日本にルーツを持つDJ/プロデューサーのグリフィンにインタビュー。キャリアの初期の頃からの親友カイゴや、ワンリパブリック、ティナーシェ、ムー、セイレム・イリースといった豪華コラボレーターが参加している最新アルバム『Alive(アライヴ)』についてはもちろん、日本のチャートで急上昇することとなった「Tie Me Down」や「Body Back」、日本での思い出、そして、出演が決定しているフジロックフェスティバルへの意気込みについても訊いた。(フロントロウ編集部)
この3年間で日本のファンとの距離をさらに縮めたグリフィンがフジロックで来日
新型コロナウイルスのパンデミックは海外アーティストの来日を困難にし、海外から人々の来日が実現するまでにも時間を要したが、日本人の母親を持つDJ/プロデューサーであるグリフィンも大きな影響を受けた1人。パンデミックに見舞われて以降、まだプライベートでも日本を訪れることはできていないとフロントロウ編集部とのZoomインタビューで明かす。「まだ日本へは行くことができていません。最後に日本へ行ってからは3年が経ってしまいましたね」。

グリフィンが最後に来日したのは、奇しくも世界がパンデミックに見舞われる直前の2020年2月に行なった、ソールドアウトの来日公演でステージに立ったとき。「あのときは素晴らしい時間を過ごせました」とグリフィンは振り返る。「それからずっと、日本に戻るのにピッタリなタイミングを待っていました。今年の夏にようやく戻ることができるので、とてもワクワクしていますよ」。
今年7月に開催されるフジロックフェスティバルに出演することが決定しているグリフィン。来日公演としてはおよそ3年ぶりだが、今、日本のファンとグリフィンとの距離はかつてないほどに縮まっていると言えるかもしれない。
なぜなら、2018年8月にリリースしたシングル「タイ・ミー・ダウン(Tie Me Down)」が、リリースからおよそ4年を経て昨年に日本の様々な洋楽チャートで軒並み1位を獲得するなど、大ヒットを記録。今年に入ってからも、2019年の楽曲「Body Back(ボディ・バック)」が再生数の急上昇を見せており、グリフィンの楽曲が日本の洋楽ファンの間で話題沸騰となっている。
加えて、昨年11月にリリースしたセカンドアルバム『Alive(アライヴ)』では、カイゴやワンリパブリック、ティナーシェ、ムー、セイレム・イリースといった豪華アーティストたちとの共演が実現。フロントロウ編集部は、そんなノリに乗っているグリフィンと話をすることができたので、この機会に改めて彼のキャリアを振り返ってもらいながら、日本や最新作、豪華コラボレーターたちとの秘話、オフの過ごし方までたっぷりと語ってもらった。
グリフィンが挙げるキャリアの転換期となった3つのターニングポイント

まずは、グリフィンさんのキャリアについて伺いたいと思っています。ライブでは様々な楽器を演奏されていますが、音楽を始めたのはいつだったのでしょう?
すごく幼い頃にクラシック音楽を習い始めて、そのときからピアノのレッスンに通っていました。それがたしか、7歳か8歳の頃ですね。そこからずっと18歳になるくらいまでピアノは弾いていました。ギターを弾くようになったのは11歳か12歳の頃で、ロック・ミュージックに夢中になったのもその頃です。当時は友だちとガレージや家の中で一緒に音楽をやっていました。楽器を弾くようになり、音楽の道に進むようになったのはそういう経緯ですね。そして、大学に進学してからはエレクトロニック・ミュージックを好きになり、ダンス・ミュージックやビートをコンピューターで作る方法を勉強しました。子どもの頃に学んだ楽器の演奏をエレクトロニック・ミュージックに組み込みながら取り組んだので、2つの世界を融合させたという感じでしたね。
当時憧れていたミュージシャンは誰でしたか?
幼い頃はいろんな音楽を聴いていましたよ。当時のお気に入りはサブライムというバンドでした。子どもの頃はクラシックなロックが好きだったので、ザ・ローリング・ストーンズやレーナード・スキナードのようなアーティストの曲を聴いていましたね。幼い頃に初めてエレクトロニック・アーティストの曲を聴いたのは、ダフト・パンクが最初だったと思います。それから、学生時代にものすごく影響を受けたのがアヴィーチーです。彼が作るエモーショナルでメロディックな音楽は、自分がそれまで聴いたことのなかったものでした。アヴィーチーが自分にとっての憧れの存在となって、彼が音楽で表現していた感情を、自分も音楽で伝えたいと思うようになりました。
キャリアの転機になったターニングポイントを3つ挙げるとしたら、いつになりますか?
