TikTokなどのSNSでZ世代の若者たちを中心にエミネムを「キャンセル」しようというムーブメントが起きているなか、エミネム本人が、「お前らが俺をキャンセルしたくても、きっと無理だろうな」などと歌う「Tone Deaf」のリリックビデオを公開して反撃した。(フロントロウ編集部)

エミネムをキャンセルしようとTikTokで呼びかけが広まる

 2020年1月にサプライズでリリースしたアルバム『ミュージック・トゥ・ビー・マーダード・バイ』に収録された「Unaccommodating」で、2017年5月にアリアナ・グランデのマンチェスター公演を襲った自爆テロを茶化すようなラップを披露したり、2018年発表の『カミカゼ』に収録された「Fall」では、同性愛者を揶揄する言葉でタイラー・ザ・クリエイターをディスったりと、たびたびそのリリックで物議を醸しているエミネム。

画像: エミネムをキャンセルしようとTikTokで呼びかけが広まる

 Z世代(※)のユーザーが多いTikTokでは先日、そんなエミネムが2010年にリリースしたリアーナとの「Love the Way You Lie」の歌詞が問題視されることに。交際にまつわる愛と憎しみが歌われた同曲には、「もし彼女がまた去ろうとしたら/ベッドに縛りつけて家を燃やしてやる」などといった過激な歌詞が含まれており、時代にはそぐわないとして、現在48歳のラッパーであるエミネムをキャンセルしようという運動がTikTokで若者たちを中心に広がった。

※Z世代:現在6歳から25歳にあたる1996年から2015年の間に生まれた世代。

 SNS上では、過激なリリックを連発するエミネムをキャンセルしようとするZ世代を中心とした若者たちと、エミネムのファンの間でバトルが勃発しており、米ABCのトーク番組『The View』で司会を務める、世代としてはZ世代の1つ上のミレニアル世代(※)メーガン・マケイン(36)は、「エミネムはキャンセルされない。Z世代よ、かかってきなさい」とツイートしている。

※ミレニアル世代:2000年代に成人あるいは社会人になった世代。1980年代から2000年代初頭までに生まれた人をいうことが多い。

エミネムが「Tone Deaf」のリリックビデオでアンサー

 そうしたなか、エミネムが今回、2020年12月にサプライズでリリースした最新アルバム『ミュージック・トゥ・ビー・マーダード・バイ – サイド B』より、「Tone Deaf」のリリックビデオを公開。エミネムは、「白髪になっても俺は止めないよ(俺は空気が読めないんだ)/ だってアイツらは、俺をキャンセルするまで止めないんだろ」と、同曲の一節と共にSNSにビデオのリンクを投稿した。

 エミネムが引用した通り、同曲は昨今のキャンセルカルチャー(※)を揶揄した楽曲となっており、「お前らの言っていることは理解できないんだ/俺はこういうやり方でいきたい」という、何と言われようと自分のやり方を貫き通すことを宣言するようなリリックや、自身が楽曲のなかで“スリム・シェイディ”という別人格を通してラップしていることに触れた、「もう言ったろ、これは俺じゃない、別人格のせいなんだ/まあ、お前らが俺をキャンセルしたくても、きっと無理だろうな」などといったリリックが歌われている。

※著名人や企業によって“問題”だとされる発言や行動があったときに、その問題の原因究明や解決を議論するのではなく、SNSを中心に集団で批判してその人や団体を「抹殺(キャンセル)」しようとする風潮のこと。インターネット上に残っていた今とは時代の状況が違う昔の情報が掘り起こされたり、批判が誹謗中傷へ悪化してしまったりと、そもそもの問題からさらに大きな問題へと発展してしまうことも多い。一方で、キャンセル・カルチャーを批判する人々は言い訳をしているにすぎなく、あくまで自分の行動に責任を持たなくてはいけない時代がきただけだとする意見もある。

 「Tone Deaf」のリリックビデオはこちら。

 アリアナ・グランデのマンチェスター公演を襲った自爆テロを茶化すようなラップを披露して物議を醸したエミネムだけれど、テロが起きた直後には、ツイッターを通じて被害に遭った人々の家族をサポートするための基金への募金を呼びかけており、日本円でおよそ2億円もの寄付が集まったとも報じられている。

 また、「Love the Way You Lie」などでたびたびコラボしてきたリアーナに関して、エミネムは以前、クリス・ブラウンがリアーナに暴力を振るったDV事件をめぐってクリスを擁護したような歌詞をラップしたことが問題視されたのだけれど、こちらは『ミュージック・トゥ・ビー・マーダード・バイ – サイド B』に収録した「Zeus」で「心の底から謝るよ、リアーナ」「君を悲しませるつもりはなかった」とラップして、謝罪している。(フロントロウ編集部)

 

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