英語圏で2022年にトレンドとなった「Quiet Quitting(静かにやめる)」という考え方。それってどんな働き方?  結婚や人間関係にも適用している人がいるというトレンドを紹介。(フロントロウ編集部)

仕事は人生じゃない、「Quiet Quitting」という働き方

 2022年に、「quiet quitting(クワイエット・クイッティング)」という言葉が英語圏で爆発的に知られるようになった。TikTokによって拡散されたと見られており、「静かに」という意味のquietと、「辞める」という意味のquittingを組み合わせたものだが、使われ方を考えると「止める」と訳したほうが適切かもしれない。

 この言葉は、自分の役職に求められた仕事を最低限ラインでこなし、それ以上に情熱や努力を捧げることなく、時間外労働もしない働き方を指す。キャリアアップやお金稼ぎを“成功”とみなして昼夜・休日に関わりなくキャリアに情熱を捧げることを推奨する「Hustle Culture(ハッスル・カルチャー)」に対する考えでもある。

 ひとつ注意しておきたいのは、この働き方は仕事をしないわけではなく、怠けるわけでもない。ただ、自分に役職に与えられたノルマの最低限をこなすということ。

画像: 仕事は人生じゃない、「Quiet Quitting」という働き方

 アメリカのNPRが、日本の「職人」を例に取って、それに対になるものとして「Quiet quitting」を紹介しているのは興味深い。NPRの説明はこのようなもの。

 「日本には“職人”という概念があり、自分が作るものに自分を捧げ、常に完璧な作品を目指す職人のことを指します。静かな辞め方というのは、その対極にあるようなものです。自分のエゴを仕事から切り離し、完璧を目指さないということです。境界線を設定し、余計な飾りをつけずに、給料をもらっているやるべきタスクを、時間内にやるだけです。それ以上はしない。もう上司やお客さんにゴマをする必要はありません。もう、夜も週末も、ひっきりなしにメールをチェックする必要はありません」

なぜ「Quiet Quitting」がトレンドに?

 業務時間以外に仕事をしない、というのは本来であればそうあるべきだが、それが今になって新しいトレンドになっているのは、コロナ禍を経て社会の環境が変化したからだと見られる。

画像: なぜ「Quiet Quitting」がトレンドに?

 また、米Gallupによる調査では、アメリカで働く人々の約半数がすでにquiet quittingをしているというが、じつは調査結果でこれまでより大きな変化はないそう。しかし、35歳以下の社会人では、2019年から2022年で仕事に情熱を持つ割合が6%下がっており、Z世代やミレニアル世代で働き方への意識が変化していると予想された。

 米Huffpostでは、「quiet quitting」を実践していた女性にも取材。彼女は自分が定時に上がるからといって、同僚に迷惑をかけることはしないようにしているそう。また、本当に情熱を捧げられることや自分に合った生き方を探すまでの働き方として「quiet quitting」を選ぶ人もいるという。

 さらに米Huffpostではキャリアコーチのブライアン・クリーリーが、アメリカ国内のインフレが高まるなかで給与が上がっていない事実がトレンド加速の背景にあるとして、給与が上がらなければ、「なぜそんなに一生懸命に働いていたんだ?」となるだろうと指摘した。

 「Hustle Culture」を推奨する人からは、「Quiet Quitting」を批判する意見も出ている。しかし、一般的に多くの人は家族や友人と過ごす時間より多い週5日を働いているのに、それ以外の時間は働かないというだけで批判される状況は、現代社会の在り方を考える良い機会。さらに、仕事のゴールはどんどんキャリアアップすることでなくても良いはず。仕事は仕事でして、その分の給与を受け取って、あとは他の好きなことをして過ごすという生き方に悪いところは何もない。

 最近では、このquiet quittingというフレーズは結婚や交際にまで使われるところまで発展しているという。離婚や破局をするわけではないが、結婚や交際を続けるために最低限をしている状態のことを指すそう。もちろん、結婚生活や交際はお互いが努力を続けることで幸せなレベルがキープできるもの。仕事の場合はquiet quittingが幸せをもたらすかもしれないが、人間関係はそうとは言えないかもしれない。

(フロントロウ編集部)

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