オーストラリア最大の音楽賞であるARIAアワードが、今年の授賞式から、男女別で分けていた賞を廃止して、一つに統一することを発表した。(フロントロウ編集部)

ARIAアワードが男女別のカテゴリーを廃止することを発表

 オーストラリアレコード産業協会(ARIA)が主催するオーストラリア最大の音楽賞であるARIAアワードは、現地時間11月25日に開催される今年の授賞式を前に、男女別に分けられた部門を今年から廃止することを発表した。

画像: ARIAアワードが男女別のカテゴリーを廃止することを発表

 ARIAアワードはこれまで、最優秀男性アーティスト賞と最優秀女性アーティスト賞の2部門に分け、その年の最優秀アーティストを男性と女性からそれぞれ1人ずつ選出していたが、今年から最優秀アーティスト(Best Artist)賞に統一。これまでそれぞれの部門で5人ずつ選んでいた候補者を、今回最優秀アーティスト賞に統一するのと併せて、枠を10人に拡大するという。

 「ノンバイナリー(※)のアーティストを完全に排除してしまう、ジェンダーによるカテゴリーに基づいてアーティストを分ける時代は過ぎ去ったのです」と、ARIAで代表を務めるアナベル・ハード氏は今回の決定について声明で述べている。「音楽業界はさらなる平等や、包括性、安全、すべての人々をサポートする空間を求めており、オーストラリアレコード産業協会はARIAアワードやあらゆる活動を通じて、それを達成するために取り組んで参ります」。

※女性または男性という2択の考えに当てはまらないジェンダーのこと。男性と女性の両方というジェンダー・アイデンティティを持つ人もいれば、そもそも自分にはジェンダーがないという人もいる。

男女別のカテゴリーを廃止すべきという声はイギリスでも

 音楽賞において、男女別のカテゴリーを廃止するべきという声は、イギリスでもあがっており、ノンバイナリーであることをカミングアウトしているシンガーのサム・スミスは今年3月、「ブリティッシュ男性ソロ・アーティスト賞」「ブリティッシュ女性ソロ・アーティスト賞」など、男女別に分かれている部門があるBRITアワードに対し、「ジェンダーや人種、年齢、能力、セクシャリティ、そして階級に関係なく、全員を祝福しましょう」と呼びかけ、ジェンダーに基づいた部門を廃止するよう提言した。

画像: 男女別のカテゴリーを廃止すべきという声はイギリスでも

 BRITアワードは当時、サムからの提案について「精査しています」と前向きな回答しつつも、「しかしながら、より包括的なものにするための変更は、そうした目的のためでなければなりません。変更によって、意図せずに包括性を損なわせてしまった場合には、多様性や平等とは逆効果になってしまうリスクがあります。正しいものにするためには、変更を加えるよりも前に、広く話し合う必要があるのです」と続けて述べ、慎重に検討していきたいとした。

 BRITアワードが指摘するように、ジェンダーの括りを外した際には、別の課題も生じることにある。例えばジェンダーの括りをなくしても、投票している側がシスジェンダーの白人男性を中心に構成されていれば、受賞結果がシスジェンダーの白人男性に寄ってしまい、結果的にさらなる不平等を生み出してしまう可能性がある。

 今回、ARIAアワードが発表した変更は前向きなものではあるが、ノミネートされる10人のジェンダーや人種がどう分かれているかや、結果として誰にトロフィーが授与されるかなど、慎重に見守る必要がある。(フロントロウ編集部)

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