およそ1年ぶりとなる新曲「Cure For Me」をリリースし、9月にはスーパーソニックでの来日を控えているオーロラにフロントロウ編集部がインタビュー。同性愛の矯正治療であるコンバージョン・セラピー(転向療法)の存在にインスピレーションを得たという新曲に込められたメッセージや、日本への愛などについて訊いた。(フロントロウ編集部)

およそ1年ぶりの新曲「Cure For Me」をリリースしたオーロラ

 これまで、環境問題や社会問題に一石を投じる楽曲を数多く世に送り出してきたノルウェー出身のアーティストであるオーロラ(25)だが、彼女がおよそ1年ぶりにリリースした新曲「Cure For Me」は、“同性愛の矯正治療”と言われる「コンバージョン・セラピー」の存在にインスピレーションを受けたという。

画像1: およそ1年ぶりの新曲「Cure For Me」をリリースしたオーロラ

 「コンバージョン・セラピー(転向療法)」とは、おもに同性愛者を異性愛者に“矯正”または“転換”させるために行う一連の行為のこと。そもそも同性愛は直すべきことではないのだが、この“治療”とされるものには、カウンセラーと話しながら進めていく会話療法や嫌悪療法、電気ショック療法、同性愛者の指向を薬物や酒の依存症と同じような問題として扱う手法などが用いられ、自分自身に対して憎しみや嫌悪感を抱かせる治療が主であることから、治療の過程で心身を病んでしまい、自殺を図る若者が後を絶たず、問題視されてきた。

 “ありのままの自分”の美しさを音楽を通じて表現し続けてきたオーロラは、自分らしさを強制的に変えようとする人たちに向け、「Cure For Me」で「私は治療薬なんていらない」と繰り返し訴える。

画像2: およそ1年ぶりの新曲「Cure For Me」をリリースしたオーロラ

 今回、フロントロウ編集部では、9月にはスーパーソニックでの来日も決定しているオーロラに単独インタビューを実施。新曲「Cure For Me」に込められた思いや、Stop Asian Hateなどの昨今の人種差別問題などについて訊いたのだが、インタビューの前日に日本語の勉強を再開したばかりだというオーロラに“好きな日本語”についても尋ねてみると、すべての人たちを大切にするオーロラらしい、優しい回答が返ってきた。

オーロラにインタビュー

画像: オーロラにインタビュー

最新シングル「Cure For Me」は、「コンバージョン・セラピー」の存在にインスピレーションを受けているそうですね。

「世の中のことで、私が情熱を傾けていることはたくさんある。私は、自分が大切だと思っていることについての曲を書くのが好き。『Cure For Me』は、世の中が自分らしさを認めてくれていないという事実にインスパイアされて書いた曲。人々は、誰かと違うことや、個性的であること、シャイであること、意見を言うこと、控えめなこと、それから小さすぎたり大きすぎたりということに対して、恥を抱えすぎてしまっていると私は思うの。みんな、自然な本能を恥ずかしく思っているんじゃないかな。人間らしくあることや、感情を持つということをね。それってすごく悲しいことだと思う。だって、そういう美しいことこそが、私たちを私たちらしく、人間らしく、個性的にしてくれているんだから、恥ずかしく思う必要なんてないはず。それから、同性愛者の人たちに対するコンバージョン・セラピーにもインスピレーションを受けた。いまだに多くの国で許容されていて、ここノルウェーでもそう。本当に悲しいことだと思う。愛に戦争を挑むなんて、人類のポテンシャルやエネルギーがもったいないよ。だって、いつだって愛が勝つんだから。どんな愛であっても、愛は紛れもなく愛。だから、『自分らしさを誇りに思うべき』というのは、私にとってすごく大切なメッセージなの。私たちに治療薬なんて必要ない」

「Cure For Me」のように、あなたの楽曲は社会問題がテーマになっていることが多いと思いますが、新型コロナウイルスのパンデミックや、Black Lives Matter、Stop Asian Hateといった昨今の人種差別問題は、創作活動にどのような影響を与えていますか?

