環境問題に取り組む新たな考え方として注目を集める「リジェネレーション」って知っている? 「リジェネレーション」について学ぶために話を聞いたのは、「リジェネレーション」の考え方を何年も前から大切にしているナチュラルコスメブランドのラッシュ(LUSH)。そのものづくりの極意や裏側を取材しました!(フロントロウ編集部)

ラッシュが大切にする「リジェネレーション」とは?

 地球の限りある美しさや資源を守るため、美容業界でも、持続可能な開発や原料調達によってつくられるサステナブルな製品が増加。そんななか国内外で徐々に注目され始めているのが、「リジェネレーション」という新たな考え方。

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 「リジェネレーション」とは“再生”を意味する言葉で、地球環境の「再生」や「復元」を目標とする考え方。世界中で共通する明確な定義があるわけではないものの、害を減らして現状を維持する「持続」を超えて、さらに「再生」までの実現を目指すという考えから、 “サステナブルの先を行く考え方”と言われている。

 そんな「リジェネレーション」の考えに基づく“リジェネラティブな”ものづくりを先導しているのが、新鮮な野菜や果物を使ったフレッシュなナチュラルコスメを展開するブランドであるラッシュ(LUSH)

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 カラフルなバスボムやポップな形のソープなどハッピーな気持ちにさせてくれる製品を生み出し続けているラッシュは、じつは5年程前からリジェネラティブなものづくりを掲げてきたパイオニア的企業のひとつ。そんなラッシュのリジェネラティブなものづくりを学ぶべく、フロントロウ編集部が取材。

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 リジェネラティブなものづくりとは何なのか、そのプロジェクトについて話を聞き、日本中のラッシュ製品をつくる製造拠点「キッチン」も特別に見せてもらった。

ラッシュのリジェネラティブな2つのプロジェクト

 数年前からラッシュは、「リジェネレーション」の考えに基づいた複数のプロジェクトを始動。今回はその中から、「渡り鳥プロジェクト」「イヌワシプロジェクト」を取材させてもらった。

①里山を象徴する渡り鳥サシバを追え!「渡り鳥プロジェクト」

画像1: ①里山を象徴する渡り鳥サシバを追え!「渡り鳥プロジェクト」

 渡り鳥プロジェクトは、豊かな里山のシンボルである渡り鳥「サシバ」を守り、日本の里山の再生を目指すプロジェクト。古くから日本には、人間と自然が共生できる里山の環境がたくさんあったことで、食料や木材といった資源の供給をはじめ、生物多様性の保全、美しい景観などが維持されていた。しかし、この文化が徐々に衰退し、多くの里山が藪化。それにつれて生物の多様性が失われ、渡り鳥の休息地も減少し、絶滅の危機に瀕する生物が増加することに。

画像2: ①里山を象徴する渡り鳥サシバを追え!「渡り鳥プロジェクト」

 そんな失われた里山文化を再生するべく、日本各地で里山を再生するための取り組みが進められており、ラッシュはサシバの渡りルート上にある里山で出会った人々と連携し、里山の恵みを商品の原材料として活用。このプロジェクトでは新たな梱包資材も生まれていて、サシバの移動ルート上にある田んぼで米を収穫した後のワラを有効活用した「サシバボックス」は、ラッピング用のギフトボックスとして使われている

画像3: ①里山を象徴する渡り鳥サシバを追え!「渡り鳥プロジェクト」

 また、藪化した里山を田んぼに再生する取り組みでは、実際にラッシュの社員も現地で参加し、そこで収穫されたお米も製品の原材料として使用されている。

②絶滅危惧種の鷲イヌワシを守る「イヌワシプロジェクト」

画像1: ②絶滅危惧種の鷲イヌワシを守る「イヌワシプロジェクト」

 ラッシュが群馬県のみなかみ町で進めているイヌワシプロジェクトは、繁殖成功率が著しく低下して国内で絶滅危惧種に指定されている鷲「イヌワシ」をはじめとした多様な動植物を未来に残すために、生物多様性の復元や適切な森林利用、地域の活性化などを目指す「赤谷プロジェクト」と連携するもの。このプロジェクトでは、みなかみ町にある国有林「赤谷の森」の人工林を生態系豊かな森にするために、森林の適切な手入れや管理をしながら、イヌワシの生存に欠かせない狩り場を再生するために皆伐し、その中で生まれた資源を製品の原材料や包装紙として使用している。

