ステージで夫を追悼するたびに涙を流しながら、ビルボード・ミュージック・アワードに出席してTV復帰も果たしたセリーヌ。
キャリアとプライベートの両面で35年以上もパートナーとして連れ添ってきたセリーヌとレネの愛の物語を振り返る。
12歳のセリーヌを発掘
セリーヌとレネの出会いは、セリーヌが12歳だった時。当時38歳だったレネはセリーヌの歌声を聴くとすぐに彼女の才能を確信し、それから、二人三脚での音楽活動が始まった。
レネはセリーヌのデビューアルバムの制作費を捻出するために自宅を抵当にまで出し、すべてをセリーヌの成功にかけたという。そんな2人が恋愛関係に発展したのは、セリーヌが19歳の頃。
26歳差という間柄には疑問の声もあがったというが、2人を止められる者は誰もいなかったと、セリーヌ自身が2013年に米Access Hollywoodに語っている。
「17歳から18歳の頃、彼に対する気持ちに変化が起きたの。彼のことを違った目で見るようになったのよ。手短に言うと、(自分の母親も)こうなるって分かっていたらしいわ。(中略)母には選択肢がなかったしね。私たちの愛が勝ったのよ」―セリーヌ
トップスターとマネージャーの結婚
そしてセリーヌは、レネのマネージメントに支えられながら、1990年代に大ブレイク。セリーヌは世界的歌姫になるのだが、それほどの成功を前にしても、絆は変わらなかった。
2人は1991年、極秘で婚約。3年後にはカナダで結婚式を挙げ、セリーヌが挙式で身に着けた約5キロものダイアモンドのヘッドピースは、当時大きな話題となった。2人は結婚中に双子の男児をもうけていて、彼らは今年で6歳になる。
結婚生活のヒケツは「コミュニケーション」
セリーヌとレネの絆は、結婚を機にさらに深まる。レネはマネージャーとしてセリーヌが最高のコンディションで歌えるための舞台をつねに用意し、セリーヌを笑わせられるのはいつもレネだった。
セリーヌはレネとの関係の素晴らしさについて、2013年に米エンタメサイトRobin Leach's Vegas DeLuxeで触れている。
「私たちはよく笑うわ。冗談も言う。いつもふざけ合っているし。お互い、この結婚を一生ものにしたいと思っているの。全てのことについてきちんと話し合えば、いつもハネムーンな気分でいられるわよ。コミュニケーションを取ること。それが最も重要なことよ」―セリーヌ
仕事よりも夫の看病を優先
何が起きても揺るがなかったセリーヌとレネの結婚生活に衝撃が走ったのが、1998年に起きたレネの食道がん宣告。この日から夫妻の長い闘病生活が始まり、セリーヌはたびたびツアーを延期するなどして、献身的にレネを看病した。
レネは2014年には治療に専念するためにマネージメント業から退き、セリーヌも無期限で活動を休止するが、そんなセリーヌに復帰するよう最も求めたのは、レネ自身だったという。セリーヌは仏Taste of Life誌で、そう語っている。
「レネはチャンピオンよ。私は生涯をかけて彼を愛してきたわ。うぬぼれていると思われたくないんだけど、私は彼の一番好きなシンガーなの。そして彼は、再びステージの上で歌う私の姿を見たがっているのよ!」―セリーヌ
セリーヌがレネと交わした約束
そんなレネに押され、セリーヌは2015年3月に仕事復帰。当時セリーヌは、米PEOPLE誌でレネの闘病生活に触れ、「ひざがガクガクになっていいのは最後だけよ。愛する人が倒れて助けを求めている時は、泣いている場合じゃないわ。それは後からすればいい。今は違うの」と気丈に語っている。
同時にレネとのある約束について、こう明かした。「彼に『怖い? 分かるわ。私に話して』って言ったの。彼はこう言ったわ。『君の腕の中で死にたい』って。だから、『分かった。私はその場にいる。あなたは私の腕の中で死ぬわよ』って言ったわ」。
レネは2016年1月、セリーヌが制作中の15枚目のフランス語アルバムの完成を見ることなく、74歳の誕生日を迎える2日前に死去した。