映画『おくびょう鳥が歌うほうへ』は、速さや効率を競う現代社会への静かな異議申し立てのような作品だ。ノラ・フィングシャイト監督は、「短時間で結果を出す」ことよりも、「時間をかけてしか見えない感情」を優先した。自然光が差すまで待ち、風が収まるまでカメラを回さない。その忍耐が、スクリーンに確かな実感を刻み込んでいる。
主人公ロナは、都会の夜に魅せられ、やがてアルコール依存へと転落していく。自由だと思っていた選択が、気づけば自分を縛っていた。恋人との別れ、暴力、治療施設でのリハビリ。人生が崩れ落ちた末に、彼女が選んだのは、誰もいない故郷の離島で暮らすことだった。孤独を避けるのではなく、あえて引き受ける決断である。
解禁された本編映像では、そんなロナの孤独が象徴的に描かれる。クリスマスに島を出られず、祝祭から取り残された彼女は、ひとり海へ向かう。凍てつく水に触れた瞬間、彼女の表情は変わる。生きているという感覚が、言葉を超えて立ち上がる場面だ。
世界的評価を受けた原作と、『システム・クラッシャー』で信頼を築いた制作陣の再タッグは、本作に揺るぎない完成度をもたらした。シアーシャ・ローナンは主演とプロデュースを兼ね、これまで以上に内省的で成熟した演技を見せる。静かだが強い。観る者の心に、確実に何かを残す再生の物語である。
監督:ノラ・フィングシャイト 脚本:ノラ・フィングシャイト、エイミー・リプトロット
脚色:エイミー・リプトロット、ノラ・フィングシャイト、デイジー・ルイス 原作:THE OUTRUN(エイミー・リプトロット著)
出演:シアーシャ・ローナン、パーパ・エッシードゥ、ナビル・エルーアハビ、イーズカ・ホイル、ローレン・ライル、サスキア・リーヴス、スティーヴン・ディレイン
撮影:ユヌス・ロイ・イメール 編集:シュテファン・ベヒンガー 音楽:ジョン・ギュルトラー、ヤン・ミゼッレ 美術:アンディ・ドラモンド
キャスティング:キャロライン・スチュワート、カリーン・クローフォード 衣装:グレース・スネル エグゼクティブ・プロデューサー:クラウディア・ユセフ、キーラン・ハニガン、マリア・ローガン、
アン・シーハン、ルアン・ガウアー、ジョージ・ハミルトン、ジェームズ・ピュー、ヤニナ・フィルスマイアー プロデューサー:サラ・ブロックルハースト、ドミニク・ノリス、ジャック・ロウデン、シアー
シャ・ローナン 共同プロデューサー:ジョナス・ウェイドマン、ジェイコブ・D・ウェイドマン、シリン・ハートマン
提供:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 配給:東映ビデオ 【2024年/イギリス・ドイツ/原題:THE OUTRUN/シネマスコープ/118分/映倫区分:G】
公式サイト : www.outrun2026.com 公式X : @okubyoudori01
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