「すごく影響を受けているよ。この世界で特権を持つ者として、私は責任を感じているし、あらゆる人たちが責任を感じるべきだと思う。特権を持っている人たちは自分たちの特権を自覚するべきだし、声をあげる必要がある。パンデミックは私や世界の人たちに、世の中をもっとクリアに見る時間をくれたと思う。世界で起きていることに、自然と気が付くようになりやすくなったんじゃないかな。もちろん、素敵なこともたくさんあるけど、世界中の無実な人たちに対する恐ろしいことも起きている。私は白人の1人として、白人たちがこれまでにしてきたことや、今もしていることを償うことに時間を使うべきだと思ってる。終わることのない盲目的なヘイトであり、一部の人たちが他の人たちよりも優れているって考えるなんて、人類が持っている最も醜い考えだと私は思う。そんなの間違ってる。この世界における最も悪質な病気だよ。私たちは日々、それに立ち向かわなければいけない。私はもうウンザリなの。人種差別や、アジアの人たちへのヘイトがこの世に存在しているということにウンザリ。何の意味もないのに。いつの日か、(差別している)人たちは亡くなり、その人たちと一緒に思想も無くなる。だって、ヘイトが勝つなんてありえないから。特に西洋の白人たちは、私たちには他の文化に学ぶべきことがたくさんあるということや、他の文化からの影響がなければ私たちは今の半分にも満たないような存在だったということを、もっと認識しなければいけないと思う。私たちはただ、そのことに感謝をして、日々、こういうヘイトに立ち向かわなければいけない」

自然をテーマにした楽曲も多く歌われてきましたが、新型コロナウイルスによって移動が制限されたことで、自然との向き合い方に影響はありましたか?

「今みたいに都市部にいる時は、自然とは離れた生活を送っているという感じなの。ウイルスに感染している人がたくさんいる時には、出来る限り家の中にいたほうがいいからね。状況が少し落ち着いて、もし私が家から出ても誰も危険に晒さないはずって思えた時には、よく森に出かけていたんだけど、あれは良かったな。パンデミックが起きていたから、外に出ている人が少なかったの。だから1人で通りを歩くのも気軽にできたし、山にハイキングに出かけるのもそう。誰にも会わないから、社交が苦手な私にはすごく良かった。内向的で、控えめな人たちの多くが共感してくれるんじゃないかな。突然持つことになったこの空間については、ありがたいと思ってる。もう既に、また世界が開かれようとしていることが不思議だなとも感じているの。人の多さには圧倒されるけど、最近は自然ともまた繋がりを持てるようになったから、心はすごく安らいでる」

サウンドとしては、「Cure For Me」は今までのオーロラの音楽にはなかったような、アップピートでダンサブルなものになっていると思います。この曲は、来たるニューアルバムのサウンドのヒントになっているのでしょうか?

「『Cure For Me』は、アルバムのサウンドとはかなり違ったものになっているの。ややこしいよね(笑)。ただ、『Cure For Me』は象徴的な曲とも言えて、というのも、アルバムはすごく遊び心に溢れていて、羞恥心が無いという感じのものになっているの。そういう感じのアルバム。一風変わった角度のアプローチだけど、私はすごく気に入っているんだ。世に出して、この野獣をみんなの前に解き放つのが楽しみ。なので、『Cure For Me』はアルバムと共鳴するものだけど、かなり異なってもいる。伝わるかな? だから、次に出す作品はみんなを困惑させちゃうと思う。お楽しみに!」

今年に入ってから、2015年にリリースしたシングル「Runaway」が再ヒットするという出来事もありましたね。この曲が改めてファンの心に響くことになったのはどうしてだと考えていますか?

「Runaway」のリリース5周年を記念して、オーロラは今年3月に同曲のいくつかのリミックスをリリース。併せて、雄大な故郷ノルウェーの景色と自分自身を「Runaway」を使いながら紹介する動画を自身のTikTokアカウントに載せたところ、大きな話題に。「Runaway」に合わせて星空や夕日を背景にポーズを決める“#RunawayAurora”というチャレンジも流行して、同曲は世界59か国のSpotifyトップチャートに入り込んだほか、「トップ50 – グローバル」では16位にランクインした。

「すごく不思議だよね。私は偶然だって思ってる。これまでにも、世の中ではいくつもの偶然が起きてきた。世界中の意見が一致して、『私たちはこれが好き! 今はこれが私たちのお気に入り』っていう状況になるのは、すごく変な気持ち。不思議な感じがする。ただ、私はそこまで、このことには囚われていないの。成功って、やって来ては去って行くものであり、予測できないものだから。自分のもとに訪れる日もあるけど、別の日はそうじゃない。それで良いの。もちろん、すごく光栄だよ。みんなが、私の曲を心に留めてくれたんだから。すごく嬉しい。それから『Runaway』は、ちょっぴり喪失感を感じている人たちにマッチする曲だから、もしかしたら、ツラい時期を過ごしている人たちのもとに届いてくれたのかもしれない。そういう要因もあるかも」

大好きだという日本文化への愛についても伺いたいのですが、今も日本語は習っているのですか?