レコード会社と契約して初めてリミックスを手がけた時が最初ですかね。たしか初めて手がけたのはエリー・ゴールディングの「Burn」のリミックスだったと思うのですが、初期の頃にレーベルからリミックスを依頼されたときは、これはすごいことだと感じましたね。マルーン5の「Animals」のリミックスも、初めてオフィシャルで依頼されたものの1つでした。
次のターニングポイントは、初めてライブをやったときです。レイクタホで開催されたSnow Globeミュージック・フェスティバルに出演したのが最初でした。それから、初めてのオリジナル曲「Heading Home」をリリースしたときもそうです。アーティストとしての進歩という点では、単にオンラインにリミックスをアップしていたアーティストから、正式にレーベルの契約アーティストになって、ツアーやショーをして、自分のオリジナル曲も出せたという意味で、今あげた3つが大きなターニングポイントだったと思います。
「Tie Me Down」や「Body Back」の日本での大ヒットを語る
そして去年、「Tie Me Down」が日本でヒットしましたが、日本でヒットしたということはグリフィンさんにとってどのような意味を持っていますか?
とても嬉しいですよ。「Tie Me Down」はこれまでに作った曲のなかでもお気に入りの1つで、特別な思いを込めた曲でした。日本でバイラルになって、皆さんに気に入っていただけたのは本当に嬉しいですね。アメリカでも、いまだに大人気な曲の1つなんです。ショーで演奏するときは、いつもそれがハイライトになるほどで。なので、日本の方々に気に入っていただけていることを幸せに思います。すごく誇りに思っている曲ですから。
今年に入ってからは「Body Back」も日本での再生回数が急上昇することとなりました。「Tie Me Down」や「Body Back」の再ヒットについて、ご自身ではどのように見ていますか?
再ヒットの要因については分かりかねますが、この曲も個人的に思い入れのある1曲です。正式にリリースする前から大好きだった曲で、リリースして、それを演奏したときは本当に楽しかったですね。奇しくも、この曲をリリースしたのはパンデミックが起きる直前の2019年末でした。今では、久しぶりにみんなで集まれるようになり、コンサートにも参加できるようになったので、ダンス・ミュージックをもう一度聴くようになったという要因も(再ヒットには)あるかもしれません。新しい生活様式になったのではないでしょうか。パンデミック中には、そこまでダンス・ミュージックに夢中になれなかったと思うので。いずれにせよ、この曲も自分にとって特別な曲なので、日本の人たちがこの曲に出会って、楽しんでいただいていることは本当に嬉しいです。
日本のファンの反応はグリフィンさんのところにも届いていますか?
ソーシャルメディアなどで、日本のファンの方々からたくさんのメッセージをいただいています。メッセージを目にするたびに嬉しい気持ちになっていますよ。日本のファンの方々は、僕にとって本当に大切な方々なので。しばらくの間日本に行けていなくて、ファンの方々にもお会いできていないので、メッセージは本当に嬉しいですし、できる限りレスポンスするようにしています。今年またお会いできるのを本当に楽しみにしています。
「Tie Me Down」や「Body Back」は、その美しいメロディーはもちろんのこと、エモーショナルな歌詞も魅力的です。最新アルバム『アライヴ』のなかでは、特にお気に入りの歌詞を挙げるとしたらどの曲でしょう?
『アライヴ』のなかでは「After You」の歌詞は大好きですね。それから「Reckless」も。ただ、実際は全部が好きです。それぞれに違いがあるというだけで。僕は自分の曲を子どもたちのように思っているので、すべての子どもたちを愛するように、すべての曲を同じくらい愛しています。単に、違いがあるというだけですから。とはいえ、個人的には比較的エモーショナルな歌詞に惹かれるので、「After You」はそのうちの1つですし、「Safe With Me」もそうです。誇りに思っているものばかりです。「Lose Your Love」の歌詞も好きですしね。
『アライヴ』で実現した豪華コラボや親友カイゴとの友情について
最新作『アライヴ』にはワンリパブリックやティナーシェ、カイゴ、セイレム・イリース、ムーなど多くのアーティストが参加しています。過去にはカーリー・レイ・ジェプセンなどともコラボしていますが、今までコラボしてきたなかで、そのスター性に最も魅了されたアーティストを挙げるとしたら誰でしょう?
『グラヴィティ』の時に(「OMG」で)カーリー・レイ・ジェプセンと仕事をしたときはそのスター性に圧倒されましたし、とてもクールな体験でしたね。すごく優しい方でした。この業界に長くいる方でも、その方の普段の人間性というのはわからないものですが、実際にお会いしたときに彼女は本当に素敵な方で、なおさら魅力的に感じましたね。
それから、(『アライヴ』に収録の「You Were Loved」で)ワンリパブリックのライアン・テダーと仕事ができたときもクールでしたね。長い間、アーティストとしてもソングライターとしても尊敬してきた方なので、一緒に仕事ができて、彼がどのように楽曲制作やソングライティングにアプローチしているのかを理解できるチャンスがあったのは嬉しかったです。本当にプロフェッショナルでした。
実際、ライアン・テダーとの共作はいかがでしたか? 具体的にはどんな発見がありましたか?
