父の遺志を継ぎ、伝説の“最後の龍”シスーの力で、バラバラになった世界を再び一つにしようとするラーヤの冒険を追うディズニー映画『ラーヤと龍の王国』。ディズニープラスで見放題配信が始まった本作をスクリーンに届けた、女性リーダーたちの物語をご紹介。(フロントロウ編集部)

アジア系や女性のレプリゼンテーションを広げる『ラーヤと龍の王国』

画像: アジア系や女性のレプリゼンテーションを広げる『ラーヤと龍の王国』

 『ラーヤと龍の王国』は、魔物のせいで父を失い1人で生きてきた“最後の希望”ラーヤが、“最後の龍”であるシスーと一緒に、魔物のせいでバラバラになってしまった世界を再び1つにしようとする、アクション・アドベンチャー映画。2021年3月5日に映画館とDisney+プレミアアクセスで同時公開された本作は、Disney+にて6月4日より追加料金なしでの見放題配信がスタートした。

 本作は、ディズニーの長編アニメ映画としては初めて東南アジアの文化にインスパイアされた作品であり、東南アジアをルーツに持つ女優が主人公の声優を務めた(ラーヤ役のケリー・マリー・トラン)初めてのディズニー長編アニメ映画でもある。そしてその他の声優陣も、シスー役を務めたオークワフィナをはじめ、アジア系俳優を中心に構成された。

 また、強く勇敢で賢く思いやりのある女性である主人公のラーヤは、本作の公開で、史上初の東南アジア系のディズニー・プリンセスとなった。

制作チームでも女性が活躍した作品

画像: 制作チームでも女性が活躍した作品

 『ラーヤと龍の王国』のプロデューサーを務めたのは、『モアナと伝説の海』を製作したオスナット・シューラー。イスラエル出身の女性アニメクリエイターとしてアニメ界でのマイノリティ女性のレプリゼンテーションを高めているシュラー氏は、作品で多様性を描くには舞台裏にもその多様性を反映させることが重要だと語る。

 「制作現場に様々な性別、バックグラウンド、民族の人がいればいるほど、作品に反映され、自分たちと同じような人々を作品の中に見ることできます。これはとても素晴らしいことです。このようなチームづくりにより、私たちはお互いから多くのことを学ぶことができ、共に学び合うことで相手への共感を深め、それぞれの個性的な貢献を受け入れながら、全員で力を合わせ、共により良い世界を作っていくことができます。このメッセージが今以上に必要とされている時はないのはないでしょうか」

 そんなシュラー氏の言葉どおり、『ラーヤと龍の王国』の制作は多くの女性の活躍に支えられた。

 まず、クリエイティブはウォルト・ディズニー・アニメーションのチーフ・クリエイティブ・オフィサーであるジェニファー・リーが指揮。さらに共同脚本家にはアデル・リム、ストーリー担当にはフォーン・ヴィーラサンソーン、アニメーション共同担当にはエイミー・スミードが抜擢された。

 また、本作は、女性だけのテクノロジー・リーダーシップ・チームを編成した作品でもある。こちらでは、テクニカル・スーパーバイザーをケルシー・ハーリーが、アソシエイト・テクニカル・スーパーバイザーをガブリエラ・ヘルナンデスとシュウェタ・ビスワナサンが担当した。

数年で男女比がほぼ同等に、ディズニーの取り組みの力

画像: 左からケルシー・ハーリー、ガブリエラ・ヘルナンデス、シュウェタ・ビスワナサン

左からケルシー・ハーリー、ガブリエラ・ヘルナンデス、シュウェタ・ビスワナサン

 女性だけのテクノロジー・リーダーシップ・チームの一員を務めたハーリー、ヘルナンデス、ビスワナサン氏の3人は、制作チームにおける女性の比率の多さはディズニーがスタジオをあげて作り出した変化のおかげであるとして、お互いに協力的で仲間から学ぶ機会が豊富にある環境を作ろうとしているスタジオの姿勢を明かした。

 ハーリー氏は、「少し前までは、テクニカル・ディレクター(以後、TD)部門には数人の女性しかいませんでしたが、今では部門内でもリーダーシップチームにおいても男女比がほぼ同等になりました」と、数年で社内の多様性が大きく変わったことを明かし、全員が女性のテクノロジー・リーダーシップ・チームの一員になったことを「信じられないような経験」としている。