「今も習ってるよ。しばらく家でアルバムを作っていたから、長い休憩期間を取っていたという感じだったんだけど、また昨日から再開したの! 本当に素敵な言語だと思うし、私はたくさんアニメを観るので、キャラクターたちが話していることをちょっぴり理解できるとすごく嬉しい。私の目標は、日本語がすごく上手になることで、流暢に話したり、書いたりできるようになりたい」

お気に入りの日本語はありますか?

「たくさんあるよ! その中でもお気に入りは、『(日本語で)あなたは綺麗です』か、もしくは『(日本語で)かわいいです』。素敵な言葉だし、シンプルなフレーズだから。それに、私が最初に習った言葉の1つでもあるの。というのも、できるだけ早くファンのみんなに伝えたいって思ったから。みんなすごく綺麗なんだもん。なので、それが私のお気に入りの言葉。日本のウォーリアーたち(※)にこの言葉を伝えるのが大好き。自分もその人たちが好きで、自分のことも好きになってくれる人たちの文化や言葉の中に入り込むのって、大切なことだと思う。リスペクトしているという証にもなるし。だから、私は学ぶことを大切にしているの」

※オーロラのファンの総称。ウォーリアー&ウィアード(Warriors and Weirdos)。

画像: お気に入りの日本語はありますか?

9月にはスーパーソニックで来日することが決定しています。どんなステージになりそうですか?

「エモーショナルで、エネルギッシュで、ちょっとした花火のような感じになると思う。だからといって単に派手なだけじゃなくて、感情にも訴えかけるようなものになるはず。それから、最後に日本で公演をやってからしばらく経つから、少しシャイになってしまうかもしれないし、いつもより不安になってしまうかもしれない。かなり久しぶりになるから。オーディエンスのみんなには、私のショウでは自分らしくあって大丈夫ということと、私のクイーンダム(女王の国)に喜んで迎え入れるということを知ってほしい。みんなには、開放的になって、心を開いてエモーショナルになってもらえたらと思う。感情を表に出して、泣いたり笑ったり、ダンスしたりしてほしい。だって、この世界ではそうやって感情を表に出すことがあまり許されていないから。だからみんなには、せめて私のショーでは、心を開いて、ありのままでいてもらえたらいいな」

最後に、日本のファンへのメッセージをお願いします!

「みんな、こんにちは。みんなのことがすごく恋しいよ。私は人生の内で、少なくとも100回は日本を訪れたいと思ってる。だって、みんなのことが大好きで、みんなのカルチャーやファッション、食べ物、スピリチュアリティ、言葉が大好きだから。何もかもが大好き。世界はファストフードによって崩壊して、巨大産業によって破壊されているけど、日本は対極にあると思ってる。もっと世界が日本から学べたらいいのにって思う。そうすれば、私たちはもっと良くなることができる。敬意を持つことや、特別な何かを作るために時間をかけるということ。世界はそれを忘れているけど、日本はまだ覚えていると私は思っていて、それってすごく素敵。それから、ウォーリアーのみんなには、ありのままの自分を受け入れて、好きになってもらいたい。私はみんなのことが大好きだよ。あなたがどんな見た目でも、どんなセクシャリティでも、どんな宗教でも、肌の色が何色でもね。あなたはそのままで完璧だよ。私たちは、お互いからたくさんのことを学ぶことができる。私たち全員が個性的であることに感謝しているし、それこそが、私たちの最も美しい部分。みんなに会うのが待ち切れないよ。身体に気をつけてね。頑張ってね。もう少しで、世界はまた私たちのものになるはず。早く会おうね。長くなっちゃったけど、全部みんなに伝えたいことなの。みんな大好き。『(日本語で)愛してます』」

オーロラ
「Cure For Me」
配信中

画像: 最後に、日本のファンへのメッセージをお願いします!

(フロントロウ編集部)

This article is a sponsored article by
''.