日本で購入できるアップサイクルコスメにフォーカス
前回のサステナ調査隊では、食品ロスを削減するために生まれたクラフトビール「CRUST LAGER」を紹介。本来であれば捨てられるはずの製品やモノに新しい価値を与えて再生するアップサイクルの取り組みが増えるなか、この流れは美容業界でも。
とくに海外では、ごみになるはずだった材料からコスメをつくる「アップサイクルコスメ」が数年前から大注目。規格外の果物や野菜をはじめ、廃棄物や副産物を有効活用して製造するコスメが次々と誕生していた。
そして日本でも、アップサイクルコスメの市場が徐々に拡大。日本発の多くの美容ブランドがアップサイクルコスメの開発に力を入れていて、国産のアップサイクル素材を有効活用しながら、高い機能性にもこだわったアップサイクルコスメがここ最近増えてきている。
日本発の美容ブランドが手掛けるアップサイクルコスメを中心に、国内で購入できる注目のアップサイクルコスメを調査してみました。
玄米&梅をアップサイクルしたクレンジングオイル
日本発の人気ビューティーブランドCelvoke(セルヴォーク)から今年の9月に誕生したのは、アップサイクル原料を積極的に活用した美容オイルクレンジング「セルヴォーク カームブライトニング クレンジングオイル」。
原料は、休耕田だった水田で育てた未使用資源のオーガニック玄米と、希少なオーガニック梅でありながら、規格に満たなかった食用規格外の梅。これらの国産オーガニックのアップサイクル原料を、発酵でパワフルかつ機能的にと4年の歳月をかけて開発された独自成分「Wウメコメ発酵エキス※」が配合されている。
※(アスペルギルス/サッカロミセス)/(ウメ果実/コメ)発酵粕エキス(保湿成分)
さらに香りには、廃棄予定だった国産柚子果皮から抽出したアップサイクル原料の柚子精油を活用。また化粧箱にはサトウキビ由来の「バガスパルプ配合紙」を、容器には焼却時に排出されるCO2を削減するボトルを採用するなど、さまざまな点からサステナブルなものづくりを徹底。そんな「セルヴォーク カームブライトニング クレンジングオイル」は、発売1カ月で6カ月分の販売予定点数が完売。驚異的な売り上げを誇る注目アイテムとなっている。
コーヒー豆をアップサイクルしたシュガースクラブ
日本初のアップサイクルコーヒー豆を使用したコーヒーシュガースクラブとして2020年に発売されたのが、HUG BROWNE(ハグブラウン)の「ハグブラウン・エスプレッソボディショット」。
「ハグブラウン・エスプレッソボディショット」は、エスプレッソコーヒーを抽出した後の「出がらし」となったコーヒー豆を再利用し、ボディケアコスメとしてアップサイクルしたアイテム。
コーヒーの出がらしは、東京都渋谷区にあるコーヒースタンド「THE LOCAL COFFEE STAND」より回収。バリスタの目利きによって厳選された高品質なコーヒー豆に、シュガースクラブという新たな命が吹き込まれる形で製造。全て植物由来の原料のみでつくられたヴィーガン処方で、シリコン・パラベン・動物性原料・合成着色料・合成香料を一切不使用の無添加なのも嬉しい。
ブドウの皮をアップサイクルしたシャンプー&トリートメント
東京・広尾にある完全会員制ビューティサロン「Reno 801」発のブランドCHRONO CHARME(クロノシャルム)が展開するのは、本来なら廃棄されるはずのブドウの皮から抽出したアップサイクル原料を活用したヘアケア製品。
シャンプーやトリートメントには、日本のスコットランドとも称される豊かな自然と温暖な気候に恵まれた北海道・余市の白ブドウから抽出した成分「クロノシャルディ※」が配合されている。この成分を、白ワインを製造する際に廃棄してしまうブドウの皮から抽出。
※CHRONO CHARMEは、ヘアケア業界で初となるクロノシャルディの採用に成功している
ワイン醸造過程に廃棄してしまうぶどうの皮をアップサイクルするという取り組みが評価され、与市町のふるさと納税の返礼品にも選定されている。ちなみに商品のボトルには、MR(再生)PET樹脂を100%使った「メカニカルリサイクルボトル」を使用。製品の製造工程だけでなく、使用される成分やパッケージまで環境に優しい製品と言える。
バイオリン制作過程で出る端材をアップサイクルしたコレクション
2021年に日本初上陸を果たしたイタリアの国民的ナチュラルコスメブランドL’ERBOLARIO(レルボラリオ)が展開する「アッコルド ディ エバノ コレクション」は、バイオリンの制作過程で出る端材を活用したユニークなアップサイクル製品。
シャンプー、ソープ、パフューム、ディフューザー、シェーブローションからなる「アッコルド ディ エバノ コレクション」では、バイオリン制作の過程で出る、本来捨てられてしまうエバノ コクタンの端材を活用。
火、エネルギー、権力の象徴とされる高貴な木材であるエバノから抽出したエキスが肌を保護し、整えてくれる。堂々たる威厳とエレガンスを感じさせながらも、どこか神秘的なムードを宿すウッディシトラスの香りも魅力。
ユズをアップサイクルしたヘアケアシリーズ
CRAFT ORGANIC(クラフトオーガニック)は、自然派化粧品ブランドの草花木果(そうかもっか)から新たに生まれたサステナブル&オーガニックコスメブランド。ブランドの第1弾として登場したヘアケアシリーズは、本来廃棄されるはずの農業廃棄物を資源として活用したアップサイクル原料を使用。
CRAFT ORGANICのヘアケアシリーズは、ユズをまるごと使用。ユズ果汁を搾ったあとに残る果皮などの部分を活かし、水蒸気蒸留法でユズ果皮水、ユズ果皮油を抽出。さらに通常は廃棄される蒸留後の果皮などから、ユズ果皮エキスを抽出している。
また同ブランドは、生分解性に優れた洗浄剤を採用するといった処方設計をはじめ、種子油の搾油でも二酸化炭素の排出抑制が見込める方法を選択するなど、多方面からサステナブルな取り組みを行なっている。
本来ならば捨てられるはずだったモノが製品のキー成分として有効活用されるなど、進化しているアップサイクルコスメ。今後さらに成長していきそうな分野なので、どんなアップサイクルが行なわれるか注目していきたい。(フロントロウ編集部)