テレワーク監視ツールを導入する企業が増えるなか、テレワーク中の「時間泥棒」を理由に裁判所から従業員に支払い命令が出たカナダの事例を紹介。

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テレワーク監視ツールはDisney+を観ていることも分かっている

 カナダのブリティッシュ・コロンビア州に本社を置く会計事務所リーチCPAで働いていた女性が解雇後に支払いを求めて会社を訴えたところ、盛大なブーメランが返ってきた。

 会計士としてテレワーク勤務をしていた女性は、「正当な理由なく雇用を打ち切った」として、未払いの給与約15万円と退職金約44万円を求めてリーチ社を訴えた。一方のリーチ社側は、女性がテレワーク中に働いていないのに働いたと嘘をついて「時間泥棒をしたため解雇した」と主張。“泥棒”をした時間分の給与や前払い金の合計約27万円を求めて反訴した。

 結果として、裁判所は会社側の訴えを認めた。決め手となったのは、近年よく話題になるテレワーク監視ツール。

画像: カナダのオンライン法廷Civil Resolution Tribunalに掲載された判決。 decisions.civilresolutionbc.ca

カナダのオンライン法廷Civil Resolution Tribunalに掲載された判決。

decisions.civilresolutionbc.ca

 女性の生産性に疑問を持ったリーチ社は、2022年2月末に女性の会社用ノートパソコンにTimeCampという監視ツールを導入。結果、女性が申告した作業時間のうち約50時間分の作業が認められなかったため、3月末にミーティングを実施。会社側は「情報を検討して返事をする時間を提供する」と提案したそうだが、女性がそれを断ったため、解雇となったという。

 この件について、会社用のノートパソコンの私的利用を認められていた女性側は、TimeCampが使いづらかったため、ツール側に仕事をしている時間とプライベートな利用をしている時間を正しく判断してもらえなかったと主張。これに対して会社側は、TimeCampの仕組みを説明する動画を提出した。

 この動画によると、ドキュメントを開いたり、顧客ファイルにアクセスしたりすると、それがいつ、どのくらいの時間、開かれていたり、アクセスされたりしたかをTimeCampが記録しているそうで、例えば、Disney+のようなストリーミング・サービスを利用した場合は、その電子経路とサービスにアクセスした時間も記録できるため、利用者の行動が細かく分かるという。

 これが動かぬ証拠となり、裁判所は2023年1月11日に女性の訴えをすべて棄却。女性側に、時間泥棒に対する負債および損害賠償と前払い金の返却を含む合計約27万7,500円の支払いを命じた。

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