女性が抱える健康課題のなかでも、生理と並ぶ代表的なものとして知られる更年期。そんな更年期の悩みについて、オンラインで専門家に相談できるサービス「menopeer(メノピア)」を手掛ける木村琴子さんにインタビュー。(フロントロウ編集部)

更年期をテクノロジーで快適にする「メノテック」

 近年海外では、更年期を快適に過ごすためのテクノロジー「メノテック」が大注目。更年期の不調にアプローチする新たな製品やサービスが続々と登場し、市場が拡大している。

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 更年期に関する新たなサービスが生まれる流れは、じつは日本でも。そのサービスのひとつが「menopeer(メノピア)」。更年期症状や女性特有の健康課題に悩む女性へ向けたLINE健康相談サービスで、それを手掛けているのが株式会社menopeerの代表取締役を務める木村琴子さん。

 総合商社に勤務後、英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)のサービスデザイン修士課程に進学し、個人プロジェクトで日本人女性向け更年期ケアサービスの開発をテーマにしていた木村さんは、2022年1月に株式会社menopeerを設立した。

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 そんな木村さんに、更年期世代の女性をサポートするサービスを手掛けることになった経緯や、欧米で調査する中で感じた日本との違い、自身が手掛けるサービス「menopeer」の特徴について聞いてみました。

相談サービス誕生のきっかけは、自身の経験

 木村さんが更年期世代に向けた相談サービス「menopeer」を立ち上げるきっかけとなったのは、まだフェムテックという言葉がなく女性の健康を支援するサービスも少なかった頃に、自身が苦しんだ経験。

 「会社員時代に婦人科系の疾患で悩むことが多く、思うように体調コントロールできず仕事に影響が出ることもあり、モヤモヤとした感情を抱いていました」と語る木村さん。

画像1: 相談サービス誕生のきっかけは、自身の経験

 そんな木村さんに転機が訪れたのは今から4年前。総合商社を退職し、英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アートのサービスデザイン修士課程に進学。そこで更年期に特化したサービスについて考えることに。

 「大学院でサービスデザインについて学ぶなかで、好きなテーマでサービスを開発するプロジェクトがありました。そのときに自分の経験を振り返り、女性の健康課題を解決することでエンパワーメントに繋がるようなテーマに興味があったので、こういった領域に注目しました」と話した。

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 女性の健康課題の中でも更年期にフォーカスしたのは、更年期に関するサービスが圧倒的に少なかったからだという。

 「2020年頃ですと、月経や不妊治療に関しては新しいサービスや企業も出てきていたのですが、更年期というのはそのときはほぼないような状態でした」と木村さん。そして自身も今後更年期世代になることを踏まえてサービスがあった方がいいと感じたこと、さらにキャリアや人生の転換期にある更年期世代をエンパワーメントしたいと感じたことで、更年期をテーマにしたサービスを開発することに決めたという。

サービス開発のために日本とイギリスの更年期について調査

 日本人女性向け更年期ケアサービスの開発をテーマに個人プロジェクトを進行していた木村さんは、その一環としてイギリスと日本の更年期を取り巻く現状について調査。そこで分かったというのが、世界共通の問題や国ごとの問題。

画像: サービス開発のために日本とイギリスの更年期について調査

 国を問わず共通している問題について「更年期を取り巻く課題自体は、基本的に世界共通だなと思っています。タブーやスティグマ感といった点では、そのレベルの差はあれ(どの国でも)存在しています」と指摘する。

更年期に詳しい医師は世界的に見ても少ない

 欧米と日本で共通している問題には、医師不足という問題も。更年期の領域に詳しい医師は世界的にかなり限られており、豊富な知識を持ち、トレーニングを積んでいる医師が不足しているという。

画像: 更年期に詳しい医師は世界的に見ても少ない

 木村さんは、更年期の領域を専門とする医師が少ないという問題は、とくに日本において深刻だと指摘。「そもそも産婦人科医自体が、医師全体の4%ほどしかいません。また産婦人科には、周産期(お産)、婦人科腫瘍(がん)、生殖・内分泌、女性のヘルスケアの4つの専門領域があり、全ての医師が更年期領域に詳しい訳ではなく、更年期治療が含まれる女性のヘルスケア領域を専門とする医師は多くありません」と説明。

 更年期に詳しい医師が圧倒的に少ない中で自分に合う医師を選ぶのはかなり難しく、とくに地方ではその問題が顕著だという。

欧米に比べて日本ではHRTの普及が遅れている

 インタビューを通して木村さんがたびたび言及していたのが、HRT(ホルモン補充療法)について。アメリカやイギリスといった欧米諸国にくらべて、日本ではHRTの普及が進んでいないという。その理由として大きいのが、ネガティブなイメージを持っている人が多いこと。

 「日本ではHRTと聞くと、副作用がひどく、乳がんになりやすいといった印象を持っている人がとても多いです。でも実際にはHRTの利用が5年以内の場合、乳がんの発生率はほぼ変わりませんし、HRTを選択されて劇的に改善される人も多くいらっしゃいます」と明かす。

