LGBTQ+モデルで再現したレトロ広告が話題に
いまでは、当たり前のようにYoutubeやInstagramなど、さまざま媒体から最新のメイク情報をキャッチできるけれど、一昔前まで新しい化粧品やメイクトレンドを知る手段は、雑誌やポスターに掲載される「美容広告」に限られていた。
そのため、当時の女性雑誌の美容広告が提示する美しさが「美の基準」であり、その基準から外れているとされる女性に対しては、目の大きさや鼻の高さ、若々しさが足りないというネガティブはイメージを植え付け、彼らが提示する「美の基準」に合わせるように促す広告表現も多かった。実際に、1970年に登場した化粧品広告のほとんどは“細身の白人女性”がモデルを務め、現在ではばかられる性差別的な表現や異性愛規範(※)が推奨されていた。
※異性愛規範とは:異性愛が唯一の性的指向とされる規範のこと。
そんななか、ニューヨークで活躍する写真家のジュリア・コミタとメイクアップアーティストのブレンナ・ドルーリーが、1970年代の美容広告を“現代風”に再現するというプロジェクト「Prim 'N Poppin」を発足。
70年代の美容広告に登場したコスメや写真の構図はそのままに、当時のモデルをさまざまな人種のLGBTQ+モデルに入れ替え、多様な性が持つ美しさを表現。また、性差別的な安っぽいキャッチフレーズも一新し、パワフルでユーモア溢れる言葉に差し替えている。
美の基準はひとつではない
ブレンナによると、同プロジェクトを発足したきっかけは、これまで推奨されていた「美の基準」がどれだけ不健全なものであったかを再認識してもらうため。ブレンナは「クリエイターとして、美容業界に対して自分たちのマーケティングに責任を持ち、人材を多様化するよう働きかけたいのです」と米The Gardianでコメント。
実際に、同プロジェクトでモデルを務めたトランスジェンダーのマリア・リベラも、未だに美容業界には、従来の「美の基準」が根強く残っていると指摘。例えば、6月のプライド月間の“間だけ”トランスジェンダーモデルを起用したがる企業は多いという。
マリアは「これらのトークン主義(※)な考えを主流から排除するためには、私たちが積極的に外に出て、自分たちの空間を作る必要がある」とコメント。続けて、マリアは「拒絶されることを恐れたり怖がったりする必要はなく、むしろ違いを認め合い、それぞれの個性を受け入れることが重要。そうしないと、ほかの人たちは私たちの中にある“美”を見出すことができない」と主張した。
トークン:象徴的、もしくは名ばかり
これらのLGBTQ+モデルたちが抱える悩みや想いを伝えるため、同プロジェクトのウェブサイトには、写真とともに各モデルの“生の声”も掲載。1970年代に欠けていた「多様性」について語り合うことで、「今後もっと多くのエージェンシーが人材の幅を広げてくれることを願っている」とブレナンは締めくくった。
一昔前の「美の基準」に比べると、確かに少しずつ進歩はしているけれど、本当の多様性を実現するためには、まだまだ課題が残っていそう。これをきっかけに、多様な美しさが認め合える世界に近づけることを願いたい。(フロントロウ編集部)