彼は本当に素晴らしかったです。彼はストーリーテリングや作詞に本当に長けていると思いますし、耳に残る(曲を作る)というところを知り尽くしていて、ものすごくキャッチーな音楽を作ることができます。それから、シンガーとしても素晴らしい。歌声の使い方もそうですし、ハーモニーやメロディラインなども熟知している。才能の塊ですよ。彼から学んだこととしては、自分はこれまでのキャリアでハードワークしてきたつもりだったのですが、彼のハードワーカーぶりはレベルが違ったという点ですね。何年もの間、成功し続けているような方が、今なおあのレベルでハードワークしているというのは、本当に刺激になりました。ライアンとの仕事は特別でしたね。
先日、アスペンで開催されたPalm Tree Music Festivalでカイゴと共演されていましたね。カイゴとはずっと友人だったそうですが、今回『アライヴ』に収録された「Woke In Love」で初めてコラボレーションが実現することになりました。
そう、彼とは2015年か2016年くらいからの友人です。僕らは同じくらいの頃にキャリアをスタートさせて、SoundCloudやYouTubeに音源をアップしたり、リミックスしたりということをしていたので、そういう共通点からよく連絡を取り合っていました。2017年には彼のヨーロッパ・ツアーに帯同したこともありました。そういうわけで、彼とはずっと友人ではあったのですが、音楽を一緒に作ったということはなくて。そんななかで、去年の夏に、確かLAで一緒にいたときだったと思うのですが、そのときに彼から「聴かせたい曲があるんだ。クールな曲だと思うし、コラボできたらと思ってる」ということを言われて、その1ヶ月後くらいに音源を送ってくれました。当時ホテルで作業をしていた僕はすぐにその曲を聴いたのですが、すごく気に入りました。それで、「やるべきことは分かってる。プロジェクトを送ってくれ」ということを彼に伝えて、ホテルの部屋で一晩中それに取り掛かりました。それで、翌朝起きたら「これ最高だよ。こちらも送り返すから、仕上げに取り掛かろう」っていうメッセージが彼から入っていたっていう。そこから何週間かかけて仕上げました。
すごくクールでしたね。オーガニックなコラボという感じでした。友だちなので、共作する上でプレッシャーをかけることなく取り組んだのですが、最終的にはとてもうまくいって、お互い満足していますし、誇りに思っています。将来また一緒にできたらいいですね。友だちと一緒に音楽を作るのはいつだって楽しいことでした。キア(※カイゴの本名)のことや彼がキャリアで成し遂げてきたことは心からリスペクトしていますし、彼と一緒に過ごす時間はいつも楽しいです。
『アライヴ』に参加した、ムーやティナーシェ、セイレム・イリースそれぞれとのコラボが実現した経緯についても教えていただけますか?
「Reckless」について
カレン(※ムーの本名)とはずっと一緒に曲をやりたいと思っていました。実は過去に「Tie Me Down」も彼女に送っていたくらいで。当時、彼女はすごく多忙な時期だったので、それは見送られることになったのですが。彼女の決断はリスペクトしていますよ。「Reckless」では、LAを拠点にしているスネイクヒップスと一緒にやることになって、初期のバージョンを一緒に作りました。それを彼女に送ってみたところ、とても気に入ってくれたという経緯です。僕の世界観と、彼女の世界観の中間を見つけるという作業を行ったのですが、まさにこの楽曲にぴったりな地点を見つけられたと思っています。彼女は本当に才能あるアーティストですし、最高の体験になりました。
「Scandalous」について
ティナーシェとの仕事も最高でした。ティナーシェと仕事をしたときも、彼女のスター性に圧倒されましたね。この曲は素晴らしいソングライターであるアンドリュー・ジャクソンと書いた曲で、元々は男性が歌っていました。それをティナーシェのチームに送ってみたところ、彼女がとても気に入ってくれて、この曲に女性ボーカルという新たしい雰囲気をもたらしてくれました。そこから彼女と一緒に組み立て直していったという感じです。この曲もクールな体験になりましたね。
「Glitch In The Simulation」について
元々はセイレムのマネージメントチームから送ってもらった曲なのですが、クールでユニークだと思いました。彼女は本当にクールな歌声の持ち主ですよね。僕らは2人ともサンフランシスコのベイ・エリアの出身で、そういう共通点もありました。とにかく、送ってもらった楽曲を僕が改めてプロデュースして、また彼女に送ったところ、それを彼女も気に入ってくれて、どこを変えるべきかということのメモと一緒にまた送り返してくれてっていう感じで、最終的にはアルバムに入ることになりました。楽しく作ることができた1曲でしたね。歌声もそうですし、セイレムは本当にクールな人ですよ。そういうわけで、今挙げた3曲はどれも楽しみながら作れました。
好きな日本語は母親との思い出が詰まった「頑張って」!
