世界経済フォーラムによる「ジェンダーギャップ指数2021」が発表され、日本が過去ワースト2位となる120位(156カ国中)でG7最下位に。そこで今回は、今年12回目の世界1位を獲得したアイスランド事情にフォーカス。アイスランドは今でこそ大統領や首相が女性であることが当たり前になったけれど、1915〜1983年の女性議員の割合は2〜5%だった。そんなアイスランドはここ数十年でどんな政策を進めてジェンダーギャップを縮めてきたのか?今回はそのうちの6つの法律をピックアップ。(フロントロウ編集部)

1. 同一労働同一賃金が法律で義務化されている

画像: 1. 同一労働同一賃金が法律で義務化されている

 アイスランドでの男女の給与格差が14%だった2016年に、アイスランド国営放送が「このままのスピードで進んだら給与格差を解消するのは2068年になる」と報道。それを受けてアイスランドでは、2018年に世界で初めて男女の給与格差を禁じる法律を制定。この法律によって、2020年からは25名以上の従業員がいる団体は男女ともに同一賃金を支払っているという証明書の提出が義務づけられ、証明できない場合は高額の罰金を払うことに。

 同一労働同一賃金が適切にジャッジできるように職務評価ツールも導入されており、ハーバード大学によると、雇用する側とされる側の両者がこのツールの導入で職場環境が改善したと答えたという。ちなみに、法案誕生に繋がった報道があった2016年のアイスランドのジェンダーギャップ指数ランキングは世界1位。その状況の中でもさらに対策を強化したこの一件は、現状に甘んじず“問題があるから解決する”という、国としての当事者意識と行動力の現れ。

2. 学校でジェンダー平等の教育が義務化されている

画像: 2. 学校でジェンダー平等の教育が義務化されている

 社会の問題を解決するには、まずは教育から。アイスランドで2008年に施行された「女性の地位と男性の権利の平等に関する法律(男女共同参画法)」の中では、全教育課程でジェンダー平等を教えることが義務化されている。結果、アイスランドのプレスクール〜大学ではスポーツから勉学まで学校活動のすべてにおいてジェンダー平等が取り入れられているかが考慮されており、“男子はこれをやって、女子はこれをやる”という違いのある教育はもってのほか、対象が女子男子にかかわらずジェンダー差別的な記述のある教科書の使用も禁じられている。

3. 育休のシステムが世界最高レベル

画像: 3. 育休のシステムが世界最高レベル

 育休を導入している国はたくさんあれど、導入した後の問題点を分析して改正するという点ではアイスランドは秀でている。当初の育休は産んだ女性を対象としていたものの、現在の育休は、女性もパートナーも平等に育休を取ることが軸になっている。2021年現在は、子供を産んだ女性に5ヶ月、パートナーに5ヶ月、あと2ヶ月はどちらかという合計12ヶ月が育休として取得でき、この期間は給与の80%(最大約50万円)が支払われる。アイスランドで男性の育休の権利拡大が始まった直後には90%の男性が育休を取得し、この法案が男性の育児への参加を後押し、それが女性の社会進出を後押しするという、好循環を生み出した。

4. ジェンダー予算を導入している

画像: 4. ジェンダー予算を導入している

 UN Womenが「ジェンダー平等を達成するための素晴らしいツール」とするジェンダー予算(Gender Budgeting)とは、予算を考えるときに、ジェンダーごとの問題点や状況を分析してそれを予算編成に反映させること。アイスランド政府では「社会における女性と男性、少年と少女の状況が異なるため、予算が人々に与える影響も異なります。しかし、一般的に、予算は外見上、公平であるように見えるため、この違いは明確ではないです」として、2009年からジェンダー予算を導入し、2016年からは国家予算での導入を公共財政法で義務化した。

5. 企業の役員で最低40%のクオータ制を導入している

画像: 5. 企業の役員で最低40%のクオータ制を導入している

 決定権を持つ立場にいる人は、その国に実際に暮らすジェンダーや人種などを反映したレプリゼンテーションがあることが不可欠。アイスランドでは2010年より導入された法律により、従業員50人以上の企業は取締役会に男性と女性をそれぞれ40%以上配置してジェンダーの平等を図ることが義務化された。このように事前に数値を決めて人材を割り当てるのはクオータ制と呼ばれ、平等な参加を促進するために効果的とされている。さらにアイスランドでは、従業員数25人以上の企業は、雇用されている男女の数と、管理職に就いている男女の数を開示することが求められている。

6. セックス業の罪は、売る側ではなく買う側

画像: 6. セックス業の罪は、売る側ではなく買う側

 アイスランドではセックスの売買について2007年に大きな変化があった。政府は2007年に、セックスを売っている人の大半は、他に選択肢がないか、他人に売春を強要されているからだとして、それまで最大禁錮2年だった売春行為を合法化。逆にセックスを買うという買春行為が違法化され、セックスの売買で逮捕された場合は100%買った側の罪となった。さらに2009年には従業員のヌードから利益を得ることが禁じされ、ストリップクラブの運営が禁止に。

 他にも、政府が進める男女共同参画に関する調査、宣伝、提唱、法律のチェックをする機関を設立するなど、進化に対するアクションを積極的に取っているアイスランド。ジェンダーギャップ指数で12回も1位を取っていることが納得の内容だった。(フロントロウ編集部)

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