Photo:ゲッティイメージズ、スプラッシュ/アフロ、ニュースコム
枕営業を強要される女性は多い。そしてそれを告発した女性を攻撃する人も多い。日本の芸能界だけでなく、他の国でも、多くの女性が闘っている。(フロントロウ編集部)

女性を襲う枕営業強要

 日本の芸能界でも深刻な問題となっている「枕営業」。日本語では、性的な行為を強要された側が、むしろ“自らした側”と印象づけられる枕営業という言葉そのものに女性蔑視な視点があると指摘されているが、英語では「casting couch(キャスティング・カウチ/キャスティングのソファー)」と表現される。

 業界で権力を持つ人物が、仕事を与える代わりに性的な行為を強要する事件は多く、被害者はその力関係から声をあげることも難しい。

 2017年にハリウッドの大物プロデューサーであるハーヴェイ・ワインスタインが、過去数十年にわたって女性たちに対して性加害を行なっていたことが告発され、逮捕され、実刑判決が下されたけれど、つまりそれは何十年も被害を告発できなかった女性がかなりの数存在したことを意味する。また、ハーヴェイが性的な行為を強要していることは業界で有名だったものの、長年それが黙認されてきたことも問題となった。

画像: 女性を襲う枕営業強要

 しかし、権力を持つ男性が女性に性的な行為を強要してきたのは、残念ながら、そして当然のことながら、ハーヴェイが初めてではない。過去にも多くの女性が、自身の経験を明かしてきた。そしてそれでも、社会は変わってこなかった。


シャーリーズ・セロン

画像: シャーリーズ・セロン

 現在は自分の制作会社を立ち上げ、様々な女性を描く作品を世に送り出している俳優のシャーリーズ・セロンは、19歳の頃にキャスティング・カウチに遭ったと、英Hello!のインタビューで明かしている。

 プロデューサーの家に土曜日の夜に招待されたそうで、当時はそれが普通のことなのかと思ったそう。しかしそのうちに、その“意味”が明確になり、拒否したという。


シャーリー・テンプル

画像: シャーリー・テンプル

 6歳でアカデミー賞特別賞を受賞したほどの大御所で、その後は外交官として活躍し、国連代表を務めたほどの故シャーリー・テンプルですら、性的行為を強要されそうになったことを、自叙伝『Child Star』で明かしている。

 しかも当時彼女は、12歳。メトロ・ゴールドウィン・メイヤーのプロデューサーに男性器を見せられ、どうしたら良いか分からず苦笑したところ、部屋から追い出されたという。


ヘレン・ミレン

画像: ヘレン・ミレン

 被害を告発しても、事件が起こったことを否定されるのは、大英帝国勲章を受勲し、Dameの敬称を持つヘレン・ミレンにすら起こった。

 1964年に受けたオーディションで、監督のマイケル・ウィナーに振り返って身体を見せるよう言われたと、2007年に受けたインタビューで明かしたヘレン。

 「屈辱で、心底激怒した。それは侮辱であり、性差別であり、どのような女優であっても、そのように、まるで肉の塊のように扱われるべきではない」

 しかし、ヘレンの告発に対するマイケルの返答はよくあるもので、「振り返るよう言った覚えはないし、もしそう言ったのなら本気ではなかった」とし、ヘレンは良い俳優だとしたうえで、「しかし彼女の当時の記憶には少し欠陥がある」とコメントした。


マドンナ

画像: マドンナ

 また、俳優だけでなくシンガーでも、性行為を強要されそうになった女性は多い。

 今では大御所のマドンナも、無名時代には多くの経験をしたと明かしており、「『オッケー、じゃあフェラしてくれよ』とか『オッケー、もし君が俺と寝てくれたらね』って言ってきた男なんて数え切れない。セックスが交換条件だから」と振り返っている。

枕営業を告発した女性を襲う被害者非難

 ショービズの世界だけでなく、政界や企業など、社会のなかで枕営業強要を告発した女性たちは、他にも数多くいる。しかし女性たちの告発が信じてもらえないどころか、女性たちが攻撃されることが問題となっている。

 被害を告発した女性を責めることは、ヴィクティム・ブレーミング(被害者非難)と呼ばれる。例えば、アメリカにおいて性犯罪の通報のうち90〜98%が真実というデータがあるにもかかわらず、被害者が嘘つき呼ばわりされることは多い。

 男性同士がかばい合う社会を指す“ボーイズ・クラブ”、性暴力が普通のこととされ、責任を果たさないメディアが助長する“レイプカルチャー”といった言葉は、近年、性暴力が蔓延している現在の社会に対して多く使用されるようになっている。

 そして、そんな社会を変えるために、被害を告発した女性たちを「信じる」と声をあげる人も増えている。フランスの超大手エリート・モデル・マネジメント(Elite Model Management)のヨーロッパの元トップであるジェラルド・マリーは、1980年代から90年代にかけて未成年者を含む複数の女性たちをレイプしたとして告発され、捜査されている。

 そんななか、ジェラルドと当時結婚していた元妻のリンダ・エヴァンジェリスタは、「彼女達が事実を話していると信じます」と、声をあげた女性たちを信じると言うコメントを発表した。

 他にも、俳優のペン・バッジリーは、共演者のクリス・デリアに不適切な性的行為の疑惑が出た際に、「この時代において私たちがすべきことがあれば、それは、ビリーヴ・ウィメン(女性を信じること)だと私はわかっています」コメントしている

 とはいえ、性犯罪を受けたという告発が、加害者の逮捕に繋がることは稀。その事実もよく考えればおかしい。社会が改善するために、男性、女性、メディアなど、様々な面からの変化が早急に求められている。(フロントロウ編集部)

This article is a sponsored article by
''.