ラッパーのカニエ・ウェストが最新アルバム収録曲「フェイマス」のMVを先週(6月24日)に音楽ストリーミング・サービスTIDALで限定公開し、その過激すぎる内容が物議を醸している。
MVに登場するのは、カニエを含む12人のセレブの全裸姿。
その顔ぶれはそうそうたるもので、「フェイマス」の歌詞を巡ってカニエとバトルをしているシンガーのテイラー・スウィフト、カニエの妻でリアリティスターのキム・カーダシアン、キムの流出したセックスビデオのパートナーであり元彼のレイ・ジェイ、カニエの元彼女であるアンバー・ローズ、「フェイマス」でコラボしているシンガーのリアーナとそんな彼女へのDV事件を起こしたクリス・ブラウン、過激な発言を繰り返す政治家のドナルド・トランプ、元米大統領であるジョージ・W・ブッシュ、女性への性的暴行疑惑をかけられているコメディアンのビル・コスビー、キムの義理の父でトランスジェンダーであることを告白した元オリンピック選手のケイトリン・ジェナー、米VOGUE誌編集長のアナ・ウィンターが全裸姿で横たわる。
撮影には、本人そっくりのろう人形が使われた。
(左から)ブッシュ氏、アナ・ウィンター、トランプ氏、リアーナ、クリス、テイラー、カニエ、キム、レイ・ジェイ、アンバー、ケイトリン、ビル。アメリカ人画家のヴィンセント・デジデリオが2008年に発表した名画「スリープ」にヒントを得て制作された、視聴者が「本人なのではないか? 」と一瞬ギョッとしてまうような精巧なろう人形が登場する同MVは、ポージングや表情など、カニエの納得がいくまで何度もやり直し、完成までになんと3ヶ月以上もの時間を要したという。
ヴィンセント・デジデリオの「スリープ」(写真下)との比較。
映像の最後に、“スペシャル・サンクス”としてフィーチャーされた著名人たちの名前が表示されるものの、実際には当人たちからの了承はほぼ取っていないことから、「肖像権の侵害にあたるのでは?」などと非難の声も。
同曲の歌詞にも登場し、以前からトラブルがウワサされているテイラーに至っては、人形とはいえ彼女にソックリな全裸姿が晒されたことに対して激怒しているファンも多い。
そんななか、MV公開から約半日後、カニエは自身のツイッターで「まだ誰も俺を訴えてこないのか? 待ってるぜ」と挑発ともとれる発言をし、火に油を注いだ。
※このツイートは現在、削除されている。MV公開後の米ヴァニティ・フェア誌とのインタビューで、カニエは、「登場人物たちへのサポートもしくは批判を意味するものではなく、ただ“名声”の比喩として表現しただけだ」と著名人たちをフィーチャーした理由を説明。さらに、「MVの一般公開前に数人のセレブ友人たちに見せたら、みんな俺と一緒にベッドインしたかったって羨ましがってたぜ」と自信満々に語っている。
自身と過去にいさかいのあった人物や、世間的に地位のある人物、議論の対象になっている人物などをあえて選び、無防備な全裸姿にしたことで、批判が集まることを覚悟した上での炎上商法で楽曲のプロモーションを図ったカニエ。世間から思惑通りの反応を得たことに、かなり満足しているようだ。
今後、彼の挑発にのったセレブたちが実際に訴えを起こすことがあるのか、目が離せない。