『エイリアン』の制作秘話について、シガニー・ウィーバーが明かした。(フロントロウ編集部)

『エイリアン』で女性キャラクターが生まれるまで

 1979年に公開された映画『エイリアン』は、その後一大フランチャイズになるほどの大ヒットを記録。とくにシガニー・ウィーバーが演じたリプリーは、それまでになかった女性像となり、多くの女性たちに支持されている。

 しかし意外にも、『エイリアン』には女性は登場しない予定だったという。シガニーがポッドキャスト番組『WTF』で話したところによると、プロデューサーのうち2人が、女性乗組員であるリプリーとランバートを登場させることに決定。柔軟な考え方を持つスタッフがおり、それを受け入れるチームだったことは、リプリーの描かれ方にも影響した。

 「制作陣は、“これは(童謡の)「10人のインディアン」なんだ。私たちは女性の生き残りを描く。最後に残るのが女性だなんて、誰も夢にも思わない。勇敢なジョン・ハートのキャラクターだと思うだろう”という感じでした。だからあの結末は物語のためにしたことなんですよ。制作陣は強い女性が好きではありましたけども」

画像: ©20TH CENTURY FOX / Album/Newscom

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 女性への偏見を逆手に取ることで、『エイリアン』という物語は誕生していたのだ。女性が生き残ることを“面白い”と考えた制作陣には、価値観を発展させていくクリエイターとしての柔軟な思考が見える。また、本作の監督はリドリー・スコットであり、彼はその後フェミニズム映画の金字塔的作品『テルマ&ルイーズ』を1991年に、『最後の決闘裁判』を2021年に発表。女性の描かれ方を見直し、自身の考えも発展させていける彼の能力は、この時からあったのだろう。

 とはいえ、最初の台本では問題もあったよう。じつは、リプリーにはラブシーンがあったという。女性キャラクターをいちいち何でもかんでも恋愛要素にくっつける必要はなく、『エイリアン』のストーリーラインでは必要ないだろう。

 それはシガニーも感じたそうで、「この生き物が暴れまわっているなかで、イチャイチャし始めると思います?」と言ったのだそう。そしてこれまた興味深いのが、彼女がこれを言ったのは役に合格する前のこと。その段階でありながら女性俳優の意見に耳を傾けた制作陣の姿勢は、現代であっても稀だと言えるのでは?

 そのような過程を経て出来上がった『エイリアン』は、多くの女性の可能性を広げた。俳優であり、多くの作品の製作にも携わってきたフェミニストのシャーリーズ・セロンは、過去に、「20代前半で、『エイリアン』のシガニー・ウィーバーを見ました。彼女が演じたキャラクターのリプリーは、私の心の深くにいつもいてくれた。アクション映画へのインスピレーションだけというわけではなく、普遍的に。リプリーを見てから、世界が広がって、無限のように感じることができた」との思いを明かしている

 シガニーは、リプリーが大活躍する本作について「これはevery-manの物語。そして私にとっては、everyoneの物語」と語った。

 ※英語で“every-man”には一般的な人、よくいる人という意味があるが、ここでは、”man(男性) と”ジェンダーが偏った表現を訂正するためにジェンダーフリーな everyoneという言葉に変えて言ったと思われる。

(フロントロウ編集部)

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