海外のLGBTQ+コミュニティを中心に使われているスラング「マザー」とは? そして、「マザー」認定されたセレブたちはどう思っているのだろう。(フロントロウ編集部)

スラングの「マザー」の意味とは

 つい先日、日本では「母の日」が祝われたばかりだが、母親を意味する「マザー(mother)」という単語が、海外のLGBTQ+コミュニティでは実の母親以外にも使われていることをご存じだろうか。

画像: スラングの「マザー」の意味とは

 「マザー」は最近ゲイ男性を中心に、LGBTQ+コミュニティによってインターネット上で爆発的に使われているスラング。LGBTQ+コミュニティには長らくアイコン的に支持されてきた女性セレブが存在し、彼女たちは「ゲイ・アイコン」として知られてきたが、そのなかでも特に尊敬される女性たちを、コミュニティが最上級の褒め言葉として「マザー」認定しているのだ。

 もともと「マザー」は、2010年代から存在していたインターネットスラング。ファンが憧れの女性セレブへの敬愛の印として使っていたのだが、そのスラングの起源はLGBTQ+コミュニティにあり、最近それが再認識されたのも手伝ってLGBTQ+コミュニティの間で流行しているよう。

「マザー」はボール・カルチャー由来のスラング

 「マザー」がインターネットスラングとして広く使われるようになったのは最近になってのこと。しかしLGBTQ+コミュニティでは何十年もの間使われており、その歴史は20世紀後半に生まれたアフリカ系およびラテン系アメリカ人のLGBTQ+サブカルチャーである「ボールルーム・シーン」にまで遡るという。

画像: ハーレムのボールルーム・カルチャーのアイコン、Octavia St. Laurent。

ハーレムのボールルーム・カルチャーのアイコン、Octavia St. Laurent。

 人種差別を受けたアフリカ系とラテン系のドラァグクイーンが独自のコミュニティを作り上げたことで生まれたボール・カルチャーでは、参加者の多くが「ハウス(house)」というグループに属しており、そこで本来の家族とは別の「家族」を形成する。選んで作られた家族関係が築かれている中で、グループの若いメンバーを導くリーダーが「マザー」と呼ばれた。

 そしてこの「マザー」が、スタン(熱狂的なファン)・カルチャーにおけるLGBTQ+やAAVE(黒人英語)のスラング用語流行の流れに乗り、女性セレブを賞賛する”称号”として使われるようになったというのが、大まかな歴史だそう。

LGBTQ+コミュニティから「マザー」に認定された女性セレブたち

 たとえば、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のディアドラ・ボーベアドラ役で第95回アカデミー賞助演女優賞を受賞したジェイミー・リー・カーティスは、養子に迎えた子どものひとりがトランスジェンダーであり、その娘に対する全面的なサポートを表明している。尊敬される女性セレブという意味でも、LGBTQ+の母親という意味でも、まさしく「マザー」。また、元NBAスター選手のドウェイン・ウェイドと結婚し、トランスジェンダーの娘ザヤを継母としてサポートしているガブリエル・ユニオンも、あらゆる意味で「マザー」だとして尊敬を集める。

画像: ガブリエル・ユニオン(左)ジェイミー・リー・カーティス(右)

ガブリエル・ユニオン(左)ジェイミー・リー・カーティス(右)

 映画『クルーエル・インテンションズ』や『ラストサマー』で知られるサラ・ミシェル・ゲラーがそれで、彼女の場合、ドラマ『バフィー 〜恋する十字架〜』で演じたバフィー・アン・サマーズが「ゲイ・アイコン」としてLGBTQ+コミュニティで人気が高く、さらに、親として子どもに多様なジェンダーやセクシュアリティが存在することを教えていることを公言しているLGBTQ+アライである点が、「マザー」認定に繋がっている。自分が「マザー」と呼ばれていることについては承知していて、「とても光栄なこと」と語るサラ。「マザー」認定後、彼女のインスタグラムの自己紹介欄には「マザー」という文字が加えられ、現在、プロフィールのURLにはLGBTQ+をサポートするトレバー・プロジェクトへの寄付ページが載せられている。

画像1: LGBTQ+コミュニティから「マザー」に認定された女性セレブたち

 そんなサラに続き、「マザー」と呼ばれることに対して直近で反応を見せたのが、MCUでスカーレットウィッチことワンダ・マキシモフを演じているエリザベス・オルセン。スクリーンに多様なセクシュアリティが存在する必要性を提唱してきたエリザベスは、サラとは違い「マザー」呼びをすんなりと受け入れられてはいないようで、「とても奇妙に感じる」と困惑。「友人たちには良い意味なのだと説明されましたが」とすると、「母親は素晴らしいと思うけど、どうなんだろう」と素直な気持ちを語っている。

画像2: LGBTQ+コミュニティから「マザー」に認定された女性セレブたち

 LGBTQ+の子どものために闘う母であるセレブ、アイコニックなキャラクターを世に送り届けるセレブ、社会の不寛容や不平等に声をあげるセレブ…LGBTQ+コミュニティにマザー認定されるセレブには多様な女性がいるが、全員が行動を通してLGBTQ+コミュニティをインスパイアしているセレブなのは間違いない。(フロントロウ編集部)

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