラブに行き、女性をレイプしようとする男性に復讐を加えていった。彼女の過去に一体何があったのか。物語が進むにつれて明らかになる彼女の経験や思いとは…。


レジーナ・キング監督

画像: レジーナ・キング監督

2020年『あの夜、マイアミで』

 1964年のアメリカ。あるホテルの一室に、プロボクサーのモハメド・アリ、公民権運動を率いたマルコム・X、ミュージシャンのサム・クック、アメフト選手のジム・ブラウンが集まる。若かりしモハメド・アリが世界王者となったことを祝福しに集まった4人だったけれど、公民権運動が起こるなか、黒人の1人として何ができるのかという問題について熱い議論を交わす…。


クロエ・ジャオ監督

画像: クロエ・ジャオ監督

2020年『ノマドランド』

 現代の遊牧民(ノマド)…。世界経済に衝撃を与えたリーマンショックで、企業の倒産とともに、長年住み慣れたネバダ州の住処を失った60代の女性ファーン。彼女は、キャンピングカーに思い出もなにもかもすべてを乗せて、車上生活者となることを選ぶ。“現代のノマド(遊牧民)”として、季節労働の現場を転々としながら、行く先々で出会う他のノマド達と心を通わせながら、ファーンの、誇りを持った自由な旅は続く…。

(フロントロウ編集部)

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