近年、セクシャルウェルネス(性の健康)もQOLの向上に大切な要素として捉え直す動きが活発化するなか、海外で寝たきりや身体が不自由な人でも楽しめる新発想の「セックストイ」が登場。身体障害者の性支援につながるとして話題を集めている。(フロントロウ編集部)

寝たきりや障害者のための「セックストイ」が登場

 セクシャルウェルネス(性の健康)とは、一般的に、身体的な面だけではなく、性に関して精神的、社会的にも健康である状態のこと。どのような性的指向および性自認であってもセクシャルウェルネスは大切だけれど、今とりわけ話題になっているのは、寝たきりの人や身体障害を持つ人のセクシャルウェルネス

画像: 寝たきりや障害者のための「セックストイ」が登場

 これまで身体障害を持つ人が性的な話題を語ることは社会的にタブーとされる傾向が強く、とくに女性障害者の性について語られる機会はほとんどなかった。そのため、自らの性に関して誰にも相談できずに、ひとりで抱え込んでしまう人も多いという。

 しかし近年、そんな状況を打破しようと、寝たきりの人や身体障害を持つ人のセクシャルウェルネスを高めるグッズやテクノロジーが次々登場。その先駆者的存在として、いま海外で注目されているのは「Bump'n Joystick(バンプイン・ジョイスティック)」

画像: getbumpn.com

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 「バンプイン・ジョイスティック」は、性の健康とウェルネスの専門家、作業療法士、および障害者コミュニティによって設計された、“世界初”の障害者向けセックストイ

 じつは、市販されているセックストイのほとんどは「手」による操作を必要とするため、身体障害を持つ人々にとっては最大の障壁だったそう。そこで、細かい運動能力や手への依存を取り除き、粗大運動やより大きな筋肉だけで楽しめるよう開発されたのは、このバンプイン・ジョイスティック。

 上部は抱きしめやすい柔らかなクッションを取り付け、下部にバイブレーターやスリーブを装着できるセクションを設置。手による細かな操作を気にせず、リラックスした状態で楽しむことができるのが最大のポイントだという。

自らも手に障害を持つアンドリュー・グルザ氏が開発

 この商品を開発した障害者啓蒙コンサルタントのアンドリュー・グルザ氏は、「(これまでのセックストイは)ボタンに手が届かず、スピードが速すぎて、実際に痛かったことも多々ありました」と米Hackでコメント。

 クィアでもあるグルザ氏は「自分の手のせいで、自慰行為をする能力を持たないことがどれだけ大変だったかについて、これまでたくさん発信してきました。しかし、いまだに障害者の生きた経験が(セクシャルウェルネスの)会話に含まれていません」と彼は不満を抱く。

 そこで、グルザ氏は「自分たちの手で、自分たちに合ったものを作ろう」と考え、妹であるヘザー・モリソン氏とともに障害者向けのセックストイ「バンプイン・ジョイスティック」を発売。

 抱き枕タイプにした理由について、モリソン氏は「このように設計した理由は、ユーザーが実際にハグして抱きしめられるからです」と説明。続けて、モリソン氏は「足を巻きつけることもできるので、手を使わずともリラックスした状態で、とても自然な動きができます」と話す。

 ほかにも、中間にあるセクションには、バイブレーターやスリーブなど自分の身体に合った好みのセックストイを設置できるほか、取り外し可能で丸洗いもできるため、とても衛生的で管理しやすいともモリソン氏は言う。

障害者の「性の悩み」をよりオープンに

 実際に障害を抱えて生活している人々や、障害福祉分野で働く人々は、このようなインクルーシヴなセックストイの誕生を大いに歓迎。

 セックスワーカーで障害者支援を行なっているサミュエル・ハンター氏は、「現在、市場に出回っているセックストイの問題について、これまでにも障害者コミュニティとの間で多くの議論が行なわれてきたため、(この商品は)多くの期待に応えるものになるでしょう」とコメント。

画像1: 障害者の「性の悩み」をよりオープンに

 また、障害者支援サービスを提供するNorthcottのエデュケーターであるアリシア・メリタ氏は「いまだに(市場とは)若干のギャップがあります」と話し、障害者向けに作られたセックストイが少ないなか、今後こういった商品が増えることに大きな期待を寄せている。 

 モリソン氏も、この商品をきっかけにより障害者コミュニティが抱える「性の悩み」について議論されることを期待しているそうで、「このトピックをオープンにすることができれば、長い間見過ごされ、無視されてきた私たちのコミュニティのために、より多くのことができるようになると思っています」と語る。

画像2: 障害者の「性の悩み」をよりオープンに

 世界初の障害者向けのセックストイ「バンプイン・ジョイスティック」。いまだ障害者のセクシュアルウェルネスに関する情報を手にしづらい環境が続いているが、今後はすべての人がより安全で喜びに満ちたセクシュアル体験ができることを期待したい。 (フロントロウ編集部)

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