エイプリルフールに解禁された映画の予告編が、ここまで胸をざわつかせることがあるだろうか。スカーレット・ヨハンソン初の長編監督作『エレノア ってグレイト。』は、「嘘」という軽やかな言葉の裏に、驚くほど深い人間ドラマを忍ばせている。
物語の中心にいるのは、人生の節目で大切な存在を失った二人だ。若さゆえの孤独を抱える学生ニナと、老いとともに喪失を重ねてきたエレノア。二人が出会うきっかけは、偶然入り込んでしまった自助グループの集まりと、そこで生まれた一つの嘘だった。
「今日だけ」のつもりだった嘘は、共感を呼び、信頼を生み、やがて友情へと姿を変えていく。世代も背景も違う二人が心を通わせていく過程は、作り物めいていない。むしろ、あまりに自然で、観る者は気づけば彼女たちの関係を応援してしまう。
だが、この物語は優しさだけで終わらない。嘘が膨らんだ先には、必ず代償が待っている。善意であっても、語ってはいけない物語があるのではないか。本作は、記憶を引き継ぐことの重さと、語り手の責任を真正面から描く。
ヨハンソンは、自身のルーツでもあるユダヤ・カルチャーを背景に、重厚なテーマを軽やかな語り口で紡ぎ上げた。笑っていたはずなのに、いつの間にか胸の奥が締めつけられる。その不思議な感覚こそが、この映画の最大の魅力だ。エイプリルフールに始まった“やさしい嘘”は、観る者の心に長く残る問いを残す。
■STORY
長年連れ添った親友の急死で心にぽっかり穴が空いてしまったエレノアは、余生を故郷で過ごすためニューヨークへ。だけど娘はよそよそしく、孫もなにかと忙しい。そんなある日、出掛けた先でふとホロコースト生存者の会に迷い込む。場違いなエレノアは戸惑いながらも、ホロコースト生存者の亡き友が自分だけに語っていた半生を、まるで自分の体験のように話してしまった。ジャーナリスト志望の学生ニナは、その壮絶な過去に胸を打たれ、エレノアに心を開いていく。母を亡くしたばかりのニナとの、年の差をものともしない新しい友情に、エレノアの心も躍る。ところが悪気のない嘘は一人歩きし、大騒動に発展してしまうのだった……。
監督:スカーレット・ヨハンソン 脚本:トリー・ケイメン
出演:ジューン・スキッブ、エリン・ケリーマン、ジェシカ・ヘクト、リタ・ゾーハー、キウェテル・イジョフォー
キャスティング:エレン・ルイス、ケイト・スプランス 音楽監修:ランドール・ポスター 音楽:ダスティン・オハロラン
衣装デザイナー:トム・ブローカー 編集:ハリー・ジャージアン プロダクションデザイナー:ハッピー・マッシー
撮影:エレーヌ・ルヴァール
エグゼクティブプロデューサー:ルーシー・キース、ジェニー・ハルパー、ピーター・ソビロフ、ミシェル・ソビロフ、アンドリュー・カロフ、アンジェラ・カードン、ジェイミー・ヒース、スティーヴ・サロウィッツ、ジャスティン・バルドーニ、ラージ・キショー・カワー、エズラ・ガベー、ジャン・マカドゥ、シャルロット・ドーファン、ロバート・ケッセル、スーザン・リーバー、トリー・ケイメン、エリン・クレシダ・ウィルソン
プロデューサー:スカーレット・ヨハンソン、ジョナサン・リア、キーナン・フリン、トゥルーディ・スタイラー、セリーヌ・ラトレイ、ジェサミン・バーガム、カラ・デュレット
【2025年|アメリカ|ビスタ|カラー|98分】 配給:東映ビデオ
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6月12日(金)より新宿バルト9ほか全国順次公開















