心理学者たちがこれまでの映画史で描かれてきたサイコパスのキャラクターたちを評価。サイコパスを“最も的確に描いている”と絶賛された作品とは? そして、有名なあのサイコパスは意外にも“非現実的”だという。(フロントロウ編集部)

心理学者たちが最もサイコパスを的確に描いた映画ナンバーワンを選出

 これまで映画史のなかで数多く描かれてきたサイコパスのキャラクターたち。オーディエンスの恐怖を煽りながらも、持ち合わせているそのカリスマ性で多くを魅了してきた彼らだが、中でもサイコパスとして最も“的確”に描かれているのはどのキャラクターなのだろうか? 心理学者として実際にサイコパスの人物たちと対面したことのある専門家たちが、サイコパスのキャラクターが登場する映画を専門的な視点から分析した結果をまとめたレポートがある。

 司法精神科医であるサミュエル・レイステッド氏と彼の同僚であるポール・リンコウスキ氏は2014年、医学誌Journal of Forensic Sciencesに『Psychopathy and the Cinema: Fact or Fiction?』と題したレポートを発表。そのなかで、1926年から2010年までに公開された、リアリティのあるサイコパスが登場する126本の映画をリストアップし、最も的確にサイコパスを描いていた作品から、最も非現実的なサイコパスの描かれ方をしている作品までをまとめた。

 その中で、最もサイコパスを的確に描いていたと評価されたのは、ジョエルとイーサンのコーエン兄弟が監督を務めた2007年公開の映画『ノーカントリー』にて、ハビエル・バルデムが演じた殺し屋であるアントン・シガー。

画像: ©️PARAMOUNT CLASSICS

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 レイステッド氏はアントン・シガーについて、論文で「彼は自分の仕事をこなし、何の問題も抱えることなく眠りにつくことができます。実習の中で、私は何人かこのような人たちと出会ったことがあります」と評している。「彼らはこのように、冷酷で、賢く、罪悪感も不安も憂鬱も持たないのです」。

 加えて、最もサイコパスを的確に描いていた作品リストの2位には、1931年に公開されたドイツ映画『M』でピーター・ローレが演じた連続殺人犯のハンス・ベッケルトが、3位には、1986年に公開された『ヘンリー』でマイケル・ルーカーが演じた大量殺人鬼のヘンリー・リー・ルーカスが選出されている。

 ちなみに、“最も的確ではない”と判定された1位は1947年に公開された映画『死の接吻』でリチャード・ウィドマークが演じたトミー・ユードーで、2位には1960年公開に公開されたアルフレッド・ヒッチコック監督による『サイコ』でアンソニー・パーキンスが演じたノーマン・ベイツがランクイン。

 3位には、1991年に公開された『羊たちの沈黙』でアンソニー・ホプキンスが演じたハンニバル・レクターがランクインした。この論文を紹介した米Science Newsはレクター博士について、“落ち着きや洗練さ、マナー、殺しのスキル、「猫のような態度」などを持ち合わせている”と評しているが、レイステッド氏によれば、「このような特徴が、特に組み合わせとなって実際のサイコパスに現れることはない」という。(フロントロウ編集部)

公開後、誤植を修正しました。

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