画像: 欧米に比べて日本ではHRTの普及が遅れている

 医師による適切な管理下で処方している限り安全性の高い治療法であるものの、偏った印象がついてしまっていることで、HRTの治療を受ける人が少ないのだという。

 またHRTの普及が進まない背景には、更年期領域の専門知識や経験を有する医師が少ないことも関係しているのではないかと話す。

欧米では更年期に関する草の根運動が活発

 欧米と日本でもうひとつ違う点として挙がったのが、更年期を取り巻く現状を変えようと声を上げる動きの活発さ。

 木村さんは、「市民運動のような草の根的な運動は、欧米のほうが進んでいます。イギリスではメイク・メノポーズ・マター(Make Menopause Matter)といったムーブメントが広まっていますし、アメリカなどでもセレブなどがオープンに更年期について話していますが、日本を含むアジアでは遅れをとっている印象があります」と述べた。
※更年期を社会問題にするべくイギリスで広まっている動き。医学部の必修授業の中に更年期障害を入れることや、不当な解雇や不利益などをなくすために職場での更年期の理解を促すこと、学校の性教育カリキュラムに更年期を含めることを求める運動で、わずか数年で実際に政府をも動かすムーブメントとなっている。

更年期ケア「menopeer(メノピア)」を日本で立ち上げる

 大学院での活動を経て木村さんが立ち上げたのが、更年期世代を中心とした女性をサポートするサービス「menopeer(メノピア)」。LINEを使って更年期の女性が更年期医療の専門家に相談ができる。

画像: 更年期ケア「menopeer(メノピア)」を日本で立ち上げる

チャットではなく通話で相談できる

 menopeerの大きな特徴となるのが、チャットではなく通話形式で相談ができること。

 木村さんは、「menopeerがほかのサービスと異なるのは、チャットではなくビデオ通話や音声通話で相談ができるところです」と話し、その通話形式を採用している理由として、質問ではなく対話の需要が高いことを挙げた。

画像: チャットではなく通話で相談できる

 更年期症状に悩む人は話を聞いてほしいと感じている人が多いと明かす木村さんは、「menopeerは傾聴を重視しており、チャット形式ではなく通話形式で相談を受けていることに特徴があります」と語った。

更年期医療を専門とする専門家が在籍

 menopeerには、更年期医療を専門とするプロフェッショナルでチームが形成されているという特徴も。

 東京歯科大学市川総合病院の産婦人科准教授であり、更年期外来で15年以上の臨床経験がある小川真里子医師をはじめ、更年期専門のクリニックに勤務する専門家、婦人科のクリニックで栄養と睡眠相談をしている専門家など、女性医療や更年期医療に精通した専門家が揃っている。

画像: 東京歯科大学市川総合病院の産婦人科准教授 小川真里子医師

東京歯科大学市川総合病院の産婦人科准教授 小川真里子医師

 これは病院選びや治療選びの相談をしたい人にとっても助けになるポイント。「menopeerでは、お住まいの地域などを聞きながら女性ヘルスケア認定医がいる病院を教えてもらうことも可能です」と木村さん。また病院に行ってみたいけれど躊躇してしまう人も多いそうで、通話での相談を通してそういった人の背中を押すこともしているという。

更年期のメンタルの悩みに特化したサービスを展開予定

 今後menopeerに導入されていく予定だというのが、更年期の心の悩みに寄り添うサービス。

 木村さんは、「更年期の症状は個人差が大きいのですが、日本では欧米にくらべてメンタル不調の症状がよりあらわれる傾向があるというデータがあります」と話し、更年期世代で多い不調として、ホットフラッシュなどの典型的な症状以外に、実はメンタルに関するものも多いのだと明かした。そのような傾向もあり、メンタル不調を抱える人向けのカウンセリングコースが新たに導入される予定だという。

 このコースでは、看護師と公認心理師の両方の資格を持っている人に相談できるのが強みだそうで、その理由として「メンタルヘルスとホルモンバランスはリンクしていることが多いため、心理的なアプローチを知ってるだけでなく、医療的バックグラウンドも持っている人がカウンセリングにあたるというのが特徴です」と明かした。

今後更年期を迎える人に向けて木村さんが伝えたいこと

 インタビューの最後には、将来に更年期を控えた20代30代に伝えたいことについてもうかがった。そこで木村さんが教えてくれたのは、ホルモンや女性のヘルスに関する知識を持っておくことが、将来への自己投資になるということ。

画像: 今後更年期を迎える人に向けて木村さんが伝えたいこと

 木村さんは、「自分の人生を生きるためには、ヘルスリテラシーが絶対的に必要な知識なんです。その知識をつけるのは早ければ早い方が良いと思います」と話す。PMSや生理、女性特有の疾患、更年期、ホルモンの変動といったことについて知っていたほうが、対策や相談ができたり、不調に気づけたりするため、キャリアや夢を諦めざるを得なくなることも少なくなり、それが自己実現につながると教えてくれた。

 自身の経験や海外での学びを生かし、更年期世代をサポートするサービスを立ち上げた木村琴子さん。更年期など女性に多い不調に悩む人に対して覚えて欲しいこととして、木村さんはこんなことも言っていた。

 「必ずしも自分で何とか解決しようとする必要はなく、人に頼るということも選択肢に入れて欲しいです。日本人は我慢強い人が多いとされていますが、我慢できない、また耐えられないのは自分のせいだと思う必要は一切ありません」

 それは誰かが声を上げることで声が可視化され、次の世代につながることで社会が変わっていくからだという。これまで我慢されがちだった女性特有の不調について声が上がることによって、今急速に発展しているフェムテック市場。我慢よりもサポートを求めることが、より生きやすい社会を生み出していく第一歩なのかもしれない。

menopeer公式サイト:https://www.menopeer.com/

(フロントロウ編集部)

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