サステナブルなライフスタイルを目指すエディターが、国内外で注目のサステナブルなキーワードや、気になる疑問にフォーカスする連載企画「サステナ調査隊」。第1回のテーマは、海外のZ世代の間で深刻化しているという「エコ不安症」について。(フロントロウ編集部)

海外で注目を集める「エコ不安症(Eco-anxiety)」

 ここ最近、海外のメディアなどで頻繁に見かけて気になっていたのが、「Eco-anxiety(エコ・アングザイエティ)」というキーワード。日本語では「エコ不安症」や「気候不安症」を意味するこの言葉は、地球環境が危機的な状況に陥っていることに対して、強い恐怖心を抱くこと

画像: 海外で注目を集める「エコ不安症(Eco-anxiety)」

 この言葉の意味は知っていたけれど、でも実際に「エコ不安症」になるとどんなことが起こるのだろうか。どんな人が苦しんでいるのだろう。この「エコ不安症」について調べてみました。

「エコ不安症」とはどんなもの?

 まず「エコ不安症」は、正式な医学用語ではないものの、米国心理学会(APA)には症状が認められているもの。

 その症状についてメンタルヘルスへの環境の影響を研究するオーストラリアのニューイングランド大学の心理学教授であるナヴジョット・ビュラー博士は、「これまでの研究によって、地球環境の悪化が原因で全般性不安障害(GAD)や心的外傷後ストレス障害(PTSD)と同じような症状を引き起こす可能性があることが分かってきています」と米Very well healthで説明している。

画像: 「エコ不安症」とはどんなもの?

 具体的には、地球環境の悪化についての過度な恐怖心によって、不安感や無力感、喪失感、絶望感、罪悪感、困惑感、怒りを強く感じる状態が続き、さらには不眠や集中力の低下、食欲の変化などが起こるのだという。

Z世代の間でとくに増えている

 海外で取り沙汰されている「エコ不安症」の情報の中でとくに興味深かったのが、Z世代でとくに深刻化していること

画像1: Z世代の間でとくに増えている

 英バース大などが世界10カ国の16~25歳の計1万人を対象に行なった調査では、75%が「(環境問題の影響で)未来が怖いと感じる」と回答。さらに「気候変動問題への不安が日常生活に否定的な影響を及ぼしている」と回答した人も、回答者の半数近くにあたる45%にのぼった。

 その原因のひとつとされているのが、Z世代のほうが異常気象や温暖化の影響を身近に感じやすいから。若者の多くは幼い頃から環境変化の影響を受けていて、気温の上昇や山火事、洪水、ハリケーン、空気汚染などによって生活や行動が制限された経験がある。昔は当たり前にできて、Z世代にはできないこともある。しかも幼い頃からSNSを目にする機会があるため情報にリーチしやすく、地球の未来に関する予想が、このままだと現実のものになってしまうという不安が募りやすいのだという。

 実際にアメリカのZ世代1,000人を対象にした調査では、親世代との意識のギャップを実感している人が多いことが分かっていて、回答者の3分の2が環境問題を深刻に捉えていると回答した一方で、親世代が深刻に捉えていると思うと回答したのは3分の1

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 環境問題をより深刻に捉えている若い世代のほうが、地球の最悪の未来に現実味を感じて恐怖心を感じる人が多く、「エコ不安症」になりやすい傾向にあるよう。

「エコ不安症」になったらどうすればいい?

 将来を担うZ世代が、環境のことを真剣に考えているのはいいことだけれど、「エコ不安症」になってしまうと、日常生活に支障をきたしてしまう。もしそうなってしまったらどうすればいいのか、「エコ不安症」に悩む人々に向けてオンラインの瞑想プログラムを提供するケイティ・ロミタ氏は、5つの行動を取るようアドバイスしている。

・小さな行動も決して無意味ではないと考える
・必要に応じて、セラピストや周りの人に助けを求めること
・人生で好きなこと、やりたいことにも目を向ける
・美しい自然の中で時間を過ごす
・環境を保護したい人が集まるコミュニティとつながる

 若者のメンタルヘルスで深刻な問題となっている「エコ不安症」。地球環境がすでに悪化しているなかで生まれた若い世代の人たちが、環境問題について真剣に考えているという事実は喜ばしいことである反面、ほかの世代にとって反省しなければならない部分でもある。

 地球の恵みによって生かされてきた私たちが、限りある地球の美しさを残す努力を若い世代やこれから生まれてくる子供たちだけに背負わせるのは、どう考えても無責任なこと。誰もが自分ごととして行動していく社会の実現のために、できる限りのことをしていきたい。(フロントロウ編集部)

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