日本では9月23日に全国公開される主演映画『MINAMATA ―ミナマタ―』がアメリカでは現時点では公開未定となっていることを受け、自身がハリウッドから「ボイコット」されていると感じる心境をジョニー・デップが明かした。(フロントロウ編集部)

名誉毀損裁判で敗訴したジョニー・デップ

 映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズや『アリス・イン・ワンダーランド』シリーズなどで知られる、ハリウッドきっての名俳優であるジョニー・デップ(58)だが、彼は2020年11月にイギリスの大衆紙The Sunを発行するNew Group Newspapers(以下NGN)を名誉毀損で訴えた裁判で敗訴したことをきっかけに、ハリウッドで自分の地位が揺らいでいることを懸念しているという。

画像: ジョニー・デップ(右)と彼の元妻のアンバー・ハード(左)。

ジョニー・デップ(右)と彼の元妻のアンバー・ハード(左)。

 ジョニーは、自身を元妻で俳優のアンバー・ハード(35)に対して暴力を振るった「Wife Beater(妻を虐待する者)」と呼んだThe Sunの発行元であるNGNを相手取り、名誉毀損で訴えたのだが、裁判を担当したアンドルー・ニコル判事は、The Sunがジョニーがアンバーに対して暴力的だったと報じたことは、「実質的に見て事実に反していない」と判断し、この訴えを棄却

 この判決はジョニーのキャリアにも影響を及ぼし、判決を受け、ジョニーはゲラート・グリンデルバルトを演じてきた『ファンタスティック・ビースト』シリーズからの降板を余儀なくされた。

 その後、ジョニーは名誉毀損には当たらないとする判決を不服として申し立てを行なったものの、英控訴裁判所によって上訴が棄却された。

ジョニー・デップがボイコットされているように感じる心境を明かす

 裁判の判決は、日本では9月23日に全国公開される主演映画『MINAMATA ―ミナマタ―』にも影響を与えているよう。

 ジョニーが主人公のユージンを演じる『ミナマタ』は、熊本県水俣市で工業排水に混じってメチル水銀が海に流失し、魚や貝を通じて人の体に取り込まれ、多くの人を苦しめた水俣病の実態を捉えた『写真集 水俣』を基に制作された映画。当初は2021年2月にアメリカでも公開される予定だったのだが、配給元のMGMは裁判の判決を受けて公開を延期し、現時点で公開日は未定となっている。

 今回、ジョニーは英The Timesとのインタビューで映画『MINAMATA ―ミナマタ―』について語り、水俣病を題材にした本作について、「我々は人々の目を見て、この作品が(水俣の人々を)搾取するような映画にはならないと誓った。この映画は敬意のこもった作品になるとね」と、水俣病に苦しんできた人々に敬意を払った作品になっていると強調した上で、「私たちはその約束を守ったと信じているが、後から入ってきた人たちもこの約束を守るべきだと思っている」と語り、アメリカでの公開日が決まっていない現状に苦言を呈している。

 「人々の心に響く映画がある。この映画は水俣に住む人たちに影響を与え、同じような状況を経験している人々にも影響を与えるんだ」と、『MINAMATA ―ミナマタ―』を公開する意義について改めて語った上で、「何をもってして(公開しないと)言うんだい? ハリウッドが私をボイコットするため? この数年間を、不快で厄介な状況にいる1人の俳優のために(無駄にするのか)?」と、自身をボイコットするために本作がアメリカで上映されないかもしれない現状に疑問を投げかけた。

 一方、ジョニーは先日、9月に開催される今年のサン・セバスティアン国際映画祭で功労賞を受賞することが発表されるも、批判の声が寄せられており、スペインの女性映画製作者たちによる団体Spain’s Association of Female Filmmakers and Audiovisual Mediaで代表を務めるクリスティーナ・アンドリューはAP通信との取材で、「この一件はフェスティバルやその統率力についての評判を落とすことになりますし、『良い俳優でさえあれば、虐待者であっても何ら問題ない』という恐ろしいメッセージを世間に伝えることにもなります」と、ジョニーに功労賞を授与することに異議を唱えた。

 ジョニーはアンバー本人を相手取り、名誉毀損で訴えてアンバーに損害賠償を求める訴えをアメリカでも起こしており、開廷が控えている。アメリカでの裁判に先立って、ジョニーは先日、アンバーに支払った和解金7億円の使途めぐり、アンバーが約束通り和解金を寄付に充てたかを開示するよう求めた裁判で勝利を収めている。(フロントロウ編集部)

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