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 R.ケリーの当時未成年だった少女らを含む複数の女性たちに対する性的暴行や、彼が率いていたという“セックスカルト”に関する疑惑を暴くドキュメンタリー番組が放送。これがきっかけとなり、検察の捜査が動き出した。(フロントロウ編集部)

数々の疑惑を追う「特別番組」が放送

 2019年の年始「R&B界の帝王」として知られる人気シンガーのR.ケリーによる、複数の女性たちに対する長年にわたる性的暴行や未成年へのレイプ、セックスカルト疑惑などを告発するドキュメンタリー番組が放送された。

 米ケーブルテレビ局Lifetimeで3夜連続全6話で放送されたのは、ケリーの被害者やその家族、かつて彼のスタッフとして働いていた人物、そしてケリーの親族を含む、総勢50人以上にのぼる関係者からの証言などを集めたドキュメンタリー・シリーズ『Surviving R. Kelly(サバイビング・R.ケリー)』。

 1996年に当時15歳だった女性から、約3年間にわたって性的関係にあったことや、ほかの未成年の少女たちとグループセックスを強要されたと告発されて以来、2008年には14歳の少女との性行為を写真やビデオに収めた児童ポルノの容疑で裁判沙汰になるなど、これまでの20年の間に複数の未成年女性への不適切な性行為で訴えられてきたケリー。

 本人はすべての疑惑について一貫して否定しており、いずれのケースも無罪判決や示談で片づけられてきたが、『Surviving R. Kelly』はドキュメンタリー番組の力を借りてケリーの悪事の数々を露呈。

 ケリーの元妻や、かつて彼と交際していたという女性、彼が率いていたセックスカルトに参加していたが、耐えきれなくなって逃げ出してきたという女性、さらにケリーがツアーバス内で未成年女性と性行為をしている場面を目撃したという人物などが次々に証言し、生々しい事実が明らかになった。


衝撃の証言が連発

 表向きは大御所R&Bシンガーとして絶大な人気を誇りながら、裏では10代の少女を含む女性たちを軟禁し、“ペット”としてほぼ洗脳状態にしては、性交を繰り返しているといったおぞましい疑惑が取り沙汰されてきたケリー。

画像: 衝撃の証言が連発

 番組により新たに世間が詳しく知ることとなった情報には、ケリーが1992年にリリースしたヒット曲「スローダンス」のレコーディング中に、周囲のスタッフたちの視線もはばからず、連れて来た未成年の少女と突然、性行為におよんだというものや、当時17歳だった別の被害女性をケリーの元から連れ戻そうとした彼女の姉が、ケリーの取り巻きによって力づくで路上に引きずり出され、「もしも警察に通報したら、妹や家族を殺す」と脅されたという衝撃的なものも。

 さらに、ケリーが故マイケル・ジャクソンに提供した1995年の名曲「ユー・アー・ナット・アローン」は、じつはケリーの子どもを妊娠・流産した当時高校生だった女性にインスピレーションを得て制作されたものだという証言や、ケリーが1994年に当時15歳だった女性シンガーの故アリーヤとの極秘結婚式を行なった際、結婚に必要な書類である結婚許可証にアリーヤの年齢を“18歳”と偽って記載したという、音楽界を揺るがす内容なども当事者や目撃者の口から語られた。

米Blastが入手したケリーとアリーヤの結婚許可証。確かにアリーヤの年齢は実際の15歳ではなく18歳と記載されている。当時ケリーの年齢は28歳。その後、アリーヤの両親の訴えにより2人の結婚は無効となっている。

画像: 左:マイケル・ジャクソン。右:アリーヤ。アリーヤは2001年、飛行機事故により21歳という若さで死去。

左:マイケル・ジャクソン。右:アリーヤ。アリーヤは2001年、飛行機事故により21歳という若さで死去。


あの人気アーティストたちも登場

 20年以上にわたりR&B界を牽引してきた音楽界の重鎮として崇められてきたケリー。彼の逆鱗に触れることを恐れてか、これまでいくつもの疑惑が浮上しながらも、それらの件に関してはコメントを避けるアーティストが多かった。

