“絶望のフルコース”が帰ってくる。アロノフスキーの問題作『レクイエム・フォー・ドリーム』が、4Kリマスターでスクリーンに再降臨するというニュースは、映画ファンにとって喜びと恐怖が同時に押し寄せる報せだ。本作は公開当時から「観客を奈落に突き落とす映画」として語られ、海外メディアのランキングでも常に“落ち込む映画”の頂点に位置づけられてきた。その毒性が、4Kという最新のフォーマットによりさらに濃縮されて戻ってくるのだから、話題にならないはずがない。
今回解禁された予告編は、希望の光が射す序盤から一転、欲望の滑落が始まっていく瞬間を克明に描き出す。サラの赤いワンピースへの執着、ハリーとマリオンの未来への幻想、タイロンの金と自由への渇望。それぞれが抱える弱さに、4Kの映像は容赦なく寄り添い、瞳孔の拡大やふとした表情の陰りまで克明に焼き付ける。美しいのに苦しく、華やかなのに終末の匂いを放つ映像は、アロノフスキーが描く“欲望依存”の恐ろしさをかつてないほど際立たせている。
ポスターもまた象徴的だ。巨大化した瞳孔は、観客の視線を一瞬で奪い取る異様な存在感を放つ。そこに宿るのは、興奮か恐怖か、あるいはその両方か。朧げなハリーとマリオンの姿とともに、「あの絶望が、よみがえる」という文言が視界に突き刺さる。SNSで欲望が増幅し、依存が日常化した現代だからこそ、この再公開はより強烈な意味を持つ。心の奥底を刺激される覚悟がある者だけ、劇場に足を踏み入れるべきだ。
『レクイエム・フォー・ドリーム 4Kリマスター』
監督:ダーレン・アロノフスキー 脚本:ヒューバート・セルビーJr.、ダーレン・アロノフスキー
原作:ヒューバート・セルビーJr.
出演:エレン・バースティン、ジャレッド・レト、ジェニファー・コネリー、マーロン・ウェイアンズ
原題:REQUIEM FOR A DREAM
2000年/アメリカ/英語/102分/カラー/ビスタ/5.1ch/字幕翻訳:髙橋彩/R15+
配給:クロックワークス (C)2000 Requiem For A Dream, LLC. All Rights Reserved.
公式サイト: https://klockworx.com/movies/requiemfordream/
公式X:@Requiem4Kjp














