『ゴシップガール』ジェニー役でブレイクしたテイラー・モムセン
『グリンチ』で俳優デビュー
現在はロックバンド、プリティー・レックレスのフロントウーマンとして活動するテイラー・モムセンが初めてショービズ界に飛び込んだのは、なんとわずか2歳の時。CMなどへの出演を経て、一躍お茶の間に名前を広めるきっかけとなったのが、7歳だった2000年に出演したジム・キャリー出演のクリスマス映画『グリンチ』だった。
テイラーは昨年、米NBCの番組『トゥデイ・ショー』に出演した際、「大人になって振り返ると、当時、最も自分が心を打たれたのは、ジェームズ・ホーナーという偉大な人と初めてレコーディングスタジオに入って、仕事をできたことかもしれない」と語っており、俳優としてのデビュー作に出演したのは7歳の時だったものの、当時から既に、演技に負けないくらい音楽にも心を動かされていたという。
テイラーは大人になった今でも、クリスマスの時期に『グリンチ』の思い出を振り返るのが恒例となっており、ここ数年の間は毎年欠かさず、『グリンチ』時代の写真をSNSに投稿してファンを喜ばせている。
『ゴシップガール』ジェニー役に抜擢
その後は2002年に公開された映画『スパイキッズ2 失われた夢の島』に出演するなど、子役として着実にキャリアを積み上げていったテイラー。そんな彼女は2007年、ドラマ『ゴシップガール』でメインキャストの1人であるジェニー・ハンフリー役に抜擢され、本格的にブレイクを果たすことになる。
『ゴシップガール』への出演をきっかけに大ブレイクを果たし、当時のティーンエイジャーたちのロールモデルとなっていたテイラーだったけれど、音楽に専念するため、テイラーは自ら制作陣に降板を申し入れ、多くのファンに惜しまれながらもシーズン4をもって『ゴシップガール』を降板した。
現在は俳優業を事実上引退し、音楽活動に専念しているテイラーだけれど、今でもSNSでちょこちょこ『ゴシップガール』の思い出を投稿しており、2018年には、エリック・ヴァンダーウッドセンを演じたコナー・パオロとの写真をインスタグラムに投稿して、「この人が恋しい」とコメントを添えている。
ちなみに、2021年にリブート版がHBO Maxで放送される予定となっている『ゴシップガール』だけれど、テイラーは2020年に行なった米Paperとのインタビューのなかで、降板という願いを聞き入れてくれたドラマの制作陣について、「幼い少女が人生の夢を追うことを許してくれた彼らには、心の底から感謝してる」と述べた上で、「だから、もし彼らから何かを頼まれたら、絶対的な『ノー』ではないだろうね。交渉になると思う。(俳優業は)私が目指しているものではないにせよ、人生において『絶対にない』は言えないから」と、もしも正式にリブート版への出演オファーがくれば検討することになると、気になる発言も。
モデルとしても活躍
多忙を極めていたテイラーは、俳優業やミュージシャン業と並行して、モデル業もこなしていた。2008年に世界有数のモデル事務所であるIMGモデルズと契約を結んだテイラーは、過去にはサマンサタバサのアンバサダーにも就任。モデルとして来日も果たした。
プリティー・レックレスでロックシーンを代表するバンドに
そして、テイラーは2008年にロックバンド、プリティー・レックレスを結成。現在のメンバーは下の写真の左から右に向かって、マーク・デイモン(ベース)、ジェイミー・パーキンス(ドラム)、テイラー(ボーカル)、ベン・フィリップス(ギター)の4人編成となっている。
プリティー・レックレスは2010年にデビューアルバム『ライト・ミー・アップ』をリリース。デビュー作を引っ下げ、日本のサマーソニック2011への出演を初め、世界各国をツアーで回りながら経験を積んでいき、2014年にリリースしたセカンドアルバム『ゴーイング・トゥ・ヘル』でチャート上でも爆発。本作は米Billboardのアルバムチャートでトップ5にランクインしたほか、シングル「ヘヴン・ノウズ」は2014年において最もヒットしたロック・ソングに。さらには、「ファックト・アップ・ワールド」と「フォロー・ミー・ダウン」を含め3曲をメインストリーム・ロック・ソング・チャートの首位に送り込むという快挙も達成した。
2016年にはサードアルバム『フー・ユー・セリング・フォー』をリリース。同作からのシングル「テイク・ミー・ダウン」が再び米Billboardのメインストリーム・ロック・ソング・チャートで首位を獲得し、プリティー・レックレスは、「デビューから連続で4作のシングルをチャートの1位に送り込んだ初めてのバンド」となり、名実ともに現代のロックシーンを代表するバンドの1組となった。
2度の“悲劇”に見舞われたテイラー
