21歳の頃に書いたオリジナルバージョン
2012年にリリースされた『レッド』に収録されている「All Too Well」は、5分23秒のものだが、テイラーによれば、今回新たに収録した10分のものこそが、この曲のオリジナルバージョンだという。
『レッド(テイラーズ・バージョン)』のリリースにあたってアメリカの人気トーク番組『The Tonight Show(原題)』に出演したテイラーは、この曲は21歳だった時に3rdアルバム『スピーク・ナウ』のツアーのリハーサル中に書いたものだとして、「リハーサルへ行ったのだけど、私はすごく怒っていたし、悲しんでいた。全員にそれが分っちゃう位にね。あの日の私は、すごく不機嫌だったと思う」と当時を振り返り、次のように続けた。
「それで、私はギターで同じ4つのコードを繰り返し繰り返し弾いて、バンドもそれに加わってくれたから、アドリブで当時経験していたことや、当時の感情を歌っていったの。曲はどんどん積み上がっていって、10分〜15分くらい私たちは弾き続けたんだ」。
ショートフィルムは『All Too Well』という小説がテーマ
およそ15分に及ぶ『All Too Well: The Short Film』は、テイラーが過去の失恋をテーマにした『All Too Well』という題名の小説を書き上げるまでを追ったもの。
ショートフィルムは、小説のチャプターに沿ってテイラーの過去の恋愛のストーリーを辿っていくとう構成になっていて、『An Upstate Escape(アップステート(・ニューヨーク)への逃避行)』、『The First Crack In The Glass(ガラスに入った最初のヒビ)』、『Are You Real(あなたは本物?)』、『The Breaking Point(限界点)』、『The Reeling(揺れ動き)』、『The Remembering(追憶)』、『Thirteen Years Gone(13年後)』というチャプターに分かれている。
ジェイク・ギレンホールへの言及
『All Too Well: The Short Film』に主演するのは、Netflixオリジナルシリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』で知られる現在19歳のセイディー・シンクと、映画『メイズ・ランナー』シリーズで知られる現在30歳のディラン・オブライエンの2人。
「All Too Well」は、テイラーが2010年の10月から2011年の3月まで約5カ月間交際した俳優ジェイク・ギレンホールとの交際について歌った楽曲とされており、テイラーはジェイクよりも9歳年下。ショートフィルムで恋人同士を演じるセイディーとディランは、テイラーとジェイクを演じていると見られる。
「All Too Well」には、「私は年を重ねるけど、あなたの恋人たちは私の年齢のまま」という相手が年下好きであることを示唆する歌詞や、「もし年齢が近かったら、うまくいったのにってあなたは言う」のような、相手との年齢差を表す歌詞が登場する。
ちなみに、よりハッキリと“ジェイク”と言う名が登場する場面もあり、ショートフィルムの最後には、後ろ姿のみではあるものの、破局から13年後の男性役が登場する。13年後の男性を演じた俳優としては、ジェイク・リオン(Jake Lyon)という俳優の名がクレジットされている。
ショートフィルムに隠されたイースターエッグ
そしてもちろん、ショートフィルムには細かいイースターエッグが他にもたくさん隠されている。
赤いスカーフ
『レッド(テイラーズ・バージョン)』のモチーフの1つとなっている赤いスカーフは、「All Too Well」の歌詞に登場するもの。テイラーは「あなたのお姉さんの家にスカーフを忘れていった/あなたは今も引き出しの中にしまっている」と歌い、ジェイクの姉で俳優のマギー・ギレンホールの自宅にスカーフを忘れていったことを示唆している。
ちなみに、マギー本人はかつてこのスカーフについて質問されたことがあり、2017年に米テレビ番組『Watch What Happens Live(原題)』に出演した際に“テイラー・スウィフトのスカーフが家にあるのか?”と訊かれると、「どうしてみんな私にこのスカーフのことを尋ねてくるのか分からないの」と前置きした上で、次のように回答した。「可能性はあるかもしれないけどね。私は分からない」。
誕生日パーティー
In all too well, everyone else showed up, but he didn't. In lover, nobody shows up, but he did.#AllTooWellTheShortFilm #RedTaylorsVersion pic.twitter.com/v3alRI8qks
— Eirene�is crying to ᴿᴱᴰ !!! IBYTAM MV�❤️ (@taypinklover) November 13, 2021
セイディー演じる主人公はショートフィルムのなかで21歳の誕生日を迎えるのだが、女友達は集まってくれたものの、ディラン演じるボーイフレンドからは祝ってもらえず。このシーンは、テイラーが2019年にリリースした7thアルバム『ラヴァー』のタイトルトラック「Lover」のミュージックビデオに出てくるシーンと似ているのだが、テイラーが現在交際しているジョー・アルウィンについて歌ったとされる「Lover」のミュージックビデオでは、逆にボーイフレンドだけがテイラーの誕生日をお祝い。誕生日を祝ってくれなかった元恋人と、2人きりで誕生日をお祝いしてくれる今の恋人が対比で描かれている。
喧嘩の原因
ショートフィルムには、一度音楽が止み、恋人同士が喧嘩するシーンが収められている。2人の喧嘩の原因は、主人公がボーイフレンドの友達たちと会った時に、ボーイフレンドが主人公の手を振りほどいたこと。この描写は、テイラーが2020年にリリースしたアルバム『エヴァーモア』に収録した「champagne problems」にも登場する。
「champagne problems」では次のように歌われている。「ダンスをしている時に手を離したから/君を立ち尽くさせてしまった」。
次回作へのヒント
ショートフィルムには、第3弾となる再録アルバムがどの作品になるかについてのヒントも。2人は冒頭のシーンでアップステート・ニューヨークに車で遊びに出かけるのだが、この時に乗っていたのが、1989年製のメルセデスベンツ Sクラス。次の再録作が『1989(テイラーズ・バージョン)』であることを示しているのではと見られる。
『All Too Well: The Short Film』はこちら。
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(フロントロウ編集部)