 ビスワナサン氏もこの意見に賛同し、「ディズニーに入社できたこと、そして正直にお話ししますと、性別ではなく、純粋に個人の実力に基づいて成功や昇進が判断される時代に働けることを幸運に思っています」 と話し、「未だにふと思うと、小さい頃に見ていた映画を創った人たちや、大学のコンピューター・グラフィックスのコースで学んだ作品を創った人たちと働けることに、感激することがあります。そして10年近く経った今、ここで働き、自分の足跡を残せていることをとても幸せに感じています。このスタジオは本当に協力的で、『私』個人ではなく、『私たち』みんながいかに協力して映画を世に送り出せるかを考えています」と心のうちを明かした。

 また、ヘルナンデス氏は、『ラーヤと龍の王国』制作時にメンタリング(※指導者として人材育成すること)と協力をしてくれたテクノロジー・リーダーの仲間たちに感謝し、自分のチームにもその恩返しをしようとしたと話す。「スーパーバイザーを務めるのは初めてでしたが、ケルシーとシュウェタはいつも私を支援してくれました。彼らは私を信頼し、自分自身のやり方が見つけられるように見守ってくれ、私が必要とすればいつでも支援してくれました。私はチームと共に成長できたと思っていますし、チームも同じように感じてくれていると良いです。この作品を通して、TDにも成長して輝くための最高の機会を与えることが私の目標のひとつで、私にとってそれは非常に重要なことでした」として、性別や背景にかかわらず、チームが共通の目的に向かって協力する上で、互いから学び合い、支え合える制作環境づくりを整える重要性を後押しした。

『ラーヤと龍の王国』ではこれまでの技術を総結集

画像: 『ラーヤと龍の王国』ではこれまでの技術を総結集

 では、『ラーヤと龍の王国』におけるハーリー氏らの役割は具体的にどんなものだったのか?

 『ラーヤと龍の王国』は、ファンタジーの世界である「クマンドラ」を舞台に、5つの国にそれぞれ異なる独自の文化や生物が存在するという設定。制作にあたって苦労した点として、「それぞれが多様な外観と雰囲気を持っており、この世界がどれほど広いかを表現することが課題の一つでした」とハーリー氏は振り返る。本作ではそのハードルをクリアするために、なんと過去10年間に開発してきた技術を結集。例えば、『ベイマックス』で初めて採用された「Hyperion(自社製レンダラー)」、『ズートピア』のために作られたファー・シミュレーション、そして『モアナと伝説の海』のウォーター・ツール、『アナと雪の女王2』で改良されたボリュームシステムと環境ツールセットといった具合。

 テクニカル・リーダーシップ・チームの役割は、映画に必要なすべての技術を監督し、アーティストが監督の目指す作品を実現させるために必要なツールや技術リソースを提供することであり、テクニカル・スーパーバイザーを担当したハーリー氏は、「私の仕事は、技術的な観点から映画制作に必要なものがすべて揃っているかどうかを確認することであり、必要なツールセットが揃っているかの確認から、十分なレンダリング容量やディスクスペースがあるかの確認まで、多岐に渡ります」と説明する。

 また、アソシエイト・テクニカル・スーパーバイザーのヘルナンデス氏は、「私たちの仕事は少し裏方ですが、同じくらい重要であり、共に働くアーティストたちから感謝の気持ちが伝わってくるとやっぱり嬉しいですね」 とコメントした。

これからアニメーションの世界に挑戦する女性たちへのメッセージ

 最後に、技術力とリーダーシップで『ラーヤと龍の王国』を完成に導いた女性チームから、アニメーション・テクノロジーの分野で同じような道を歩もうと考えている女性たちに向けてメッセージが贈られた。

 テクニカル・スーパーバイザーであるケルシー・ハーリー氏は、「自分に自信を持ち、自分の声を見つけること。この2つが人生を変え、怖くても様々なチャンスに挑戦できるよう後押ししてくれるから」とコメント。

 アソシエイト・テクニカル・スーパーバイザーのガブリエラ・ヘルナンデス氏は、「自分に正直であり続けること。行動することを恐れず、自分自身を信じてください」とメッセージ。

 そしてアソシエイト・テクニカル・スーパーバイザーであるシュウェタ・ビスワナサンは、「好奇心と柔軟な気持ちを持ち、疑問を追求することを恐れないこと。なぜならそれが優れた学び方だから」とアドバイスをした。

『ラーヤと龍の王国』
ディズニープラスで見放題で配信中

(フロントロウ編集部)

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