フロントロウ編集部が296人を対象に実施した「LGBTQ+カミングアウト意識調査」。カミングアウトの経験は一人ひとり異なるもので、正解はない。当事者の声を聞くという目的で行なった調査結果をまとめた。

カミングアウトは「会話の中で」が7割、エンタメ業界でのレプリゼンテーションの役割

 今回はウェブでの回答であることもあり、49歳以下が9割を占めたものの、10代~70代の全世代から回答があり、幅広い世代に当事者がいることが分かった。そして回答者のうち、7割(68.9%)が誰かしらにカミングアウトをしていることが分かった。

 カミングアウトの方法は、会話の中でという人が7割。偶発的に自分から切り出した(58.3%)、計画的に自分から切り出した(51%)、相手に聞かれて(21.6%)という内訳だった。その他の方法では、メール/手紙(10.8%)、第三者を通して(5.9%)、SNS(2.9%)といったものがあった。

 今回のアンケートでは、“テレビを観ながらそういう会話になった”や“好きな作品の傾向でなんとなく伝わった”といった回答もあり、映画・ドラマ・音楽・著名人のなかでのLGBTQ+のレプリゼンテーション(表象)が当事者のカミングアウトの機会に影響していることも分かった。

当事者の声

・「察したのであろう母が、音楽番組のLGBT当事者の曲で同性カップルのミュージック・ビデオの録画を『いいのを見た』と言ってくれた。多分、母は自分がレズビアンであることを知っていると思う。正直曲を聴かせたかったのではなくミュージック・ビデオを見せたかったのだと思う」(20代)

・「親もほとんどの友人も、カミングアウトというより、好きな有名人やドラマの話で多分相手は知ったのだろうと思う」(20代)

・「LGBTQ映画の感想の投稿に含めて」(30代)

カミングアウトした人の7割がして「良かった」と回答

 カミングアウトするかどうか、どのタイミングでするかは、それぞれ個人が決めるべきことで、することが良い・悪いということではないが、今回の調査に参加した人たちの7割(69.6%)は、カミングアウトして「良かった」と答えている。「どちらとも言えない」は3割弱(28.4%)で、「後悔している」人は2%という結果となった。

 カミングアウト後の相手との関係については、“距離が縮まった”や“疎遠になった”という回答がそれぞれあったが、71%が“変わらない”と回答。カミングアウトした時のリアクションとして当事者がポジティブな経験として受け取ったものには、相手への理解や共感を示す言葉や、普通のこととして話す、というものが多くあった。

ポジティブな経験

・「親友に、例え相手が誰であれ、アンタが好きになったんだから応援すると言われた」(50代)

・「『教えてくれてありがとう、驚いたけど今後の関係は今までと何も変わらないよ』とわざわざ言ってもらえたのは嬉しかった」(30代)

・「『苦しかっただろうね』と気遣いの一言を伝えてくれた」(40代)

・「どんな言葉にせよ、受け入れるよ、という意思表示の言葉をもらえた時は嬉しかった」(30代)

・「特に何もなく『○○さんはそうなんだねー』と当たり前に受け入れてもらえた反応は嬉しかった」(40代)

・「『ふーん』という普通の反応をしてくれた」(20代)

・「ものすごく重大な感じの雰囲気で話したところ、『そんなことかよ』と言ってもらえた」(30代)

・「友人に引かないよと言われて嬉しかった」(20代)

ネガティブな経験

・「男性の上司から『レズは見た目が綺麗だから許せる』と言われた」(30代)

・「思い込みではないのかといった発言」(20代)

・「私には手を出さないでねと言われた」(50代)

・「男からよく言われるのが『理解はするけど、オレはそういうの興味ないから!オレには迫らないでくれ!』というのが嫌でした」(30代)

・「カミングアウトしたのに、異性愛主義的な考え方を押し付けられた」(20代)

・「『(同性の先輩を)襲うなよ』と冗談めかして言われてむかついた」(20代)

・「『おまえはおかしいから病院に行ってこい。結婚しなくてもいいから子どもを産んでほしい(孫が欲しい)』と言われた」(40代)

・「母親から、『一生理解はできない』と思うと言われ、ショックでした。言われて嬉しかったことは、妹からの、『え、だから何?』でした。いい意味で無関心でいてくれることが心地よく感じました」(30代)

ハードルは高い、父親より母親が寛容か

 カミングアウトしている相手が友人が最も多く、親にカミングアウトしていると回答したのは3割以下(26.4%)。そのうち、両親にカミングアウトしているのは半数(50.6%)で、片親だけにカミングアウトしている場合は、圧倒的に父親(2.6%)よりも母親(44.2%)が相手である方が多かった。父親に言わない理由として最も多かったのは、理解の低さ。

当事者の声

・「価値観が古く、否定されることが怖いから」(20代)

・「父親は何事に対しても保守的で、ヤングカルチャーなどにも否定的であるため、もしカミングアウトしても理解を得られないだろうと思ったから」(20代)

・「しないでほしいって母親に言われたので。 同時に父親は家父長制どっぷりなタイプなので言うのが可哀想かなと思った」(40代)

・「父は普段から差別的な発言が目立つため、精神的な不安と命の危険を感じる」(30代)

・「言っても理解されなさそうだから」(20代)

カミングアウトについてのそれぞれの考え

 今、カミングアウトを考えている人への言葉については自由回答ながらも、半数以上の人が丁寧にコメントを書き込んだ。とくに多かった3つの傾向を紹介する。

大切なのは自分の気持ち、カミングアウトは絶対ではない

「自分のタイミングでカミングアウトするもよし、しないも良しだと思います。自分を大切に」(20代)

「するもしないもあなたの自由。選びようのなかったセクシャリティに対しての、唯一の自由」(30代)

「カミングアウトすることが=正しいわけではない。言わない選択肢ももちろんある」(20代)

受け入れられることがゴールではない

「理解を求めるのではなく、自分を知ってもらうという感覚でする。 また思うような反応ではなくても焦らず今できることをする」(20代)

「世の中にはいろんな考えの人がいるから、理解してくれない人もいっぱいいます。でもそれはその人たちの考え。理解して欲しくてカミングアウトするよりは、今後自分の考えとか、パートナーを隠さなくても良くなれるように、自分のためにカミングアウトするのが楽だと思います」(30代)

「言いたければ言えばいいし、言って人間関係が変わるならば、それまでの相手なので気にしない」(30代)

サポートや相談先を持つ

「カミングアウトがうまくいかなかった時に支えとなる環境や人間関係を確保してからカムアウトを考えたほうが良い」(40代)

「自分にとって安全な環境と関係のもとでカミングアウトしましょう。心配なときはカウンセリングや当事者どうしのコミュニティに相談すると良いと思います」(20代)

「言いやすさは環境に依存すると思います。自分が過ごしやすい環境やコミュニティを探してください」(30代)

LGBTQ+カミングアウト意識調査
調査時期: 2023年1月18日~4月10日
調査対象数:296人
調査方法: ウェブアンケート(オープン型)

(フロントロウ編集部)

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