 しかし、近年活性化した「#MeToo」や「#Time‘s Up」を掲げたセクハラ・性的暴行撲滅運動の影響でケリーの疑惑に対しても改めて注目が集まるように。

 2018年4月には、ケリーの楽曲をボイコットしようと訴えるハッシュタグ「#MuteKelly(ミュート・ケリー)」がSNS上でトレンド入り。さらに、その翌月には音楽ストリーミングサービスのSpotify(スポティファイ)がケリーの楽曲をプレイリストから排除して話題となった。

 音楽界が少しずつ“ケリー断罪”に乗り出すなか、『Surviving R. Kelly』には、R&Bやヒップホップといったジャンルで活躍する人気アーティストたちも出演。ケリーを取り巻く疑惑についてコメントした。

 第1回目の放送に登場したシンガーのジョン・レジェンドは、「R.ケリーはたくさんの人々に大きな苦痛を与えてきた」とコメント。「R.ケリーはTime’s Up(時間切れ)だ」とも言い放ち、ケリーの糾弾を促した。

画像: ジョン・レジェンド

ジョン・レジェンド

 さらに、番組放送前にツイッターを更新したジョンはこうコメント。

「僕が『Surviving R. Kelly』に出演したことを勇敢だと褒めてくれる人たちへ。(出演は)僕にとってはぜんぜんリスキーなことじゃなかった。僕は女性たちの主張を信じるし、連続児童レイプ犯を擁護するつもりなんか全然ない。簡単な決断だったよ」

 2015年にリリースした自身の楽曲「サムウェア・イン・パラダイス」でケリーとコラボしたラッパーのチャンス・ザ・ラッパーは、ケリーと仕事をしたことに対する後悔を口に。

画像: チャンス・ザ・ラッパー

チャンス・ザ・ラッパー

「俺は(ケリーとコラボするという)間違いを犯してしまったけど、被害者の女性たちがようやく声を上げられるようになったことは嬉しく思う。コラボの話が舞い込んできたとき、本来なら自分がどんな立場に立つべきだったのかを今は学んだよ」

 さらに、チャンスは「俺たちは黒人男性に対する弾圧には必然的に過敏に反応するようにプログラムされてる。でも、世界的に見ても、弾圧されたり侵害されたりしている黒人女性たちの数のほうが絶対的に多い。もしかしたら、(ケリーの被害を告発した女性たちのほとんどが)黒人女性だったからまともに取り合ってもらえなかったのかもしれない」と、ケリーに関する疑惑は人種差別などの社会全体にも通ずる問題だと指摘。

 その後、チャンスは、SNSを通じて、番組内での一部発言が「文脈を無視して解釈された」説明しつつも、改めてこうコメントした。

「真実は、多くの人々がR.ケリーについての疑惑を無視したり、彼が社会からハメられている/攻撃されていると信じてきた(黒人男性がよくそういった目に遭ってしまうように)ことにより、黒人女性たちや少女たちが不利益を被っていることだ。俺が彼と仕事をしてしまったこと、そして、ようやく発言できるようになるまでに長い時間がかかってしまったことを、すべての被害者たちに謝罪します」


検察の捜査が開始 本人は「全員訴えてやる」

 米TMZは『Surviving R. Kelly』の放送後、ジョージア州フルトン群の地区検察局が番組内で行なわれたケリーへの告発に対し、事件として捜査を開始したと報道。検察はすでに番組に登場した複数の証言者たちに聞き込みを行なったことが明らかになっている。

 同番組の放送前、弁護士を通じて「もしも番組を放送したら即刻訴えてやる」とテレビ局に通告していたというケリー。ケリー本人は番組を観ていないものの、側近たちの報告によって知らされた出演者たちの半分以上について面識が無いと主張しているという。

 関係者は「彼は番組に関係した人物全員を訴えるつもりでいます」と、ケリーは徹底抗戦の構えを見せていると証言している。(フロントロウ編集部)

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