画像: イヌワシペーパーを使ったギフト 「エブリー クラウド」

イヌワシペーパーを使ったギフト
「エブリー クラウド」

 狩り場を再生するために人工林を皆伐することで出る間伐材は、生産量日本一だったこともあるみなかみ町産の「カスタネット」の製造に活用されており、ラッシュはカスタネット製造の際に出る木くずを「カスタネットペーパー」として梱包紙に使用。狩り場を再生するために最終的に残った木くずまで無駄なく利用するという、徹底的に環境に配慮した取り組みを行なっている。

 そのほかにも間伐材を活かした「イヌワシペーパー」も梱包紙として活用。この包装紙を使ったギフトを購入することで、イヌワシ保全を応援できる。

画像: イヌワシペーパーを使ったギフト 「ブルーミング ビューティフル」

イヌワシペーパーを使ったギフト
「ブルーミング ビューティフル」

 さらには、赤谷の山々の栄養を多く含んだ天然湧水を化粧水「オーシャンヴェールウォーター」の原材料として使用したり、みなかみ町産の豆腐をスキンケア製品の材料として採用したりと、さまざまな形でこの地域の資源を活用している。

画像2: ②絶滅危惧種の鷲イヌワシを守る「イヌワシプロジェクト」
画像: 「オーシャンヴェールウォーター」

「オーシャンヴェールウォーター」

原料調達を通じて地域の再生や活性化までを目指す

 2つのリジェネラティブなプロジェクトに共通しているのが、現状維持ではなく状況を改善するための働きかけであること。渡り鳥プロジェクトでは衰退した里山を再生することで渡り鳥の休息地も創り出し、イヌワシプロジェクトではイヌワシが暮らしやすい環境を再生することで地域も活性化させるという点が、持続を目標とするサステナブルとの大きな違い。

画像3: ②絶滅危惧種の鷲イヌワシを守る「イヌワシプロジェクト」

 このようなリジェネラティブなプロジェクトを通じたラッシュの原料調達は、「クリエイティブ・バイヤー」と呼ばれるラッシュの購買担当チームが行なっている。元来、原材料の調達を通して環境破壊をしないという方針を持っていたが、持続的に購買し続けられるものだとしても、従来の環境にとって本質的に持続可能なのかという点で限界が見え始めていたことと、この方法を続けても次世代に残したい環境や社会はつくれないかもしれないという考えから、リジェネラティブな考え方で購買をするようになったという。
※日本を含む世界6カ国7拠点にある製造拠点には「クリエイティブ・バイヤー」と呼ばれる購買担当チームが存在する

画像4: ②絶滅危惧種の鷲イヌワシを守る「イヌワシプロジェクト」

 そのため、必要な原料があるから調達できるサブプライヤーを探すのではなく、再生を必要とする環境や地域を探し、その再生の過程や出会いのなかで生まれた資源や素材をものづくりに活用。そして環境だけでなくその地域のコミュニティの活性化にもつなげるというのが、ラッシュのリジェネラティブなものづくりの基本となっているよう。

 そんな取り組みの中で生まれた原材料が、実際にラッシュの製品の製造に使われている。そこで、どのようにその材料が使われているのか、特別に見せてもらうことに。

ラッシュの製造拠点「キッチン」を見学

 今回お邪魔したのは、神奈川県にあるラッシュの製造拠点。「キッチン」と呼ばれるこの製造拠点では、「シェフ」と呼ばれる製品の作り手が新鮮な野菜や果物を使ってハンドメイドで製品を製造。日本中で販売されるラッシュの製品のすべてがキッチンでつくられていて、近隣のアジア諸国への出荷も行なわれている。

画像1: ラッシュの製造拠点「キッチン」を見学

 そんなキッチンで見せてもらったのが、SNSでも人気を集める「ドント ルック アット ミー」というフェイスマスクを製造する全工程。古い角質を優しく落としながら、柔らかく輝きのある肌に近づけるこの製品には、「渡り鳥プロジェクト」と「イヌワシプロジェクト」の両方にかかわる原材料が使われている。

画像: 「ドント ルック アット ミー」

「ドント ルック アット ミー」

 「ドント ルック アット ミー」は、超鮮やかなブルーのカラーが目を引くフェイスマスクなのだけれど、製造の最初のステップで登場したのはなんと豆腐。イヌワシプロジェクトのお話の中で登場した、みなかみ町産の豆腐を使ってフェイスマスクをつくっていた。
※産地については時期や商品により変わる場合があります。

画像2: ラッシュの製造拠点「キッチン」を見学

 リジェネラティブなストーリーの詰まったみなかみ町産の豆腐を丁寧に水切りし、ライスシロップやライスミルクなどの材料を投入し、その間に繰り返しブレンド。まるで料理やスイーツを丁寧に手づくりしているかのようなステップを積み重ねたのち、食べても安全な食用色素が投入されたところで一気に青色に。

