【フロントロウ編集部】
映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』に出演し、今年はじめてアカデミー賞主演男優賞を受賞したケイシー・アフレック。だが今年同賞に輝いたケイシーを、例年の受賞者とは同じように祝えない理由がある。
何故素直に祝えないのか、それは彼の過去にあった
素直に祝えない理由は2010年にさかのぼる。2008年に映画『容疑者、ホアキン・フェニックス』の撮影をしていた当時、一緒に働いていた同作のプロデューサーであるアマンダ・ホワイトと、撮影監督のマグダレーナ・ゴルカにセクハラ行為を行ったとして2010年に訴えを起こされていた。
アマンダは、ケイシーに「牛」と呼ばれたうえ、ホテルの同じ部屋に泊まりたいというケイシーの要求を断ると、強引に腕を引っ張られ攻撃的な態度をとられたと裁判資料で主張している。
そしてもう一人の女性、マグダレーナは、スタッフ全員がケイシーと俳優のホアキン・フェニックスの家に泊まることになり、女性スタッフが一人だったので特別に彼のベッドルームを借りていたが、気がつくといつの間にかTシャツに下着姿のケイシーがベッドに忍び込み、彼女の背中を撫で、抱きしめていたと明言している。そしてその時のケイシーからはお酒の匂いがしていたと彼女は言う。
マグダレーナはこの作品を降板したが、それまで働いた撮影監督としての費用も未払いだったこともあり、訴訟に踏み切った。
これでケイシーは2人に訴えられ、アマンダに約2億2,000万円(200万ドル)、マグダレーナには約2億4,000万円(2.25ミリオンドル)を要求されたが、この全ての話は示談になり、彼は罪に問われなかった。
偶然が重なり、2度も同じような場面が
そして今年、ケイシーはアカデミー賞で主演男優賞を受賞。
ケイシーは昨年アカデミー賞主演女優賞を受賞して今年プレゼンターを務めたブリー・ラーソンに名前を呼ばれ、壇上にあがった。その際に大勢の人がケイシーを拍手で祝っていたが、ブリーがケイシーに拍手をすることはなかった。
ブリーはレイプ被害者の支援活動をおこなっており、昨年アカデミー賞の主演女優賞を受賞した映画『ルーム』ではレイプ被害者を演じている。一説によると「セクハラ」疑惑が拭いきれないケイシーを心から祝うことができなかったため、拍手をしなかったといわれている。
また偶然にも、前の月に開催されたゴールデン・グローブ賞でもブリーが主演男優賞のプレゼンターを務めており、この時の受賞者もケイシー。授賞式では壇上のプレゼンターが受賞者をハグで迎えることが多いが、ブリーがケイシーをハグすることはなく、トロフィーを渡すと笑顔を見せることもなく無言で後ろに立っていた。
SNS上では、ケイシーは起訴されていないとして彼を擁護する声もあがるが、受賞に疑問を抱く声も多い。アカデミー賞は演技が評価される場ではあるものの、ケイシーのように女性に対する疑惑が付きまとう俳優に賞を与えることは、ハリウッド全体がハラスメントを容認していると捉えられかねないからだ。
ただアカデミー賞のこういった態度はこれが初ではなく、未成年との性行為で有罪判決を受けたロマン・ポランスキー監督は国外逃亡中にオスカーを受賞し、幼児性的虐待の疑惑が囁かれるウディ・アレン監督もノミネートをつづけている。
素行と演技は切り離して考えるアカデミー賞。今回もアカデミー賞がこの姿勢を変えることはなかった。