『ゲーム・オブ・スローンズ』や『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』の原作者であるジョージ・R・R・マーティンが、作品における女性差別についてコメントした。(フロントロウ編集部)

『GoT』の女性差別描写、原作者の意見

 2011年から2019年にかけて放送され、世界的大ヒットを記録したドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』は群像劇であり、多くの女性キャラクターも登場する。女王から戦士、野人、そして様々な性格の女性が描かれたことは評価される一方で、ストーリーのなかでの描かれ方が女性差別的だとして問題にもなってきた。

画像1: 『GoT』の女性差別描写、原作者の意見

 『ゲーム・オブ・スローンズ』の前日譚で、8月22日にU-NEXTで配信開始となるドラマ『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』はその点が改善されるかにも期待がかかっているが、放送を前に、原作者のジョージ・R・R・マーティンが議論に意見。コミコンのパネルトークで、歴史を基にした物語の創作について語った。

 「『ゲーム・オブ・スローンズ』は、多くの人が考察してきたように、非常に大まかに薔薇戦争を基にしています。(『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』は)それより前の無政府時代と呼ばれる頃を基にしています。イングランド王のヘンリー1世、その彼の唯一の正統な息子はイギリス海峡を渡ろうとして溺死した。そして彼には唯一の正統な子ども、娘であるマティルダが残され、その子を跡継ぎとし、領主たちは彼女に忠誠を誓った。

 数年後に王が死んだら、領主たちは『あぁ。あの誓いは意味をなさない。なぜなら彼女のいとこのスティーブンがいる』と言い、スティーブンはすぐに海峡を渡って国庫を盗み、王位を継承して王となった。そして時代は無政府時代となったのです。

 モードことマティルダはスティーブンと10から20年ほど戦い、それは酷く、血なまぐさいものだった。(物語の舞台である)ウェスタロスは、現実の歴史よりも反女性だったりミソジニーだったりするとは思いません。そして人々は変化を恐れる」

 実際の歴史を基にした作品では、例えば軍の上層部などに女性キャラクターを登場させることは難しいといった問題はあり、ジョージの指摘も理解できる部分は多くある。一方でドラマにはドラゴンといった架空の生き物も登場する。史実を忠実に映像化した作品ならジョージの指摘は通るが、ファンタジーという現実には起こり得ないことも起こる物語において、多様性が低かったことを歴史に押しつけるのは少々苦しい主張に聞こえる。

 また、本とドラマでは注意すべき点が異なることもある。原作はジョージ1人による創作物だが、ドラマは脚本チームや監督など、多くのスタッフがチームで制作するもの。しかし本作の監督19名のうち女性監督は1人、脚本家のうち女性は2人だけだった。さらにドラマでは、全シーズンを通して女性キャラクターの“発言率”が男性キャラクターに対して非常に少なく、最も少なかった時が最終章であるシーズン8の22%。最も多くてもシーズン7の31%という結果になっていた。

画像2: 『GoT』の女性差別描写、原作者の意見

 その他にも、本作では性暴力シーンや、女性がヌードになるシーンが多々あった。物語の展開のなかで女性が性暴力に遭ったからといって、その暴力のシーンを描く必要があるかというのは近年よく議論にのぼるテーマ。そして、不必要なヌードシーンは批判されても仕方ないと言えるうえ、デナーリス・ターガリエンを演じたエミリア・クラークもたびたび裸になりたくなかったと発言している。これは、ストーリーとは別の労働環境の問題にも繋がるもので、撮影現場では熱中症対策すら男性俳優のほうが手厚くされていたことが取り沙汰されたこともある。

 ジョージの指摘は納得できるものも含まれる一方で、改善できた点は多いことも事実だろう。

(フロントロウ編集部)

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