本日3月11日に公開された『ザ・バットマン』のマット・リーヴス監督にフロントロウがインタビュー。本作で提示された「正義とは何か?」という疑問について、熱弁。(フロントロウ編集部)

『ダークナイト』超えか、『ザ・バットマン』に高い評価

 DCコミックスを原作とした単独映画である『THE BATMAN-ザ・バットマン-』が、世界を興奮の渦に巻き込んでいる。

 クリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』3部作や、トッド・フィリップス監督の『ジョーカー』に続く作品ということで期待が高かったからこそ、期待が裏切られないかと不安を抱くファンも少なくなかった。

 しかしマット・リーヴス監督の才能が全開になった本作は、日本に先駆け公開されたアメリカですでに大ヒット&超高評価。本作は3時間の超大作だが、リーヴス監督の頭の中を1つの映像として落とし込むには、それぐらいの時間がなければ足りなかった。その上映時間であっても観客を飽きさせず、むしろもっとこの物語を見ていたいと思わせる作品は、綿密に計算された濃いものとなっている。

 本作のテーマの1つには、「正義とは何か?」というものがあるだろう。昨今の作品では、悪と正義は紙一重だとする作品は多いが、本作では、「悪は悪。しかし一方で、正義とは何か?」という疑問が提示される。

 リーヴス監督が本作で描きたかった「Justice(正義)」とは何なのか? フロントロウが監督本人に聞いた。

画像: 『ダークナイト』超えか、『ザ・バットマン』に高い評価

マット・リーヴス監督、「正義」への思い

 「まず、質問をありがとうございます。とても思慮深い、クールな質問だと思います」と反応してくれた監督の様子からは、そのテーマについて話したいという監督の情熱が伝わってきた。そして監督は、こう続けた。

 「僕は正義とは何なのか、というその問いかけについての映画にしたかったんだと思います。そこには曖昧さがあるから。

 正義とは何なのか? 僕らはみな正義を望んでいるけれど、どこまでの代価なら払えるのか? 正義の持つ意味とは? 正義とはどう見えるのか?」

 バットマンは正義のヒーロー。しかし、正義とは何なのか? それに一言で答えるのは不可能だろう。リーヴス監督は、バットマンが正体を隠しているということから、そのバックグラウンド、人間としてのブルース・ウェインを探求し、観客に考えてほしいテーマを1つの作品にしたと語ってくれた。

画像: マット・リーヴス監督、「正義」への思い

 「マスク(仮面)についてもかなりリサーチをしたのですが、マスクを着けることで自分を見失うと、ある種の無限な力を感じ、ある種の大胆な行動を取ることができてしまう。自分の正体を知られないことで、罰を受けることなく、ほぼ何でもできるような気がしてしまう。仮面を着けることから力を得ることができる訳です。

 でもその力をどう使い、どのようなメッセージを発するのかがすごく大事だと思うんです。正義のために戦っている、復讐を体現したこの存在を街も最初は恐れています。ブルースも物語の冒頭では自分が発信しているメッセージのインパクトを100%わかっていないんじゃないかと思うんです。

 我々も彼の動機は理解できるし、その動機の源となっているものは絶対的に正しい感じがする。でも、これだけの恐怖を街に注入するというのはどういうことなのか、と問うこともしなければいけない。

 バットマンという概念は、影から現れて犯罪者を威嚇するという、とても怖いもの。でもそれ以外の世界に果たして彼はどんな影響を与えているのか? また、何のためにそこまでするのか?

 もちろん彼もその一線についてはとても慎重で、不殺主義だし、自分の家族の事件もあって、銃に対して不信感がある。でも彼をよく見ると、じつはそこまでの制御はできていないのがわかりますし、劇中、彼は何度もその一線に危険なまでに近づく。

 観客には彼がその境界にいることを意識して欲しかったんです。果たしてブルースはその一線を越えるのか? その一線とはそもそもどこにあるのか? これらの問いは全て観客自身にもじっくり考えて欲しいものです。

 単純明快ではないし、白と黒では片づけられない。そこには曖昧さがあるから。そして、彼には自分自身が作り出す影響にショックを覚え、覚醒して欲しかった。

 どう前に進むのかも大きな挑戦だし、意味のある変化に繋げるために、より良い方法を見つけなければいけない彼を観客は見ることになります。もしかしたらこの時点で変化を生むことができていないのは、腐敗した街が原因なのではなく、彼の現在のやり方がまだ洗練されていないからかもしれない。

 それがこの映画が突きつける挑戦のひとつです。スーパーヒーローとは何なのかという概念や、彼のような自衛団が何をすべきで、何ができて、何を実際にするのか、という問いかけをしているのです」

 リーヴス監督からの細かな問いかけについて考えることは、様々な視点から問題の多い現代社会を見つめることにもなるだろう。

 『THE BATMAN-ザ・バットマン-』を見終わったあとに、あなたは何を思うのか?

(フロントロウ編集部)

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