そのまま、ロックバンドとして順調にキャリアを歩んで行くと見られていた矢先の2017年、バンドにとって大きな悲劇に見舞われることに。バンドはこの年、テイラーの憧れの存在でもあったクリス・コーネル率いるロックバンド、サウンドガーデンのツアーにサポートバンドとして帯同していたのだけれど、ツアーの真っ只中だった米現地時間2017年5月17日、デトロイトでの公演後にホテルでクリスが亡くなっているところが発見された。
「(クリスが亡くなった)その晩、私たちはデトロイトにいたの。私はクリスと話をして、またねってハグをしたの。ツアーの最後の公演だったから。朝起きて(亡くなった)報せを聞いた時は、信じられないくらいショックで、壊れそうだった」とテイラーは米Paperとのインタビューでクリスと会った最期を振り返っている。「どうやって乗り越えたらいいか分からなかった。心の準備ができていなかったから、動揺していたの」。
その後、傷心状態となったテイラーはツアーのキャンセルを経て、1作目『ライト・ミー・アップ』からバンドのプロデューサーを務めていたケイトー・カンドゥワラと共に次回作の制作に取り組み始めたのだけれど、クリスの死から11ヶ月後に、再び悲劇が起きてしまう。2018年4月、不慮の事故でケイトーが帰らぬ人となってしまったのだった。
「留めを刺されたようなものっていう他に、ふさわしい言葉が見つからない」とテイラーは英Louder Soundとのインタビューでケイトーの不慮の事故について語っている。 「何もかもをほとんど諦めてしまっていたの。もう一度何かをしたいと思えるかすら分からなった」。
ニューアルバム『デス・バイ・ロックンロール』で救われる
クリス・コーネル、ケイトー・カンドゥワラと、2人の大切な人を立て続けに亡くし、失意のドン底にあったテイラーだったけれど、そんなテイラーを文字通り救い出してくれたのがロックンロールだったという。「ありきたりに聞こえると思うけど、ロックンロールが私を救ってくれたの」とテイラーは米Kerrangとのインタビューで明かしている。
そして完成したのが、2021年2月12日に先行デジタル配信(日本盤CDは2月24日リリース)されたおよそ5年ぶりとなる通算4作目のニューアルバム『デス・バイ・ロックンロール』だった。
『死ぬまでロックンロール、異論は受け付けない』
文字通りに捉えれば、『ロックンロールのために死んだ』を意味するこのタイトルだけれど、テイラーによれば、タイトルには前向きな意味が込められているそうで、米Kerrangに対して、「自分のやり方で人生を生きていくっていう、ポジティブな宣言なの。『死ぬまでロックンロール、異論は受け付けない』っていう感じかな。人生における雄叫びのようなものだよ」と説明している。
ちなみに、アルバムのタイトルトラック「デス・バイ・ロックンロール」は、「瞳の中のロウソクに火を灯したままジェニーは自ら命を絶った」という、『ゴシップガール』のジェニー時代を思い起こさせるような歌詞から始まるのだけれど、テイラーはこの歌詞とジェニーの関連について、「それは聴いている人の解釈に任せる。何事も、アーティストがそのまま説明してしまったらリスナーに不公平でしょ。(音楽から)魔法を奪ってしまう行為だと思う」と英Louder Soundに語っている。真相は、オーディエンスの解釈次第とのこと。
『デス・バイ・ロックンロール』から最初のシングルとしてリリースされた「デス・バイ・ロックンロール」は、米Billboardのメインストリーム・ロック・ソング・チャートで首位を獲得。通算5曲目の同チャートでの首位獲得となり、これは女性がフロントマンを務めるバンドとしては初の快挙となった。
在宅での楽曲制作をたびたび報告していたテイラー
プリティー・レックレスも新型コロナウイルスのパンデミックの影響を受け、在宅での楽曲制作を余儀なくされたこともしばしば。この時にはテイラーがインスタグラムを更新する頻度もあがり、音楽で表現されているクールなテイラーとは対照的とも言えるような、等身大のプライベートな素顔が垣間見られる、レコーディング中や自宅でのセルフィーをたびたび投稿してくれた。
4年ぶりのミュージックビデオとなった「25」
『デス・バイ・ロックンロール』は、前作『フー・ユー・セリング・フォー』からおよそ5年ぶりのアルバムとなったため、ミュージックビデオもその間はリリースされていなかった。『デス・バイ・ロックンロール』から最初に公開された「25」のビデオは、バンドにとって実におよそ4年ぶりとなる、ファン待望のビデオとなった。
「25」は、25歳まで生きることができたことと、その葛藤について歌った楽曲になっていて、25歳の周辺の時期に経験した、クリスとケイトーの死や、それを乗り越える過程について歌った楽曲となっている。テイラーは「25」で次のように歌っている。「25歳になって/私はまだ生きている/人間としての寿命を遥かに超えて」。
テイラーの心境が分かるかも?注目の歌詞をピックアップ!
