『トップガン マーヴェリック』で敵国の名前が明確にされなかったのには、理由があった。(フロントロウ編集部)

『トップガン マーヴェリック』の「敵」は誰?

 1986年に公開された『トップガン』の続編『トップガン マーヴェリック』。アメリカ海軍が舞台で、戦闘機を乗りこなし、任務につくメンバーの姿が描かれる。

 前作では、訓練生だったマーヴェリックやその相棒であるグース、そしてライバルのアイスマンなどの日々が描かれ、青春映画として人気を博した。そして本作では指導官としてトップガンに帰ってきたマーヴェリックや次世代パイロットたちの交流、そして死んだグースの息子であるルースターがマーヴェリックに反発しながらも、最後には父子のような絆を築く展開など、青春映画というジャンルから、世代を超えた絆の物語へと変化を遂げた。

 だからこそ、制作陣にはこだわったポイントがあったよう。それは、マーヴェリックたちの“敵”を明確にしないこと。

 『トップガン マーヴェリック』はアメリカ海軍の物語であるため、敵としてどこかの国の名前を明確に出すことも可能ではある。歴史に基づいた戦争映画では、第二次世界大戦やベトナム戦争などが題材になることは多く、状況に応じてそれぞれの国名も出される。また、今はない国の名前を敵として設定するフィクションの物語もあるだろう。

 しかし本作では、実際にある国の名前も、ない国の名前も使われることなく、敵が特定されない。そのことについてジョセフ・コシンスキー監督は、米Vultureのインタビューでこう語った。

 「敵の顔や名前を出さず、特定しないことは明確に意図して行なったことです。なぜなら、それは映画の目的ではないからです。これは競争の映画なので。これは友情について、犠牲についての映画で、1作目の映画が描いたものとすべて一緒なんですよ。なので、それ(敵を特定しないこと)はとても意図的なことでした。もちろん、私たちはこの映画を2018年に制作したので、それから世界は変わりました。しかし私たちは、映画『トップガン』とは何なのかということにフォーカスしました。これは戦争映画というよりもスポーツ映画なのです」

 『トップガン』の2作品は、海軍が舞台であっても戦争映画ではない。監督の指摘はファンなら納得するものであり、そしてそれこそが『トップガン』が人気を博す理由でもあるだろう。

 『トップガン マーヴェリック』が制作されたのは、コロナ禍の前の2018年であり、2020年にロシアがウクライナ侵攻を開始した後に制作されていれば、もしかしたら何かが変わっていた可能性はあるのではないかと考えるファンもいるかもしれないが、86年の『トップガン』でも敵国を明確にはしておらず、オリジナルの姿勢に深い敬意を払って制作された続編でも敵が設定されることはなかったと思われる。

(フロントロウ編集部)

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