イギリスの女性は生理用品の広告に対して、現実を反映しておらず、イラっとして、情報として有益ではないと感じているという。最新の調査から分かった、消費者の願いからズレてしまっている企業のアプローチとは?(フロントロウ編集部)

生理用品のCMは「ムカつく」、イギリスの調査で判明

 月経経験者の筆者が愛用しているナプキンには可愛らしい絵柄が入っている。毎月その絵柄が出血で染まるのを見るたびに、開発者の方の善意を感じると同時に“こんなことで喜ぶと思われているのか”とむなしい気持ちにもなる。ある時にこの気持ちをSNSに投稿した時、これまで月経の話なんてしたことがなかった知人からも共感の声が書き込まれたことに驚き、生理用品や生理用品のCMに対する不快感で盛り上がったのを覚えている。

 生理用品に関する企業の会話への不満。それは、イギリスの女性も感じていることが最近の調査で分かった。

画像: 生理用品のCMは「ムカつく」、イギリスの調査で判明

 イギリスのコミュニケーション・エージェンシーであるThrive Agencyがノッティンガム大学の言語学者と協力して、イギリスのミレニアル世代(2023年の時点で27~42歳)とZ世代(2023年の時点で11~26歳)がどのように月経について会話をしているか、そして、イギリスで生理用品を販売するブランドがどのようにして月経について会話をしているかを調べた。

 今回の調査では、多くの人が月経のCMに対して「現実を反映していない」、「イラっとする」、「情報として有益ではない」と否定的な意見を並べた。女性たちは、企業側が生理中に女性がどのような経験をするのかをしっかり理解していないと感じているそう。

 ミルという名前の調査参加者は、TampaxのCMを挙げて、「ムカつく。Tampaxの『なんでもできます』っていうやつ。ローラースケートいったり、乗馬いったり。出血しているとき、そんなことしたい人は誰もいません。誰も。ああいう広告に私の経験は存在しない。すごく腹が立つ」と切り捨てた。

 また、CMでは血が赤ではなく青い液体で表現されることにも反感を持っている人が多く、月経に対するタブーや後ろめたさを助長していると批判が挙がった。

生理用品ブランド14社の広告、どこが間違っている?

 今回の調査では、AlwaysやTampaxなどグローバル展開している大手ブランド6社と、CallayやCoraなどイギリス国内で展開している小規模ブランド8社の合計14社のウェブコンテンツの言語分析を実施。ブランドが広告で犯しがちな、誤った会話の仕方を見極めた。

感情的な症状がおざなりになっている

 大手・小規模ブランドともに、身体的な症状にフォーカスしがちで、多くの月経経験者を悩ませる感情的な変化にはまだまだ言及が足りないという。

 企業が広告で最もよく触れる症状は、順番に、頭痛、生理痛、むくみ、ほてり、倦怠感、乾燥、ニキビ、熱、寝汗と、感情的な面は一切入っていない。

 一方、当事者が最も経験する症状として挙げた上位5つは、ミレニアル世代が、ひどい痛み、通常の予定を変更せざるを得ないこと、通常の予定をすることに対する心配、エネルギー不足、イライラ。Z世代が、通常の予定を変更せざるを得ないこと、ひどい痛み、通常よりも感情的になること、イライラ、一人になりたいことだった。

 この結果からは、企業側と消費者の意識に大きな違いがある事が分かる。

大手企業は「共感力」が不足している

 大手では「心配ない」というメッセージを押し出しがちな一方、小規模ブランドは個人の体験談を交えて説明する手法が取られる傾向にあり、後者の方が共感力が高く当事者からの支持が高いという。

大手ブランド(Stayfree)

「ひどい生理痛は、頻度が高く、ひどい痛みがあり、市販の薬では緩和できない場合にのみ心配する必要があります」

小規模ブランド(TOTM)

「私が言えるのは、生理痛がくると、文字通り、道を歩いている足が止まっちゃうということ。じっとして立つか座る必要があり、目を閉じて、顔をゆがめ、両手をギュッと握りしめ、おかしいくらい喘いで、それが過ぎ去ったら、私はまた元気!(次の生理痛がくるまではね!)」

画像: 大手企業は「共感力」が不足している

年配の消費者へのコンテンツが少ない

 生理ブランドからの情報発信は、若い女性に特化しているという問題点も。若い世代にはたくさんの情報が発信されているものの、月経はライフステージによって変化していくもので、女性たちはそれがどのように変化して、どのような選択肢があるのかを知りたがっているという。

月経の描き方が“非現実”で、タブーを助長している

 調査チームは、「広告のトーンによって、消費者を遠ざける危険性をはらんでいることがわかりました」とコメント。そのトーンとは、月経中の「フレッシュさ」や「自信にみなぎった姿」をプッシュしたり、「ポケットにサッと入れられる」というような表現で月経をタブー視したりすることだという。

 この点でも、小規模ブランドは大手ブランドよりも適切なアプローチをする傾向にあり、Callayにいたっては、「私たちが望むのは、(中略)私たちみんなが共感できるように、広告にさまざまな経験が表現されることです」と、大手ブランドの姿勢を批判することをマーケティングに使っているという。

 ちなみに、大手企業が最も使うキーワードは「快適」、「自信」、「新鮮」。小規模ブランドが最も使うキーワードは「アクセス」「手に入る」「オーガニック」など、生理の貧困やサステナビリティを意識したものだったという。

 しかし、実際の消費者は、ひとつのもので購入を決めるわけではない。商品の快適さや実用性、ブランドへの信頼、価格、サステナビリティなど、多くを総合的に見極めて決めているという。調査チームは、「女性とブランド間の月経に関するコミュニケーションは限られています」としたうえで、「非現実的な願望を助長する広告に、女性たちはうんざりしている」と、ブランド側に変化を求めている。(フロントロウ編集部)

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