歌詞については「それは聴いている人の解釈に任せる。何事も、アーティストがそのまま説明してしまったらリスナーに不公平でしょ」と話すなど、具体的な意味についてハッキリと明言することを避けているテイラーだけれど、全12曲が収録されている『デス・バイ・ロックンロール』には、現在のテイラーの心境を表しているような歌詞がいくつも登場する。ここでは、その一部をピックアップしてご紹介。
「今の私を救えるのは愛だけ」
「その音から/世界が吐き出している音から/今の私を救えるのは愛だけ/こんなにも落ちてしまって/途方にくれるばかり」
テイラーが敬愛するバンド、サウンドガーデンからドラマーのマット・キャメロンとギタリストのキム・セイルが参加した「オンリー・ラヴ・キャン・セイヴ・ミー・ナウ」では、文字通り、愛に救いを求める切実な思いが歌われている。
「世界はあなたのものじゃない」
「世界はあなたのものじゃない/あなたは王じゃないし、私は愚か者じゃない/ねえ、世界はあなたのものじゃない/あなたのものじゃない/私のものなのよ」
クリス・コーネルやサウンドガーデンと並ぶテイラーのアイドルにして、クリスとロックバンドのオーディオスレイヴを結成していたことでも知られる、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのギタリストのトム・モレロが参加した「アンド・ソー・イット・ウェント」で、テイラーは誰のものにもならないという強い気持ちを表明している。
「私は金色に輝き始める」
「私には何が本物なのか、何が正しいのか分からない/命を投げ出すべきなのか、それとも闘うべきなのか分からない/でもなぜだか知っている/最後にはうまくいくと」
10曲目に収録された「ターニング・ゴールド」で、テイラーはみなぎってくる力についてパワフルに歌い上げる。たとえ人生に不安を抱えながら生きていたとしても、「最後にはうまくいく」という希望に満ちたメッセージが込められている。
ロックンロールをメインストリームのチャートで見る機会は少なくなってしまったかもしれないけれど、「死ぬまでロックンロール」と高らかに宣言してみせるテイラー率いるプリティー・レックレスがリリースした最新作『デス・バイ・ロックンロール』から伝わってくるのは、音楽/ロックンロールに対する溢れんばかりのテイラーの愛と、そのことにどこまでも誠実に向き合ってみせるテイラーのロックスターっぷり。女性がフロントマンを務めるバンドとして初めて、米Billboardのメインストリーム・ロック・ソング・チャートの首位に5曲を送り込んだことが象徴しているように、次は“ロックに救われた”と話すテイラーがロックンロールを救う番かもしれない。
『デス・バイ・ロックンロール』のストリーミングはこちらから。
<作品情報>
プリティー・レックレス
最新アルバム『デス・バイ・ロックンロール』
配信中
2021年2月24日日本盤CD発売
●価格:2,500+税
●SICP-31419 | 日本盤CD Blu-spec CD2仕様
再生・購入はコチラ。
<トラックリスト>
1. デス・バイ・ロックンロール
2. オンリー・ラヴ・キャン・セイヴ・ミー・ナウ (feat. マット・キャメロン&キム・セイル)
3. アンド・ソー・イット・ウェント(feat.トム・モレロ)
4. 25
5. マイ・ボーンズ
6. ガット・ソー・ハイ
7. ブルームスティックス
8. ウィッチズ・バーン
9. スタンディング・アット・ザ・ウォール
10. ターニング・ゴールド
11. ロックンロール・ヘヴン
12. ハーレー・ダーリン
(フロントロウ編集部)