テレビ・映画での正しいレプリゼンテーションを「痛み」でも行なって欲しい。実は多くの人が悩まされている慢性痛の描き方に関するガイドラインが発表された。(フロントロウ編集部)

日本では4.4人に1人が慢性痛に悩まされている

画像: 日本では4.4人に1人が慢性痛に悩まされている

 テレビや映画における正しいレプリゼンテーション(表現)の重要性は、近年強く求められている。例えば、ハリウッド映画でアジア人が正しく表現されずに“アジアなまりのオタク”のようなステレオタイプばかりで描かれていると、社会でそのステレオライプを強調してしまうだけでなく、アジア系の子供たちの想像力や自尊心にも悪影響を与えてしまう。

 そんななか今回、イギリスのチャリティ団体Versus Arthritisが「慢性痛(または慢性疼痛)」にも正しいレプリゼンテーションを求めるとして、クリエイターたちが参考にできるガイドラインを発表した。

 慢性痛とは、治療をしても一過性の痛みで終わらずに3ヶ月以上にわたって慢性的に続く痛みのこと。日本では成人の4.4人に1人にあたる約2,315万人が慢性痛に悩まされている。英語ではクロニック・ペインと呼ばれ、イギリスだけで1,800万人が慢性痛と共に生活しているという。

テレビ・映画で慢性痛の正しいレプリゼンテーションを

 Versus Arthritisが慢性病を抱える4,000人に対して行なった調査によると、84%の人が「自分の痛みを適切に表現しているキャラクターはいない」と答え、56%の人が「テレビや映画は痛みをうまく表現していない」と答えたという。

画像: テレビ・映画で慢性痛の正しいレプリゼンテーションを

 「痛みには、身体だけでなく精神面へのインパクトもあるのです。何ヶ月も、何年も痛みを感じていると、その人の気分や自信にも影響を与えてくるのは不思議ではありません」としたVersus Arthritisは、おおよそ半数の人が、テレビや映画で慢性痛が適切に表現されていないせいで、社会における慢性痛の理解が少ない、家族や友人に話しづらいと感じていると明かした。

 慢性痛は目に見えない場合が多いため過小評価されがちだけれど、痛みに苦しんでいないわけではない。シンガーのレディー・ガガは世界中をまわるツアーを繰り返していたが、その裏で、激しい痛みやこわばりなどの症状がある線維筋痛症にずっと悩まされていたことを2017年に公表。慢性痛を抱えていたことは、本人が公表するまで熱心なファンでさえ知らなかった。

画像: レディー・ガガは線維筋痛症という慢性疼痛に悩まされていたことをドキュメンタリー『レディー・ガガ:Five Foot Two』で明かした。

レディー・ガガは線維筋痛症という慢性疼痛に悩まされていたことをドキュメンタリー『レディー・ガガ:Five Foot Two』で明かした。

慢性痛を抱える人をテレビ・映画で正しく表現する7つの方法(Versus Arthritis発表)

  1. 治療法や具体的な症状を調べて、キャラクターの体験が正しいことを確認する。症状と作品の他のストーリーとの整合性を確認する。
  2. 日々の経験を正しく描写できるように、慢性病と共に暮らす当事者から話を聞く。そしてもし可能ならば、パフォーマーやライターに当事者を起用する。
  3. 慢性病は予測できないものであることを念頭に置き、症状に変動があることを描く。
  4. 症状とうまく付き合っているシーンも盛り込む。
  5. 演じる時は、慢性的な痛みを正確かつリアルに表現するために、しぐさ、ジェスチャー、表情を考慮する。
  6. 慢性的な痛みを伴う生活の経験について、どのような言葉を使っているかを注意深く考える。例えば、脚本の表現が誤ってネガティブな固定観念を助長していないか、一歩下がって再確認する。
  7. 病状をその人の特徴や唯一のストーリーにしてはいけない。

 Versus Arthritisは今回の発表で、「テレビや映画業界と協力して、テレビ番組や映画で慢性的な痛みが描かれる方法を変え、痛みの現実と社会に蔓延している状況を反映した形で、慢性的な痛みがより多く描かれるようにしたいと考えています」としている。(フロントロウ編集部)

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