コロンビアの行政を悩ませていた麻薬王のコカインカバ問題に解決の兆しか?(フロントロウ編集部)

パブロ・エスコバルの負の遺産

 コロンビアで長年問題視されてきたコカインカバ問題が新たな局面を迎えたかもしれない。

 “cocaine hippo(コカインカバ)”という呼び名で知られるカバは、麻薬王パブロ・エスコバルが1980年代にコロンビアへと輸入したカバ。エスコバルのプライベート動物園のために数頭が連れてこられたのだが、エスコバルの死去と彼が指揮していたメデジン・カルテルの衰退後は野生化し、現在では約80頭まで繁殖。

画像: パブロ・エスコバルが建てた、動物園を含むテーマパーク「アシエンダ・ナポレス(Hacienda Napoles)」。

パブロ・エスコバルが建てた、動物園を含むテーマパーク「アシエンダ・ナポレス(Hacienda Napoles)」。

 このカバの群れは現地の生態系を壊す危険性があると問題視されてきて、2021年1月には生物学の保護に関するジャーナルBiological Conservationでも、本来そこに生息しているべきではないカバが現地の生態系を荒らしており、対応が必要だとされた。

GonaCon(ゴナコン)による避妊作戦

 これまで現地ではカバの去勢を進めようとしてきたが、手術による去勢は時間もコストもかかるうえ危険な取り組み。そこで今回新たな解決策として導入されたのが、避妊薬GonaCon(ゴナコン)。

 メスにもオスにも使用できるゴナコン。今回は、専用のペンで捕獲したカバに投与する方法と、湖でダーツライフルを使う2つの方法で投与していくそうで、米動植物衛生検査局から寄贈された55回分のゴナコンを使用して投与を進めており、現在までに24頭への投与を終えたという。

画像: もともとコカインカバの群れに属していたものの、群れから追われて1頭だけ人間に飼育されているヴァネッサ。

もともとコカインカバの群れに属していたものの、群れから追われて1頭だけ人間に飼育されているヴァネッサ。

 ゴナコンは馬やほかの大型動物を対象に行なわれた研究にもとづき、カバに対しては3回の投与が適切だと専門家から提案されているというが、成功するために必要な分量の判断は「複雑です」と、投与計画を指揮しているコーナレ・フォレスト&バイオダイバーシティ・グループは公式声明で明かした。

 一方で、「ゴナコンは決定的な解決策ではありませんが、個体数を安定させるために、さらなる繁殖を防ぐための代替手段となります」と心強い発言をしており、グループのコーディネーター、ダヴィッド・エチェヴェリ・ロペスは、「この手順を実施するのは初めてなので、どれだけ成功するかフォローアップとモニタリングをしていきたい」と語った。

 人間の身勝手のせいで動物や自然が犠牲になっている事例のひとつであるコカインカバ問題。生態系に最も被害の少ない形での解決が願われる一方、人間の娯楽のために負の遺産を残さないことの重要性を再認識させる一件でもある。(フロントロウ編集部)

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