ハーヴェイ・ワインスタインのセクハラ騒動をきっかけに、セクハラの告発・処分のドミノ倒しが起きている。告発された著名人の数は、すでに50名近くに及んでいる。
画像: 現在、セクハラの告発を受けている著名人の一部。各事件の詳細は記事末へ。

現在、セクハラの告発を受けている著名人の一部。各事件の詳細は記事末へ。

ワインスタイン効果の成果「被害を信じてもらえる」

 セクハラの告発・処罰のドミノ倒し「ワインスタイン効果」が、セクハラ問題が抱えていた最大のウミを出すきっかけをつくった。

 そのウミとは、数人から被害を訴えられても本人が否定すれば「証拠があいまい」という理由で処分保留にして、行動を起こさなかった企業・団体の消極性。

 そもそもセクハラ被害は、被害者が証拠を残せない場合が多い。さらに、人に知られたくないという思いからすぐに被害を明かさない場合も多いため、あとから訴え出ても「証拠はどこだ」「なぜあの時言わなかった」などと、被害者が疑われ非難されるケースが少なくない。

 それが被害の告発を妨げる大きな原因となり、過去のレイプ被害を最近告白した女優のアビゲイル・ブレスリンと女優のエヴァン・レイチェル・ウッドも、当時被害を届け出なかった理由について「信じてもらえない(と思った)」と揃って口にしている。

画像: ドラマ『スクリーム・クイーンズ』のアビゲイル(左)は公式SNSで、ドラマ『ウエストワールド』のエヴァン(右)は米Rolling Stone誌で、被害当時に付き合っていた男性にレイプされた経験を告白した。

ドラマ『スクリーム・クイーンズ』のアビゲイル(左)は公式SNSで、ドラマ『ウエストワールド』のエヴァン(右)は米Rolling Stone誌で、被害当時に付き合っていた男性にレイプされた経験を告白した。

 しかしハーヴェイ・ワインスタインの騒動で強烈な追い風が吹いたことで、各業界がすぐに調査に乗り出し処分を下すようになっている。

 アニメ界では複数の女性からセクハラ告発を受けたアニメーターのクリス・サヴィーノがニコロデオンに解雇され、ジャーナリストのマーク・ハルパーリンは米CNNで5人の女性から被害を告発された後に停職処分を受けた(のちに辞職)。ファッション界では、10年以上前から多数のセクハラ疑惑があった有名フォトグラファーのテリー・リチャードソンがついに追放されたと囁かれている。

 企業側の対応の変化が、被害を訴え出やすい環境を作り、それが、ドミノ倒しのようにセクハラの告発が起きるきっかけとなったのだ。

 企業側の重い腰をあげさせたことこそ、ワインスタイン効果の最大の成果と言える。最初に被害を訴えた女性たちが起こした火は、大きな炎へと拡大し、社会を変える勢いを見せている。


