『Everything Everywhere All At Once』がアメリカで非常に高い評価を得ている。見る前は“要素が多すぎ!”と感じられるが、そこにはクリエイターたちの才能が光る。(フロントロウ編集部)

人気が続く『Everything Everywhere All At Once』

 ダニエル・クワンとダニエル・シャイナートからなるクリエイティブコンビのダニエルズによる映画『Everything Everywhere All At Once(原題)』が非常に高い評価を受けている。

 アメリカでは3月25日に公開された本作は、ダニエルズによるオリジナル映画であり、何かの映画ユニバースに所属する作品ではない。しかし6週末を経た5月2日の時点でまだ劇場公開が続いており、全米興行収入は35.2万ドル(約46億円)を超えた。さらに、4月最終週の週末には興行収入が2%増加しており、米Forbesによるとこれは非常に稀なこと。

 本作の主人公は、高齢女性のエヴリン。コインランドリーのオーナーだが、国税庁に監査を受けている真っ只中。そんな時に、彼女は自分にパラレルワールドに行ける能力があることを知り、別の世界での自分も助けるために闘うことになる…。

ダニエルズがまとめあげたストーリー

 米Colliderは本作について、すでに今年の映画トップ10リストに入ったとし、今年公開の最もお気に入りの映画になるかもしれないとまで評価。本作は、アジア系アメリカ人の女性が主人公であり、その家族がメインキャラクター。ジャンルはSFであり、コメディでもあり、アドベンチャーでもあり、1作品の中に様々な要素が含まれている。

 一見すると情報過多なのだが、Colliderが「でも話の筋が通っている」というように、多くの要素を1つの作品としてまとめあげたダニエルズの手腕は、本作において非常に高く評価されていることのうちの1つ。

 ダニエルズは、ダニエル・ラドクリフが“死体”を演じたことでも有名な『スイス・アーミー・マン』を手掛けたことでも知られる。そんな2人は、A24の公式インタビュー動画のなかで本作について、「すべての感情、すべてのジャンルを網羅しています。しかしそこにはまとまりがあって、なぜなら映画のコアの部分は家族の話だからです。物事が大変な時に母親が家族とふたたび絆を結ぼうと努力する」と説明。さらに、マルチバースというSF要素がヒューマンドラマとして完成したのには、移民というテーマが上手く働いたと明かした。

 「移民の話を描こうというのは、私たちが意図したことではありませんでした。マルチバースというのは、“もしこうだったら”を問いかけ、後悔に思いを馳せることです。そして多くの移民の話は、リスクに挑み、“もしこうだったら”を問いかけるものでしょう」

ミシェル・ヨーとジェイミー・リー・カーティスの自然体

 また、本作はキャスティングも良い。主演のミシェル・ヨーはもちろんのこと、彼女が演じるエヴリンの夫を演じるのは、『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』や『グーニーズ』の子役として有名な、何歳になっても可愛い雰囲気が漂うジョナサン・キー・クァン。そして、国税庁の監査官として『ハロウィン』シリーズのジェイミー・リー・カーティスが登場する。

 本作は母親と娘の物語だが、一方で、ミシェルとジェイミーという2人の存在は見逃しがたい。ミシェルとジェイミーは今年でともに60代。60代の女性2人が物語を展開していく作品を待ち望んでいた人は多い。また、若い世代で様々な人種のキャラクターが関わりあうことは目にするが、その年代の人物たちが人種を超えて関わりあっていくのを見るのは、新鮮で良いものだったりするのだ。

 ダニエルズはキャラクターを考えるなかで、「私たちの両親に着想を得たキャラクターを描くのはとても創造的なことで、とても楽しかったです。自分たちを基にした悪役を描くのもね(笑)」と話している。

(フロントロウ編集部)

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