『レクイエム・フォー・ドリーム』は、観終わったあとに爽快感も救いも与えない。それでも人々は、この映画を忘れられずにいる。イギリスの映画誌や海外サイトで「最も落ち込む映画」「心が砕ける傑作」と評されてきた理由は明白だ。本作は、人間の弱さを一切の配慮なく直視させるからである。その問題作が、4Kリマスターという形で再びスクリーンに現れる。
監督ダーレン・アロノフスキーが本作で描いたのは、依存の連鎖だ。麻薬だけではない。ダイエット薬、テレビ、成功への渇望。すべては同じ根から生えていると彼は語る。人は心に空いた穴を埋めようとする存在であり、その手段を間違えたとき、静かに、しかし確実に崩れていく。
物語の中でも強烈なのが、母サラのエピソードだ。テレビ番組に出たい、昔着ていた赤いドレスをもう一度着たい。その願いはあまりにも無垢で、だからこそ危うい。解禁された本編映像では、薬に依存していく彼女の主観と現実が交錯し、部屋の中の冷蔵庫が恐怖の象徴として牙を剥く。超常現象ではない。すべては心の崩壊が生み出した光景だ。
アロノフスキー監督は、原作の言葉を尊重しつつ、時代を限定しない演出に徹した。古いスラングと当時の最新テクノロジー、そして時間が止まったような街並み。その混在が、本作を寓話のような存在に押し上げている。だからこそ、25年後の観客にも強烈な現実味を持って迫ってくる。
情報と欲望が溢れ、常に他者と比較される現代社会は、『レクイエム・フォー・ドリーム』が描いた世界と地続きだ。なりたい自分への近道を探し続ける限り、この映画は決して過去のものにならない。4Kリマスター版で甦る“あの絶望”は、今を生きる私たちの心にも、確実に食い込んでくるだろう。
『レクイエム・フォー・ドリーム 4K リマスター』
監督:ダーレン・アロノフスキー 脚本:ヒューバート・セルビーJr.、ダーレン・アロノフスキー 原作:ヒューバート・セルビーJr.
出演:エレン・バースティン、ジャレッド・レト、ジェニファー・コネリー、マーロン・ウェイアンズ
原題:REQUIEM FOR A DREAM
2000 年/アメリカ/英語/102 分/カラー/ビスタ/5.1ch/字幕翻訳:髙橋彩/R15+
配給:クロックワークス © 2000 Requiem For A Dream, LLC. All Rights Reserved.
公式サイト: https://klockworx.com/movies/requiemfordream/
公式 X:@Requiem4Kjp














