セックスにおいて、オーガズム(性的絶頂)に達する回数にジェンダー差がある「オーガズムギャップ」という現象。じつは女性の性的満足度が低い理由のひとつに、“ペニスの挿入”があるといわれている。オーガズムギャップが起きてしまう原因をセクシュアリティ・ジャーナリストであり、米Loveology University認定セックスコーチの此花わかさんが解説した。(文:此花わか/編:フロントロウ編集部)

此花わかさんプロフィール
セクシュアリティ・ジャーナリスト。アメリカの性科学者エイヴァ・カデル博士の学校で性とリレーションシップのコーチングを学ぶ 。更年期など女性の悩みによりそったフェムテックカンパニー「TRULY」で性とパートナーシップにまつわるチャットカウンセリングと執筆を行う。セックスポジティブな社会を目指す「セクポジ・マガジン」を発信中。FRaU、Huffpost、Newsweekなどでも執筆。

オーガズムに達したことがある女性は6割以下!挿入からは3割未満

 2023年、日本のジェンダーギャップ指数が146カ国中125位となり、前年から9ランクもダウンしたことが話題となった。社会における経済活動や政治への参画度、教育水準、出生率や健康寿命において、男女の違いにより生じる格差をジェンダーギャップという。同様に、セックスのオーガズムにも男女格差があることをご存じだろうか?

画像: オーガズムに達したことがある女性は6割以下!挿入からは3割未満

まずは、オーガズムにまつわる国内外の統計を集めてみた。

【日本国内の調査】

デュレックスによる26カ国・2万6032人を対象に行った調査※1
・毎回オーガズムに達する日本人女性……11%(26カ国のうち25位。世界平均は32%)

MOREによる全国の20歳~34歳の女性500名を対象に行った調査※2
・オーガズムに達したことがある……35.8%
・これがオーガズムかなと思ったことがある……36.4%
・ない……27.8%

irohaによる全国の10代から40代1200人の女性を対象に行った調査※3
・オーガズムに達したことがある……61.2%
・腟内への刺激でオーガズムに達したことがある……29%

【海外での調査】

アメリカ エイヴァ・カデル性科学者の女性535名を対象に行った調査※4
・挿入からオーガズムを感じたことがある……17%

アメリカ 52,500人以上の成人(レズビアン、ゲイ、バイセクシャルを含む)を調べた研究※5
・ほとんどいつもオーガズムを感じているヘテロセクシュアル女性……65%
・ほとんどいつもオーガズムを感じているレズビアン……86%
・ほとんどいつもオーガズムを感じているバイセクシュアル女性……66%
・ほとんどいつもオーガズムを感じているヘテロセクシュアル男性……95%
・ほとんどいつもオーガズムを感じるゲイ男性……89%
・ほとんどいつもオーガズムを感じるバイセクシュアル男性……88%

フロリダ大学教授・ローリー・ミンツ博士による約800人の大学生の調査※6
・ほとんどいつもオーガズムに達する女性……39%
・ほとんどいつもオーガズムに達する男性……91%

GfK Knowledge Panelが1,055人の女性を対象に行った調査※7
・挿入からオーガズムに達したことのある女性……18.4%

 調査対象の属性、人数、場所が違うので単純にまとめられないが、日本女性の約4割から約6割がオーガズムに達したことがあり、毎回オーガズムに達する日本女性は、世界平均である3割の約3分の1である1割しかいない。そして、挿入からオーガズムを感じるのは3割だ。

画像: 【海外での調査】

 同様に、海外の統計でも、オーガズムを感じる女性は同じく約4割から6割強(ヘテロセクシュアル)。挿入からオーガズムを感じる女性は2割ほどである。

 しかし、興味深いのは、性的指向に関わらず、男性の9割前後がオーガズムを感じるのと比べて、女性のオーガズムの確率が非常に低い点。とりわけ、挿入からオーガズムを感じる女性は2割から3割しかいない

ペニスの挿入が女性のオーガズムの確率を下げる⁉

 さて、性的指向別にオーガズムの確率を並べてみると、以下のような公式になる。

ヘテロ男性(95%)>ゲイ男性(89%)>バイセクシュアル男性(88%)>ゲイ女性(86%)>バイセクシュアル女性(66%)>ヘテロ女性(65%)

 こう見ると、男性のオーガズムに性的指向はそれほど影響していないのに、女性にとって男性が関わってくると、オーガズムの確率が格段と下がるのである。

 これは、男性が女性の体や性のあり方を案外知らないということではないだろうか?

画像: ペニスの挿入が女性のオーガズムの確率を下げる⁉

 2015年にJournal ofSex & Marital Therapyが1,000人以上のアメリカ人女性を対象としたインターネット調査によると、36%が性交時にクリトリスの刺激でオーガズムを得られたと回答したのに対し、約18%が挿入だけでオーガズムを得られたと回答。先述のirohaの調査でも、オーガズムに達したことのある女性のうちの半数しか、膣内オーガズムを得ていない。

 つまり、国内外両方の統計をみても、挿入だけでオーガズムを感じる女性は、クリトリスからオーガズムを感じる女性の半分ほどしかいないということなのだ。

 この現象について、フロリダ大学のローリー・ミンツ教授は腟内オーガズムを感じる以前に、女性は性的に興奮していないといけないと力説する。

 「女性は挿入前に興奮している必要があります。そうでないと、腟が潤滑にならず、子宮頸部が後ろに伸びません。すると非常に強い痛みを感じる女性もいます」(ローリー・ミンツ教授)(※6)。

 ミンツ教授は、以下の行為が女性に性的興奮をもたらすという。

・キス
・性器以外の体中を撫でられる
・オーラルセックスによるクリトリスへの刺激
・タッチによるクリトリスへの刺激

ワンナイトの相手より、関係が深い相手にオーガズムを感じやすい女性

 さらに、American Sociological Reviewが2012年に発表した調査によると、恋人とセックスするほうが女性のオーガズムの確率は高まるそうだ※7

・6ヶ月以上交際している相手とセックスした女性は、初対面の相手とセックスをした女性と比較して、性行為中にオーガズムを感じる可能性が6倍以上。
・3~5回目の相手とのセックスをする女性は、初めてのセックスからオーガズムを得る可能性が40%高い。
・6回以上セックスをすると、最初の出会いよりもオーガズムの可能性が2倍になる。

画像: ワンナイトの相手より、関係が深い相手にオーガズムを感じやすい女性

 要約すると、女性のオーガズムを高める大きな要素は、「キス、体、クリトリスへの刺激」と「より深い関係性のある相手」の2つだということだ。クリトリスには末梢神経が8000本も集まっていると考えられているから、女性のクリトリスは男性にとってペニスのようなものだと言える。

 しかし、なぜ、女性にとってオーガズムはこれほど複雑なのだろうか。

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