リル・ベイビーのステージからバイデン大統領に直接訴え
パフォーマンスでは、リル・ベイビーがブラック・ライヴズ・マター運動を受けて作った楽曲「The Bigger Picture」を披露。警察による暴力に対するプロテストソングである同曲の冒頭では、職務質問を受けた黒人男性が言われたとおり身分証を見せるものの警察官に地面に押さえつけられ、怖くなって逃げたところを背後から撃たれる、という衝撃的ながらも多くの黒人男性にとっては現実に起こり得るシーンが演じられた。
さらにこのパフォーマンスには、アクティヴィストであるタミカ・マロリーと、同じくアクティヴィストでありラッパーのキラー・マイクも参加。キラー・マイクが「みんなは家でソファに座ってテレビで映像を見る/多くの人はそれをツイッターで悲劇と呼びギャーギャー言う」とラップした一方、タミカはマイクの前に立ち、「バイデン大統領、私たちは正義、公平性、政策、そして自由が包含するすべてのものを要求します」と、現アメリカ大統領であるジョー・バイデン氏に直接訴えかけた。
H.E.R.やビヨンセらのBLM関連曲が多く受賞
最優秀楽曲賞では、白人警官によって首を押さえつけられ死亡した黒人男性ジョージ・フロイドの生前最後の言葉である「息ができない」というフレーズを取り入れた、H.E.R.の楽曲「I Can’t Breathe」が受賞。H.E.R.ことギャビー・ウィルソンはステージで「自分の恐怖や痛みがインパクトへと変わり、それが変化にもなり得るなんて想像していませんでした」と涙ながらに語った。
その他にも、ブラック・ライヴズ・マター運動を受けて「ジューンティーンス」と呼ばれる6月19日の奴隷解放日にリリースされた、ビヨンセの「Black Parade」が最優秀R&Bパフォーマンス賞を、アンダーソン・パークの「ロックダウン」が最優秀メロディック・ラップパフォーマンス賞を受賞するなど、ブラック・ライヴズ・マターに関連した楽曲が多く称えられた。
SNSではブリオナ・テイラーを追悼
米時間3月14日に行なわれたグラミー賞の前日3月13日は、ケンタッキー州ルイビルの自宅で就寝中に別の住所と間違って押し入ってきた警察官に撃たれて亡くなった黒人女性ブリオナ・テイラーの命日。
デュア・リパをはじめセレブたちがSNSでブリオナを追悼した一方、アワードでは、リル・ベイビーのパフォーマンス冒頭で警察官に撃たれる男性役を演じたアクティヴィスト兼俳優のケンドリック・サンプソンが、この日のパフォーマンスを通してブリオナを称えると宣言した。
2020年5月末に起きたジョージ・フロイド氏の死をきっかけに大きなうねりとなったブラック・ライヴズ・マター運動。グラミー賞では、「The Bigger Picture」のパフォーマンス中に「これはトレンド(流行り)ではない」と訴えられたり、H.E.R.の受賞スピーチでは「2020年の夏に起こした闘いの時にあったエネルギーを持ち続けましょう」という発言が出たりと、2021年もブラック・ライヴズ・マター運動は力を弱めることなく続いていくことが強調された。(フロントロウ編集部)