2022年版アニータ、アリアナ・デボーズ
スティーヴン・スピルバーグ監督による映画『ウエスト・サイド・ストーリー』は、1957年にアメリカで上演された舞台ミュージカルのリメイク。
1961年には映画化されており、ジョージ・チャキリスが演じたベルナルドと、リタ・モレノが演じたアニータは映画史に残るキャラクターとして評価されている。
しかしスピルバーグ版では、レイチェル・ゼグラー演じるマリアと、アリアナ・デボーズ演じるアニータが高い評価を集めている。
アニータというキャラクターは、61年版のリタが第34回アカデミー賞助演女優賞を受賞している。そんなアニータを演じることには大きなプレッシャーがかかるが、見事に演じきったアリアナって誰?
大学を数カ月で中退してNYへ渡った思い切りの良さ!
アメリカのノース・カロライナ州出身のアリアナは、大学進学前に、オーディション番組『アメリカン・ダンスアイドル』に出演。その後、ウェスタンカロライナ大学に進学したが、2カ月半ほどで中退したそう。「自分には合わなかった」と米Mediumのインタビューで振り返ったアリアナだが、当時から演劇の才能は開花していたよう。
2カ月半は在籍したのは、演劇の監督に残ってほしいと言われたからだそうで、ミュージカルの『コーラスライン』でキャシーを演じたという。
大学を中退した彼女は、その1週間後にエージェントからオーディションの話を受け、ニューヨークへ引っ越し。そこで舞台ミュージカル俳優としてのキャリアを築いた。
大人気の舞台ミュージカルに多数出演
アリアナはこれまでに、数多くの舞台ミュージカルに出演してきており、そのなかには、トニー賞で史上最多のノミネートを誇る『ハミルトン』も含まれる。また、2020年公開のライアン・マーフィー監督作品『ザ・プロム』で、保守的な街で同性のエマと恋をするアリッサを演じた姿は記憶に新しい。
舞台ミュージカルで鍛えた実力は、61年版の『ウエスト・ザイド物語』でアニータを演じたリタに、「(アリアナは)素晴らしい。彼女はものすごいダンサー。過去の私よりも全然良い」と言わせるほど。
スピルバーグ監督もアリアナの「ものすごいカリスマ性」に目を引かれたと認めており、『ウエスト・サイド・ストーリー』の制作陣がアリアナを絶対に起用したかったのは明白。キャスティングディレクターであるシンディ・トランは米Varietyのインタビューで、彼女に声をかけるも4度断られていたことを明かし、それでもどうにか説得したという。
お母さんと仲良しなアリアナ
アリアナは出演のチャンスを4度断ったとはいえ、やはりスピルバーグが監督する超名作作品に出演することは、彼女を育てた親にとっては感激すること。アリアナが米LA Timesに明かしたところによると、彼女の母親は教師をしているそう。
アリアナがアニータを演じるということが明らかになった時には、彼女の母は授業中だったにもかかわらず電話をかけてきたそうで、「聞こえたのは、“わーーー!”という音だけでした。母の生徒が後ろで拍手していて、母は『歴史の勉強をしなきゃいけないんだけど、でも愛してる。じゃあね!』って」と当時のほほえましい様子を明かした。
アフロ・ラテン系でクィア
プエルトリコ人の父と白人の母を持ち、アフリカ系とイタリアの血も持つという彼女は、自分をアフロ・ラテン系でクィアだと説明する。
英Gay timesのインタビューで、「自分が誰と一緒にいるのか、誰を愛するのかについて隠すことは何もないです。しかし、黒人でクィアで女性であることは、複雑にもなりえます」と、自身の社会的立場について語る彼女は、だからこそ、彼女は自分のアイデンティティを通してキャラクターを表現することを追求している。
彼女は、スピルバーグ監督や脚本家のトニー・クシュナーたちが揃ったオーディション会場で、こんなことを言い放ったと、米LA Timesのインタビューで明らかにした。
「私はアフロ・ラテン系で、その事実はこのキャラクターのすべてを物語ることができます。彼女のコミュニティでの在り方も。もしそれを深堀りするつもりがないのであれば、私を採用すべきではありません」
61年版でアニータを演じたリタ・モレノとアリアナ。
そしてそれを聞いたトニーの反応は…、「OK。やろう」。
『ウエスト・サイド・ストーリー』でのパフォーマンスによって、2022年のアカデミー賞助演女優賞にノミネートされているアリアナ。
受賞するかどうかも気になるところだが、その結果にかかわらず、彼女の勢いは止まらない。彼女はすでに、ヘンリー・カヴィルやサミュエル・L・ジャクソン、ブライス・ダラス・ハワード、ブライアン・クランストン、サム・ロックウェルらが出演するスパイ映画『Argylle(原題)』への出演や、『I.S.S.』への出演が決まっている。
(フロントロウ編集部)