ヴィオラ・デイヴィスが語った、黒人女性の映画が制作されない、評価されない現実についての指摘が、反響を呼んでいる。(フロントロウ編集部)

『The Woman King』や『Till』は評価されない

 2022年にアメリカで予想外の大ヒットを記録した映画がある。

 アフリカのベナン共和国にかつて存在したダホメ王国で活躍した女性だけの戦士軍アゴジエ(Agojie)を描いた『The Woman King(原題)』は、オープニング週末だけで興行収入1,900万ドル(約25億円)を記録し、週末の映画ランキング1位に。

 主演を務めたのは、ドラマ『殺人を無罪にする方法』や映画『ダウト〜あるカトリック学校で〜』などで知られ、これまでにアカデミー賞、エミー賞、トニー賞を受賞した演劇の三冠王であるヴィオラ・デイヴィスで、高い評価を得ている。

画像1: 『The Woman King』や『Till』は評価されない

 しかし本作は、2023年アカデミー賞でノミネーションすらなしという結果に。さらに、市民権運動に大きな影響を与えた黒人女性メイミー・ティルが主人公で、批評家からも観客からも非常に高い評価を受けている映画『Till(原題)』も完全スルーとなり、批判があがっている。

 そんなアカデミー賞ノミネーションの発表に先がけ、ヴィオラは米THRのインタビューで、映像業界において黒人女性の物語が制作されること、評価されることの難しさを語っていた。その指摘が適切だとして、現在拡散されている。動画の中で彼女はこう語った。

 「すべては闘いです。そして私が立ち上がらなければいけなかった究極の闘いについてお話しましょう。すべての人が苦労しているのは分かります。アゴジエをベースにした映画『The Woman King』では、テストスクリーニングをして、それが白人男性、白人女性、黒人男性にとって意味のあるものである必要があった。それが98%の黒人女性に届いていようと、関係ありません。では、どうやって白人男性に届けるか?(ヴィオラが演じた)ナニスカはTバックを履かないし、事なかれ主義にもならない。なら、どうやって白人男性の観客に届けるのか?そして、もし白人男性の観客に届けられなくても、映画は経済的価値のないものというわけではない、と人々に感じさせることができるのか?」

 米Varietyによると、『The Woman King』の初週末の観客は61%が女性で、そのうちの60%が黒人女性、19%が白人女性、11%がヒスパニック系女性、10%がアジア系女性だったという。

 ヴィオラの動画を拡散した人からは、「疑いようがなく、アメリカで興行収入がトップだったこの映画が、より広域で、より良く、より長く、より高い評価を得られなかったという事実は、シンプルに人種差別でミソジニーだ」「『THE WOMAN KING』が完璧にスルーされたことは、(2021年に)ホプキンスがチャドウィックに勝った時ぐらい怒りを感じそうだ。黒人の物語は、誰がメインを務め、何がテーマかという理由でニッチとされるのならば、私たちが“メインストリーム”になる機会はあるのか?『THE WOMAN KING』は興行的にも大成功した!」といった批判や怒りの声があがっている。

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 『The Woman King』のアゴジエは、MCU映画『ブラックパンサー』に登場した女性たちの軍隊“ドーラ・ミラージュ”のモデルであり、ジーナ・プリンス・バイスウッド監督は、「『ブラックパンサー』の成功は、『The Woman King』が作られるためのドアを開けてくれたと信じています」としているが、「本作の製作は『ブラックパンサー』の公開前から進んでいましたが、ゴーサインは出ていませんでした」という現実も明かした。

 同じように差別を受けている人たちでも、その中でヒエラルキーというものは存在している。黒人差別とはいっても男性と女性では立場が異なる。女性差別は白人女性に対してから改善され始めるため、それぞれの差別が改善されていても、黒人女性はそこから抜け落ちる可能性が高い立場にある。まずはその問題が可視化され、改善されていく必要がある。

(フロントロウ編集部)

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