6月2日は、世界摂食障害アクションデー(World ED Action Day)。誰でも患う可能性がある摂食障害は、正しいサポートを受ければ治る病気であるということを多くの人に知ってもらうことを目的とした日の今日、当事者である俳優やミュージシャンが語った言葉を振り返る。(フロントロウ編集部)

摂食障害って何?

 最近では、拒食症や過食症という言葉を1度は耳にしたことがある人は多いはず。食事に関連した行動に問題が続き、心と体の両方に影響する病気がまとめて摂食障害と呼ばれる。そのなかに、神経性やせ症、神経性過食症、過食性障害が含まれる。

 摂食障害は10代から20代の女性が抱えることが多く、厚生労働省によると、医療機関を受診している摂食障害患者は1年間に21万人とされている。しかし、保健所や学校、摂食障害治療支援センター相談事例の調査で約半数の患者が治療を受けていないという報告もあり、実際に摂食障害を抱えている人の数は、かなり多いと予想できる。

 2017年の「ダヴによる少女たちの美と自己肯定感に関する世界調査レポート」では、世界中の少女のうち10人に7人が、食事制限などをしていると回答。また、自己肯定感の低さは本人の心や体だけに影響するものではなく、実際の体重とは関係なく自分を太っているとみなしている少女は成績が低いという調査結果もある。


生理が止まる、命を落とす前に

 摂食障害は正しい治療を受ければ治るけれど、正しい治療を受けなかった場合は、命を落とすこともある。世界に摂食障害という病気を知らしめるきっかけとなったカーペンターズのカレン・カーペンターの死は、今から約40年前に起こった。

画像: カレン・カーペンター

カレン・カーペンター

 ボディ・シェイミング(体型批判)や家族関係の問題などによって、長年、摂食障害を患っていたカレンは、摂食障害による負担から心不全によって32歳で死去した。彼女の死から40年が経つけれど、社会のなかで自分の身体を受け入れられない人は増加している。

 その原因の1つには、メディアで映される“理想のボディ”が同じような体型であることがある。また、俳優のロザムンド・パイクが「私たちはみんな、本当の自分はどう見えるのかという理解を失ってきている」と指摘するように、最近では、スマホで簡単に画像加工ができることから、個人のレベルでも自分たちのリアルを否定し、加工している。

 多くの人が、とくに若い女性たちが、理想の体型とされるものを目指して、自分の体重を不必要に減らそうとしている。しかし摂食障害は、心にも体にも深刻に影響するもの。過去に摂食障害を患っていたことを公表している俳優のリリー・コリンズは、「髪もツメももろくなってしまった。喉がただれ、食道も痛かった」「生理が2年も止まったの。すごく怖かった。子供を産む機会を台無しにしてしまったと感じた」と、当時の辛さと恐怖を率直に明かしている。

画像: リリー・コリンズ

リリー・コリンズ


理想の身体って誰が作り出したもの?

 体型へのプレッシャーは、世界中の多くの女性が背負わされているけれど、“理想的”とされるボディイメージは、なぜ理想とされているの?

 シンガーのテイラー・スウィフトも、過去に摂食障害を抱えたことを明かしているけれど、女性たちが課されている体型のジレンマに気がついたことが、摂食障害を克服することに繋がったという。

 「もし十分にスリムな体形になったとして、誰もが求めるセクシーなお尻は手に入らない。でもセクシーなお尻を手に入れたいなら、ある程度の体重は無いと無理。でもそうしたら、今度は、お腹が出すぎってことになる。そんなのって、絶対に不可能でしょ」

画像: テイラー・スウィフト

テイラー・スウィフト

 拒食症だった俳優のダヴ・キャメロンは、当時抱えていた考えについて「愛されるためには、ものすごく細くならなければいけないと思っていた」と話す。しかし、自分をロールモデルとする若い少女たちのことを考え、「自分が小さいころなりたいと思っていたお手本の女性像になるって決めた」と拒食症を克服した彼女は、「自分自身に自信が芽生えた今の方が、より良いロールモデルになれた」と思える状態になったという。