画像: ワインスタイン効果の成果「被害を信じてもらえる」

<写真の左から右へ>
■ハーヴェイ・ワインスタイン:大物映画プロデューサー。数十年にわたるセクハラ行為がThe New York TimesとThe New Yorkerに暴露され、映画界から追放処分に。
■ジョージ・H・W・ブッシュ:元アメリカ合衆国大統領。イベントで女性のお尻を触りみだらなジョークを言ったことを本人にSNSで暴露され、苦痛を与えるつもりはなかったとしながらも謝罪。
■ルイ・C・K:大物コメディアン。5人の女性がThe New York Timesでセクハラ被害を告発。ルイ本人が事実関係を認め、当面の間、表舞台から去ることを明かした。
■ケヴィン・スペイシー:当時14歳だった青年に性的関係持ち掛けたことを米BuzzFeedが暴露。その後さらに10人以上に被害を告発され、活動を休止。
■ジェレミー・ピヴェン:俳優。ドラマ『アントラージュ オレたちのハリウッド』のセットで体を触られたと女優がSNSで暴露。その後、別の女性2人も被害を訴え出た。本人は否定している。
■マーク・ハルペリン:ジャーナリスト。ABC Newsでの職場セクハラを5人の女性がCNNに暴露。籍を置いていたNBC NewsとMSNBCからの辞任が発表された。
■テリー・リチャードソン:大物フォトグラファー。ワインスタインの騒動後、大手出版社コンデナストが長年セクハラ疑惑が絶えなかったテリーの追放をスタッフに指示。The Daily TelegraphにCOOのメールがリークされたことで発覚した。
■ロイ・プライス:米Amazon Studiosのトップ。女性プロデューサーがHollywood Reporterでセクハラ被害を告発。Amazonから停職処分を受けた後、辞職が発表された。
■オリバー・ストーン:映画監督。ハーヴェイの行為を批判した直後、New York Daily Newsがオリバーにパーティーで胸を触られたとするモデルの証言を報道。
■ロバート・ネッパー:俳優。映画の撮影中に衣装デザイナーの股をつかむなどした疑惑をThe Hollywood Reporterが報道。本人はSNSで報道を否定している。
■ベン・アフレック:ハーヴェイを批判する声明を出した後に、2001年に米MTVの番組出演中に女優の胸をわしづかみにした件が明るみに出て、「私はバートンさんに不適切な行為をしました。深く謝罪します」と謝罪。
■リック・ナヘラ:放送作家・プロデューサー。職場でセクハラ行為があったとVarietyに報じられた後、CBSを辞職。
■ダスティン・ホフマン:俳優。作家の女性がHollywood Reporterにエッセイを寄稿し、17歳だった1985年に体を触られて不適切な言動を受けたと告発。ダスティンは、「自分の何かしらの行動が彼女を不安な気持ちにさせたとしたら、申し訳なく思います」と謝罪。
■ブレット・ラトナー:映画監督。女優のオリヴィア・マンを含む6人の女性がセクハラ被害をLos Angeles Timesで証言。その後、さらに10人以上の女性が同様の被害を告白している。
■ジェームズ・トバック:映画監督。Los Angeles Timesが38人の女性に取材し、オーディションと称して性的関係を求めるなどの行為を暴露。その後、同様の被害を訴える女性の数は200を超えている。
■ジョン・ベシュ:有名シェフ。Times-Picayuneの取材で、ジョンのレストランでセクハラ行為が横行していたことが発覚。スタッフの訴えを受け、ジョンは会社から退いた。
■ハミルトン・フィッシュ:The New Republic誌代表。複数の女性へのセクハラ行為に対する社内調査を受け、その後、代表を辞任。
■スティーヴン・コリンズ:俳優。女性ジャーナリストがブログでセクハラ被害を告発。スティーヴンは2014年に未成年に対する不適切な行為が発覚して謝罪した。
■エド・ウェストウィック:俳優。女優がエドの自宅でレイプされたとSNSで告発。その後、別の女性も性的暴行を受けたとSNSで証言。エドは両方の疑惑を否定している。
■イーサン・キャス:クリスタル・キャッスルズのメンバー。2015年に脱退した元ヴォーカルのアリス・グラスが、15歳の頃からイーサンに性的虐待を受けていたと公式サイトで告発。イーサンは疑惑を否定し、アリスを名誉棄損で訴えた。
■アンディ・ディック:俳優。股間を触る、キスを強要するなどの不適切行為があったとして、インディー映画『レイジング・ブキャナン』を降板処分になったとHollywood Reporterが報道。本人は不適切行為があったことを認め、「笑いのつもりだった」と弁明した。
■アンドレ・バラス:ホテル王。女優や従業員がNew York Timesにアンドレのセクハラ行為を証言。アンドレは今年、会社の役員会から退いた。
■デビッド・ブレイン:有名マジシャン。モデルがDaily Beastとのインタビューで2004年にデビッドにレイプされたと告発。デビッドの代理人は疑惑を否定している。
■ジェフリー・タンバー:俳優。元アシスタントによるセクハラ告発がDeadlineに報じられたことを受け、主演ドラマ『トランスペアレント』を放送する米Amazonが内部調査を開始。ジェフリーは疑惑を否定している。
■デイビッド・ギロッド:エンタメ会社CEO。マネジメントしていた女優への性的暴行が明るみに出て辞職。事件後、彼が担当していた女優のジーナ・ロドリゲスが会社との契約解除に乗り出した。

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