ナイキが「手を使わずに履けるスニーカー」というキャッチフレーズで2月に発売したGo FlyEaseに思わぬ盲点。障がいのある人たちから不満が噴出している理由とは? (フロントロウ編集部)

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ナイキが発表した「手を使わずに履けるスニーカー」

 大手スポーツブランドのナイキ(NIKE)は、2021年2月、手を使わずに簡単に着脱できるスニーカー「Go FlyEase(ゴー・フライイーズ)」を発売。

画像1: ナイキが発表した「手を使わずに履けるスニーカー」

 近代的なデザインも魅力的な同スニーカーは、履き口を開いたときも閉めた時も安定した状態を保つ「双安定性ヒンジ」と呼ばれる”ちょうつがい”のような仕組みと、ミッドソールに仕込まれたテンショナー(張力調整装置)という2つの特許出願中の技術を組み合わせることにより、つま先を入れてかかとを踏み込むだけで履け、脱ぐ時もかかと部分をもう片方の足で踏むことで簡単に脱げる構造となっている。

 ハンズフリーで着脱できるフライイーズ・テクノロジーは、もともと、障がいがあるアスリートたちの意見や想いを反映して、ナイキが2015年に開発をスタートした技術。

画像2: ナイキが発表した「手を使わずに履けるスニーカー」

 Go FlyEaseの発売時には、普段はスニーカーを履くのに10分程度かかってしまうという障がいのある人々から、「ついに理想的なシューズが誕生した! 」と喜びの声が上がった。


転売ヤーも参戦し入手困難に

 しかし、この革新的なスニーカーをマニアたちが放っておくわけがなく、まずは北米、日本、ヨーロッパ、中東、アフリカの一部会員向けに招待制で販売されたGo FlyEaseは即完売。

 購入者のなかには、高値で転売を試みる“転売ヤー”も含まれており、定価120ドル(約約1万2千円)に対して500ドル~700ドル(約5万4千円~約7万6千円)といった値段で海外のネットオークションや転売サイトなどで取引されている。

画像: 計3色展開

計3色展開

 Go FlyEaseの発表に合わせて、ナイキは「障がいがある人優先」といった販売条件を設定したわけではなく、公式サイトでは、車椅子フェンシングのべべ・ヴィオ氏による「これは障がいのあるアスリートに限らず、あらゆる人のリアルな生活にも活用できる新しいテクノロジーです」というコメントも紹介。

 しかし、同アイテムの発売を告知したメディアの多くは、「障がい者にとって履きやすいスニーカー」といったうたい文句を並べており、当事者たちは、当然、自分たちにも手に入れるチャンスがあるはずだと期待した。

 ところが、フタを開けてみると、身体的な理由からGo FlyEaseが本当に欲しいと思っている人たちの手には届きにくいというのが現状。障がい者コミュニティはナイキと転売ヤーに対して不満を募らせている。


障がいのあるTikTokerの動画に賛同が集まる

 先天性多発性関節拘縮症と共に生きる19歳のルイ・リンガードは、“アクセシビリティ(アクセスしやすい)”をテーマにしたGo FlyEaseが、自身のように障がいのある人々にとって“アクセシブル(手の届きやすい)”な物ではなくなってしまっているという不条理をTikTok動画を通じて指摘。

@notlewy

##stitch with @nowthis isn’t the current sneaker culture just great � ##fypシ ##psa ##disability ##sneakers ##sneakerhead

♬ SO FAR AWAY - ZØYA

 「包括性やアクセシビリティが称賛されてバズったスニーカーなのに、僕みたいに障がいがある人たちにとっては手が届きにくくて、転売ヤーやボットが買い占めて値段をどんどん釣り上げてるのっておかしくない? 」「本当に必要としている人がこの靴を手に入れようとしたら、500ドルも払わなきゃならないんだよ」「アクセシビリティってこういうことじゃなくない?」

 そうコメントしたルイの動画の再生回数は、記事執筆時点で165万回を突破しており、コメント欄には「本当にその通り」「転売ヤーはもちろん悪いけど、もっとたくさん生産しなかったナイキにも問題がある」といった賛同の意見が多く寄せられている。

 ナイキに限らず、メーカーが数量限定でスニーカーを発売することはめずらしいことではなく、最初は少数を販売し、その売れ行きや消費者の関心に基づいて次の生産数を決めるというケースは多い。2月のGo FlyEaseの発売時、ナイキは「数カ月後にはより広く発売する予定」とアナウンスしていた。一般販売の目途は2021年後半となっているが、その際には争奪戦にならず、Go FlyEaseを必要としているより多くの人の手に渡ることを願うばかり。(フロントロウ編集部)

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