ニルヴァーナの伝説的なアルバム『ネヴァーマインド』のアートワークに自身の裸の写真を使用したのは「性的搾取」だとして、当時赤ちゃんだった男性が30年越しにバンドを訴えた。(フロントロウ編集部)

『ネヴァーマインド』の赤ちゃんがニルヴァーナを訴える

 米ロサンゼルス在住のアーティストであるスペンサー・エルデン氏(30)が、自身が生後4ヶ月だった頃に撮影のモデルとなったニルヴァーナのセカンドアルバム『ネヴァーマインド(Nevermind)』のアートワークは「性的搾取」だとして、ニルヴァーナのメンバーやレコード会社を相手取って訴訟を起こしたことが明らかになった。

 音楽史上の名盤の1枚に数えられる『ネヴァーマインド』は、故カート・コバーン率いるロックバンドであるニルヴァーナが1991年にリリースしたセカンドアルバムで、プールのなかで裸の赤ちゃんが釣り竿につけられた1ドル札を狙っているという写真が使われたアートワークは、世界で最も有名なアートワークの1つとなっている。

 エルデン氏は今回、故カート・コバーンの遺産管理団体や、ニルヴァーナのメンバーであるデイヴ・グロールとクリス・ノヴォゼリック、カートの元妻であるコートニー・ラヴらを相手取って米現地時間8月24日に訴訟を起こし、そのなかで、「被告はスペンサーを描写する児童ポルノを故意に作成、所持、商業的に宣伝し、その引き換えとして価値を受領した」として、全世界で3,000万枚以上のセールスを売り上げた『ネヴァーマインド』の制作に参加した人々を訴えた。

 エルデン氏は訴状のなかで、アルバムのアートワークに使われたことが原因で「人生を通じて収入獲得の可能性を消失」したとも訴えている。具体的な消失の規模については述べられていないものの、今後の裁判で明らかにされるという。

関係者それぞれに15万ドルの支払いを求める

 アルバムのリリース25周年などの機会にはアートワークを再現した写真を撮影するなど、アルバムのアニバーサリーをお祝いしていたエルデン氏だが、訴状によれば、エルデン氏はアルバムのアートワークに自身の裸の写真が起用されたことに起因した症状と向き合うために、数年にわたってセラピーに通ったという。

 エルデン氏の弁護士を務める1人であるマギー・メイビー氏によれば、エルデン氏はバンドやメディア、ファンらに依頼されてアートワークの再現に同意したことはあったものの、結果として「赤ん坊としての自身がさらに搾取」されているように過ぎないと感じたと述べている。「彼はその後の人生で写真を再現していますが、彼は服を着ているほか、大人になっており、(赤ちゃんの時に自分の同意なく撮影した時と)状況は大きく異なっています」。

画像: 2016年、アルバムの25周年を記念してアートワークを再現する写真を撮影したエルデン氏。

2016年、アルバムの25周年を記念してアートワークを再現する写真を撮影したエルデン氏。

 「彼は、彼の性器を見たことがないという人と会ったことがありません」と弁護士のメイビー氏は述べている。「これは、彼にはプライバシーがないということを定期的に思い出させるものです。世間にとって、彼のプライバシーは価値のないものなのです」。

 また、訴状ではアートワークについて、裸のエルデン氏の前にお札がつり下げられたことで、「1ドル札を求めるセックスワーカー」に見えるとも述べられている。

 エルデン氏は当該の写真を撮影したフォトグラファーのカート・ウェデルら15人や関連企業に対し、それぞれに15万ドル(1,650万円)の支払いを求めている。バンド側などは現時点でコメントを発表していない。(フロントロウ編集部)

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