画像3: ラッシュの製造拠点「キッチン」を見学

 そこからさらにシェフたちが手絞りで絞ったレモン果汁や、時間をかけてじっくり溶かしたムルムルバター、ネロリなどのエッセンシャルオイルなどを追加して、その間にもキレイに混ざり合うようにブレンド。ここで出番となるのが、「渡り鳥プロジェクト」で収穫されたお米。

 「ドント ルック アット ミー」では、「渡り鳥プロジェクト」のお米がスクラブとして活用されている。お米をかなり細かく粉状にした米粉などを投入し、じっくり混ぜ合わせたら、フェイスマスク「ドント ルック アット ミー」の完成。

画像4: ラッシュの製造拠点「キッチン」を見学

 リジェネラティブな取り組みの中で調達された豆腐やお米が、色鮮やかなフェイスマスクに生まれ変わる様子を見届けることができた。ちなみにキッチンでつくられた「ドント ルック アット ミー」はその後すぐに人の手で丁寧に梱包され、その日のうちに店舗への出荷作業に入るのだという。

画像5: ラッシュの製造拠点「キッチン」を見学

 ラッシュの現場を通じて見ることができた「リジェネラティブ」なものづくり。自然環境の問題に対して真剣に取り組んでいる、ものづくりに携わる人々や地域のコミュニティが連携して、それぞれの役割を果たすことで「再生」を生み出すものづくりが確かに実現されていた。しかもラッシュでは、困難な地球環境の再生に持ち前のクリエイティブな発想で挑み、ユーザーを楽しませる魅力的な製品を生み出している。

 そして、それが多くの消費者の手に渡り、再生への新しい循環が生まれていた。一度失われた美しい環境を再生することは決して簡単ではないけれど、ラッシュのものづくりの極意に触れることで、発想の転換が未来を大きく変えていくのだと痛感した。

 「リジェネレーション」の考え方について認知は十分に広まっていないけれど、今後これが、人間の行動によって深刻化した環境問題を改善に導く新たな指針になっていくに違いない。

ラッシュの環境のための取り組みはまだまだたくさん

 1995年の創業時からエシカル(倫理的)であることを信念に掲げるラッシュは、ブランド設立当初から動物実験を行なわず、それを社会へのメッセージとしても発信。さらに現在製品の100%がベジタリアン対応であり、約9割がヴィーガン対応。そんなラッシュでは、環境に配慮した取り組みがまだまだたくさんある。

画像1: ラッシュの環境のための取り組みはまだまだたくさん

 なかでも印象的なのが、ネイキッド商品。ラッシュには、ごみになってしまうプラスチックのパッケージをなくして裸の状態で販売するネイキッド商品が多数。過剰梱包を減らした美容製品は近年徐々に増えているが、ラッシュはブランド設立当初からこの取り組みを続けている元祖。ちなみにラッシュでは商品の開発段階から、できるだけ包装パッケージを必要としない商品を作り出すこと、そしてパッケージを最小限に抑えることに重点を置いているという。

画像2: ラッシュの環境のための取り組みはまだまだたくさん
画像: ネイキッド商品:マッサージバー「マジック・マッスル」

ネイキッド商品:マッサージバー「マジック・マッスル」

 しかも石鹸などの製品には、欲しい分量だけを購入できる量り売り形式のものも多いため、使いきれず捨ててしまうなどの無駄を防げるのも嬉しい。

 そしてもうひとつ注目したいのが、循環型容器返却プログラム「BRING IT BACK(ブリング・イット・バック)」。液体状の製品などネイキッドで販売できない製品の中には100%再生プラスチック容器を使用した製品もあるが、ラッシュではその容器を回収。ユーザーから返却してもらった容器をリサイクルし、再び商品の容器に生まれ変わらせるという循環型のリサイクルプログラムも行なっている。

画像: 過去のリリースからダウンロードさせていただきました。

過去のリリースからダウンロードさせていただきました。

 ちなみに「BRING IT BACK」では、ユーザーに嬉しいメリットも。使い終わった容器を持っていくと、対象容器1つにつき30円を商品会計時に利用可能できるほか、5つの対象容器を持って行った場合には、フレッシュフェイスマスク1個と交換してもらうこともできる。

 今回取材させていただいたラッシュでは、紹介したもの以外にもさまざまな取り組みやプロジェクトを行なっているので、ラッシュの取り組みを知ることで、自分が「消費」するものについて今一度考えを巡らせてみては。

(フロントロウ編集部)

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