ところで、グリフィンさんの音楽を聴いていると現実逃避させてくれるような感覚になります。自分にとっては音楽を聴くことがメンタルヘルスを整える方法の1つなのですが、普段、メンタルヘルスのために取り入れていることなどはありますか?
良い質問ですね。時には(メンタルヘルスを整えることが)難しいこともありますが、ここ何年かは趣味もかねてゴルフをやっていますね。音楽やキャリア、家庭のことなどでストレスを抱えすぎているときには、心をリセットして、リラックスする素晴らしい手助けをしてくれます。ゴルフをしに外を出て、新鮮な空気を吸うのは良いですよ。携帯を見るだとか、そういうことをせずに何時間か過ごすことができるので。それから、体の健康のためにエクササイズをするのも好きなのですが、それはメンタルヘルスの助けにもなってくれていると思いますね。ツアーから戻ったときには、意識してリセットやリラックスの時間をとるようにもしています。すぐにまた楽曲制作に取り掛かるなどして仕事をし続けていたいときもあるのですが、時々は、ただリラックスして気楽に過ごすための日を1日か2日くらい設けるようにしています。メンタル面をリセットする助けになってくれていますよ。

音楽以外で今、夢中になっていることはありますか?
さっきも言ったように、ゴルフなどのスポーツは自分にとって楽しい娯楽になっていますね。それから、連絡をとるのもかねて、友だちと時々オンラインでビデオゲームをします。時々そういうことをして過ごしながら、あとは、愛犬とはたくさんの時間を過ごしていますよ。ジジというのですが、一緒にいると本当に楽しいです。音楽以外の時間の楽しみ方としてはそういう感じですね。

そして今年、久しぶりに来日されるということで、フジロックのステージをとても楽しみにしています! 最後に来日したのは2020年2月の来日公演だそうですが、このときのことで、特に印象に残っている思い出などはありますか?
あの時のショーは最高でしたね。僕にとっては初めてライブセットができた機会で、日本でギターやピアノを弾きながらのショーができたのはあのときが初めてでした。それに、ものすごく大勢のファンも集まってくれて。キャンディとか小さいお菓子とか、たくさんのプレゼントをいただきました。特別な思い出ですし、また日本へ行くのが待ちきれないですよ。今はあのときと比べて何枚かの作品も出していて、曲も増えていますし、今年もさらに多くの新曲をリリースする予定ですから。新しい曲たちを日本のみなさんとシェアすることを楽しみにしていますし、素晴らしい時間を過ごしたいですね。
ちなみに、日本に来るたびにしていることはありますか?
食べるのが大好きなので、日本の食べ物で好きなものがたくさんあるんです。日本へ行くとお寿司は必ず食べますし、それからラーメンやとんかつも。名前をど忘れしてしまったのですが、他にもたくさん食べますし、なので食べ物は多くを占めていますね。あとは、ショッピングも好きですね。東京を散歩して、いろんな地域を歩き回るのが好きです。過去に少しだけ住んでいたことがあるニューヨークを思い出すところがあるので、都市部を散歩して、日本のカルチャーを体験するのは本当に楽しいです。世界でもお気に入りの場所の1つですし、早くまた日本へ行きたいです。しばらく行けなかったぶん、楽しみたいですね。
グリフィンさんはお母さんが日本の方ですが、好きな日本語はありますか?
「頑張って」ですね。それがお気に入りの言葉だと思います。日本人の母がいつも、僕が大きなギグやショーだったり、もしくは子どもの頃で言えばスポーツの試合だったり、ずっと練習してきたことを発揮しなければいけない場面の前には、その言葉を伝えてくれました。今でもステージに立つ前には、その言葉を思い浮かべています。
最後に、日本のファンへメッセージをお願いします!
今年フジロックフェスティバルで久しぶりに日本に戻ることができるのをとても楽しみにしています。日本のファンの皆さんとずっと会いたいと思っていましたし、日本がずっと恋しかったです。本当に楽しみです。日本ではビッグなショーをやるつもりです。待ちきれません!
<リリース情報>
グリフィン
シングル「Body Back feat. Maia Wright」
配信中
ダウンロードやストリーミングはコチラ。

最新アルバム『アライヴ(Alive)』
配信中

Photo:©️Savanna Ruedy,ゲッティイメージズ,Instagram
(フロントロウ編集部)