第80回ゴールデン・グローブ賞で司会を務めたジェロッド・カーマイケルが、人種差別の問題がある主催団体のハリウッド外国人映画記者協会(HFPA)を、授賞式の始めで批判した。(フロントロウ編集部)

黒人排除を批判されて黒人を起用、司会者が批判

 2023年にゴールデン・グローブ賞が2年ぶりに開催された。ゴールデン・グローブ賞については、2021年2月に主催団体のハリウッド外国人映画記者協会(HFPA)で会員が87名しかいないこと、そのなかに黒人が1人もいないことが明らかに。性差別や接待疑惑も報じられることとなり、2022年は多くの関係者がボイコットし、テレビ放送もないという事態になった。

 HFPAは改革を約束し、2023年のゴールデン・グローブ賞には以前通りとまでは言わないまでも、多くの関係者が出席。しかしまだまだ微妙な雰囲気は残っており、関係者やエンタメ関連企業は距離を測っている。

 そして、今年の司会者はコメディアンのジェロッド・カーマイケル。彼は黒人だが、自分が起用されたのは黒人だからだというジレンマも抱えたよう。授賞式でステージに登場した後すぐに、彼はこんなトークを展開した。

 「私がなぜここにいるのか教えましょう。私は黒人だからここにいるのです。この部屋にいる全員を巻き込みます。このショー、ゴールデン・グローブ賞は(主催団体の)ハリウッド外国人映画記者協会が原因で去年は放送されませんでした。人種差別者の組織だとは言いませんが、ジョージ・フロイドが死ぬまで黒人会員は1人もいませんでした。その情報をお好きなようにしてください」

 黒人だから排除されていたのに、今は黒人だからオファーされる。排除がなくなるのは良いことだが、一方で、人種や性別などではなく才能で選ばれるようになるのが理想。しかし、才能を評価する側にバイアスがあることは多く、これまでに評価されてきた人々も必ずしも才能だけで評価されてきたわけではない。また、ゴールデン・グローブ賞1つが1度その選択をしたからといって、他の環境ではまだまだ根強い人種差別が存在しているため、社会全体でみればジェロッドが司会を務めたことには意味がある。

 しかし、ジェロッド個人が黒人という枠組みにとらわれたくないと思うのは当然の感情。では、彼がオファーを受けた理由はなんだったのか? ジェロッドはこんなジョークで裏話を明かした。

 「友人は、『彼らはいくら払うって?』と聞いてきたので、私は『お金の話じゃないんだよ。考えたいのはモラルの話なんだ』と言いました。すると彼女は、『いいから、いいから。彼らはいくら払うって?』と続け、私が『50万ドル(約6,600万円)』と答えると、彼女はこう言いました。『ハァ。良いスーツを着て、白人のお金を取りにいきなよ』」

 ゴールデン・グローブ賞に対しては、まだまだ批判も多い。しかし、『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』の演技で助演女優賞を受賞したアンジェラ・バセットは、受賞後のプレスインタビューで、今年ゴールデン・グローブ賞に参加することにためらいはなかったと話し、「ハリウッド外国人映画記者協会は、必要だと分かっている変化のために進みました。なので、今夜はその環境の始まりでしょう」とコメントしている。

(フロントロウ編集部)

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