 例えばトップモデルであっても、角度によっては二段腹になる。最近ではモデルたち自身も自然な体型を発信することが増えており、以前、ベラ・ハディッドはお腹に線が入っているリラックスした姿を公開。

 また、イタリア人ファッショニスタのキアラ・フェラーニは、「貧乳だけど心はビッグ」というコメントを添えて、自分の写真を公開した。


痩せたとか太ったとか…、体型にコメントしないこと

 人生の様々なステージにおいて、いろいろな理由から体型に変化が出ることは、人間として当たり前のこと。そしてその体型の変化を“褒めた”としても、それが悪い影響に繋がることがある。

 良かれと思っていたとしても、体型についてコメントすることは非常にセンシティブなことだと自覚していない人は少なくない。

 例えばテイラーは、スタイリストから「あなたは、サンプルサイズをそのまま着られて素晴らしい。普通なら“お直し”が必要なのに。ランウェイに出たばかりの洋服をそのまま着られるなんてすごい!」と褒められた経験も、食事制限を行なうきっかけの1つだったと話している。

 摂食障害に苦しんだ過去を持つシンガーのデミ・ロヴァートは、痩せた/太ったというコメントは、どういった意図であれたちが悪いと、その思いを語った。

画像: デミ・ロヴァート

デミ・ロヴァート

 「過去に摂食障害に苦しんでいた人に対して痩せたことを褒めるのは、誰かに体重が増えたことを褒めるのと同じくらいたちが悪い。もし、あなたがその人と食の長い歴史を知らないなら、その人の体についてコメントしないで。たとえあなたの意図が純粋であっても、その人が夜中の2時に起きてその発言を考え直すことになるかもしれないから...。
 (褒められて)気分が良くなることはあるかって?そりゃあ、たまにはね。でも、気を良くするのは、『ほら、みんな細い方が好きなんだよ』とか『食べる量を減らせば、もっと痩せられるよ』という、私の頭の中で大声で叫ぶ摂食障害の声だけ。そして、それは時に最悪でもある。『ってことは、以前の私の体をどう思ってたんだろう?』とか考えちゃうから。
 この話の教訓。私は魂の抜け殻である体以上の存在であって、日々、そのことを自分に言い聞かせるために戦っている。だから、お願いだからみんなが私のことをそういう風にしか見ていないと、私に思わせないで」


男性でも摂食障害になる

 摂食障害になるのは女性のほうが多いというのは事実だけれど、男性でも患うことがある。

 イギリスのクリケット代表チームで活躍し、キャプテンも務めたアンドリュー・フリントフは、引退後に、現役時代から摂食障害を抱えていることを公表。太ったクリケット選手として知られるようになったことが原因にあるといい、また、体格の良いスポーツ選手であったことで、助けを求められなかったと明かしている。

画像: アンドリュー・フリントフ

アンドリュー・フリントフ

 「20代前半には、助けを求めようとしたこともあったんです。チームに栄養士の方がいたので。問題を抱えてると言おうとしたことがあったんですが、彼女は話の最後に、多くの女性と関わってきたと言っていて…、その部屋にいる誰かが摂食障がいを抱えているなんて思えないと言った。私たちは明らかに、若い男たちの集団だからって。何かを話したり、言ったりすることができる気がしなかった。プレストン出身の195cm(6ft 4)の野郎としては、私は摂食障がいを持つタイプではないでしょう。だから隠し続けて、それについて話したくなかった」

 摂食障害ではないけれど、ボディイメージに関する強迫観念を持ってしまうことはある。例えばラッパーのエミネムは、運動をしてカロリーを消費しなければいけないという強迫観念があったことを明かしている。

 摂食障害の治療には、当事者だけでなく、周囲のサポートが重要。そして社会全体が、体型批判やSNSなどの問題に取り組んでいく必要がある。(フロントロウ編集部)

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