騒動の概要
ショーン・“ディディ”・コムズ(54・以下ディディ)のレーベルであるBad Boys Recordsからデビューしたシンガーであり、ディディと約10年間交際していたキャシー(37)が、米時間11月16日にニューヨーク州の裁判所に訴え出て、ディディからの長年の暴力とレイプを告発。
その1週間後、新たに2人の女性が、ディディからの身体的暴力や性的暴力、薬物の投与の被害にあったとニューヨークの裁判所に訴え出た。
女性たちの言い分は?
キャシーの弁護士が提出した裁判資料によると、36歳の時に19歳のキャシーに出会ったディディは、キャシーに「薬物とアルコールを与え、彼女の人生を支配するような危険な薬物中毒に陥らせた」うえ、「目が黒くなり、あざや血が残るほど頻繁に殴ったり蹴ったりする常習的なDV加害者」だったと告発。
また、ある時にはキャシーとラッパーのキッド・カディの関係にヤキモチを焼いたディディが「キッド・カディのクルマを爆発させる」と予告したあと、本当にキッド・カディの自宅でクルマの爆発事件があったと主張。キッド・カディはNew York Timesの取材に対し、キャシーの言い分を認めている。
キャシーは、ディディには「制御不能の激怒に陥りやすい」面があったと主張しており、20代前半から30代前半の約10年間の交際中、殴る、蹴る、踏みつけられるなどの暴力を受けたほか、ディディが自傷行為をしている間に他の男性とのセックスを強要されてそれを撮影されるなどしたという。
また、2018年に交際を終わらせようとしたところ、ロサンゼルスの自宅でレイプされたとしている。
もう一人の女性は、19歳の大学生だった1990年代にディディとデートに行った際に薬物を盛られて「自立して立つことも歩くこともできない身体状態」になったあと、自宅で性的暴行を受け、その様子を撮影されて周囲に動画を流出させられたと告発した。
そしてもう一人の女性への加害が起きたとされるのも1990年代。女性は、自身のルームメイト、ディディ、そしてR&Bシンガーのアーロン・ホールと共に音楽業界のイベントで遊んだあとにアーロンの自宅に戻ったところ、ディディにセックスを強要され、終わったところでアーロンが部屋に入ってきてセックスを強要されたと告発。その後、ルームメイトの女性も別の部屋で2人とのセックスを強要されていたことが分かったという。
女性によると、ディディは数日後に口封じのために現れて、女性が意識を失うまで女性の首を絞めたとしている。
ディディの言い分は?
ディディは弁護士を通して、キャシーの告発は「あからさまな脅迫」であると批判。BBC Newsに対して、キャシーから“3,000万ドル(約45億円)を払わなければ暴露本で悪事をバラす”と脅されたと主張した。
ただ提訴の翌日、キャシーとディディは示談。示談金の額は分かっていない。
ディディの弁護士はメディア向けの声明で、「明確にしておきたいですが、裁判において示談するということは、とくに2023年という時代においては、決して不正行為を認めることにはなりません」とコメント。「示談を決めたことは、全面的な否定を損なうものでは決してありません。彼は双方が示談に合意できたことを喜んでおり、ヴェンチュラさん(※キャシーの苗字)の幸せを願っています」と付け加えた。
また、その他2人の女性からの告発は「でっち上げであり、信憑性はない」ものであり「純粋に金目当て」だと切り捨てた。
音楽界のリアクションは?
ディディに対する性的暴力の告発に最初に反応したのは、ラッパーの50セント。50セントはディディが2017年に「LOVE」に改名して「ブラザー・ラブと呼んでくれ」と言っていたことに触れ、「まったく、ブラザー・ラブ」と憤りを見せ、「今、お前やばいやつに見えてるぞ」とインスタグラムで揶揄。
ディディのレーベルと契約していたガールズグループのダニティ・ケインのオーブリー・オデイは、「キャシーを全面的に支持します。この業界で最もパワフルな人物のひとりに挑み、その経験を正直に話すのは簡単なことではありません」と米ETへの声明でコメント。また、X(旧ツイッター)では、「だから前から皆に言っていたのに…」と、より多くの事実を知っているような投稿を続けている。
また、今回の件を受けて、過去にディディの周囲から出たコメントが再訪されている。
2022年にはラッパーのヤング・ジョックが、ディディと遊んでいた時に突然ディディがキャシーに「明日、お前は頭の片側を全剃りしろ」と言ったという逸話をVLAD TVに明かした。
ディディの言葉を聞いて困惑したヤング・ジョックがキャシーに「やらないよね?」と訊くと、キャシーは静かに「ショーン(ディディ)が求めることはすべてやるから」と言ったという。これは、キャシーがディディの強烈な支配下にあったことを示す証言だとして注目されている。
さらにディディの元ボディガードだったジーン・ディールは、ディディがダニティ・ケインを見て「この子たちにドラッグを盛って、俺の仲間たちに分け与える」と発言していたと2023年にThe Art Of Dialogueで証言。その時、部屋には大勢がいたが、「この子たちは誰かの子どもだぞ」と異論を唱えたのはダニティだけだったという。
1ヵ月で3人の女性からの告発を受けたディディに対して、2024年2月に開催予定のグラミー賞授賞式の主催者は招待を取りやめようか協議していると英Mirrorが報道。
事件を受けて、複数のアーティストの代理人からディディと同じ席には座れないと要望があったそうで、招待状の発送リストからディディの名前が取り除かれる可能性があるという。