ハル・ベリーが、“感情的”という言葉がネガティブな意味で使われていることについて、鋭く意見した。(フロントロウ編集部)

感情的でなにがダメ?

 映画『キャットウーマン』や『X-MEN』シリーズなどで知られる俳優のハル・ベリーが、女性は感情的であるという言葉が蔑みの意味を持つことについて、米EWのインタビューで鋭い指摘をした。

 「私たち女性が本来持っている要素である、感情的で繊細、といった言葉を人々が(悪い意味で)武器にしようとする時、私は“くたばれ”と言う。なぜだか分かる?感情的でセンシティブでいることは、今の俳優としての私を作ったものだから。それは(俳優として)使える感情を私に与えてくれて、そこから描くこともできる。それは私が持つ最大の資質の1つと言えるかもしれない。
 私はそういう人に言う。『なぜこれらの言葉があなたの居心地を悪くさせるの?』。なぜこれらの言葉がわずらわしく、なぜ感情的でセンシティブでいることが問題であると見えるのか、あなたはあなた自身に問いかける必要があるのでは? それは私への疑問ではなく、あなた自身へのものなんじゃないかな」

画像: 感情的でなにがダメ?

 “感情的”という言葉はネガティブな文脈で使われることが多く、女性に対して使われることが多い。しかしなぜ感情的であることはネガティブなことだとされているのか?

 例えば、日常的に差別を受けている女性が声をあげた時にも、感情的だと言って、その声を塞ごうとする反発は多く起こる。しかし差別に声をあげることはネガティブなことではない。

 ハルのような指摘は他の俳優からもされており、俳優、監督、そしてプロデューサーとして活躍するブリット・マーリングは、過去には多くの女性キャラクターが物語のなかで死んだり、男性の所有物的立場だったりしたが、最近では“強い”女性キャラクターが増えているとした一方で、「強い女性リーダーを演じれば演じるほど、キャラクターの強さにおける幅の狭い特徴を自覚した。それは、身体的強さや、直線的な野望、合理的であること。(これらは)男性的な様式の強さだ」と気がついたと語る。

そして、「もし私の力が、暴力や支配、制圧や植民地化でしか定義されないのであれば、強い女性リーダーにもなりたくない」としたうえで、「共感力、傷つきやすさ、聞く力などを、強さとして想像するのは難しい」と、現代社会に根深く広がる価値観を指摘した

女性のほうが感情的?

 また、女性のほうが感情的ということ自体も事実とは言いがたい。

 実際に、はっきりと自己主張した場合に、男性ならば「強く意見できる」とポジティブに捉えられるのに女性ならば「感情的になっている」とネガティブに捉えられるという事例はたびたび起きている。

 例えば、1人ずつに話す時間が与えられ、“相手の発言に割り込んではいけない”というルールで開催された2020年の副大統領候補討論会において、カマラ・ハリス氏は対立候補のマイク・ペンス氏の言葉を5回遮ったのに対して、ペンス氏は16回遮ったが、保守系メディアはペンス氏を「ジェントルマン」「冷静」と評価し、ハリス氏を「感情的」「偉そう」などと批判した。ちなみに、大統領候補討論会ではトランプ氏は71回、バイデン氏は22回相手の言葉を遮り、こちらは史上最悪の大統領討論会と批判された。

画像: 女性のほうが感情的?

ハル・ベリー、“強い女性”という言葉への思い

 言葉が持つイメージについて鋭い指摘をしたハルは、続けて、“強い女性”という言葉にもネガティブな印象がついていることについて、こんな思いを語った。

画像: ハル・ベリー、“強い女性”という言葉への思い

 「幼い頃から強いと言われてきたと(相手に)話したい。小さな女の子だった時から、『あなたは強い。あなたは強い。あなたは強い』って言われてきた。だから私はいつだってそれをポジティブなことだと捉えてきた。その言葉にネガティブな意味を感じたことは一切ない。とくに、女性として、有色人種の女性として、その強さは、道なきところに道を見つける手助けをしてくれた」

 言葉が持つ力は大きい。社会が作り出したイメージで使ってしまうこともあるが、一旦立ち止まって、その意味について考えることも大切。

(フロントロウ編集部)

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